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3話
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春の日差しが差し込む午後の教室は、あの“転校生騒動”の余韻を引きずったまま、まだどこか浮ついていた。
「教科書、隣の奴に見せてもらえ~」
先生の緩い一言に従って、忘れ物組があっちこっちで机を寄せ合う。
その中でも、ひときわ異彩を放つペアがいた。
白い肌に金髪、青い目の美少年──シャルロット・べラミー。
そして、筋肉質で熊みたいな体格、制服を着崩し、口元にピアスの東雲梓真。
まるで絵画から抜け出した天使と、路地裏の用心棒。
同じ机を並べて1冊の教科書を覗き込む光景は、どう見てもアンバランスだった。
……うらやましい。
あのとき、俺が怖気付かずに手を挙げていたら──今ごろ隣に座っていたのは俺だったかもしれない。
さらさらの金髪にふと触れたり、ペンを貸し借りしたり、小指がぶつかってお互い照れたり……(いや、後半は完全に妄想だけど!)
ノートに文字を書くふりをしながら、こっそり2人を観察する。
東雲!お前、そもそも勉強なんかしないだろ!
そんなくっついて座らなくてもいいだろ!
教科書ごと渡してやりなさいよ!!
醜い嫉妬に駆られながら、常にテストの点が低空飛行な東雲を睨みつける。
シャルロット君が、これは?とでも言いたげに白い指先を教科書に沿わせるたび、東雲は面倒くさそうな顔で時々答える。たまに無視する。
なんなんだお前は。
ちゃんと教えてやれよ……この熊野郎がっ……!
心の中では罵倒しながらも、口に出せるわけはない。
何せ席は、隣の隣。
それに、東雲はクラスで一番、喧嘩売っちゃいけない人間だってのも理解してる。
でも、そのときだった。
何かを呟いたシャルロットに、東雲が、軽く――本当に軽く、笑ったのが見えた。
東雲って、笑うんだーー。
それが俺の正直な感想だった。
東雲って、いつも詰まらなさそうに、教室の椅子にだらしなく座ってる印象しかない。
いつも1人で、教師にも同級生にも興味がなさそうで「学校には高卒という称号を取るために来てるだけ」って先生にも言ってしまえるほどの筋金入りのやる気なさ男。
でも、今は違った。
面倒臭そうにしながらも、何かを書いてやる東雲は、シャルロットが聞いたことにちゃんと答えてやっているみたいだ。
シャルロットの口元が「merci」と動いたのが分かったから。
それに東雲がひらっと手を振って、頬杖をついたときーー
俺は、見てしまった。
シャルロットが、心底嬉しそうに微笑んで、東雲の横顔をじっと見つめているところを。
“熱がこもった瞳“って、この前国語の授業で出て来たけど、これがまさにそれだよ、と言われてるような気がした。
え……?
もしかして……シャルロット君…
東雲のこと、好きなの──?
だから、初日にも突然、東雲に話しかけたり──?
いやいや、そんなわけない。
だってあの東雲だぞ!?
誰がどう見ても、怖いだろ!あいつ!!
真後ろに立って黙ったまま退けよとでも言うように、上から見下ろされたら、心臓止まりそうになるの、俺だけじゃないと思う。
熊に美味しそうと言われた兎。
いや、違う、蛇に睨まれた蛙だ。
思わず「あっ!ごめんな!!」って言いながら軽く飛び上がってしまうのも俺だけじゃないはずだ。
今日だって、当然な顔をして遅刻してきた。
遅刻しても先生は「もうちょっと早く来ような~」で終わるし、誰も本気で怒らない。
もっとちゃんと怒ってやって!と思わなくもないけど、もしそれで先生が殴られるようなことがあったら困る。
だって、学校の秩序が崩壊するだろ!
でも「他校のやつと喧嘩して遅刻しました」って言われても、納得できちゃうところが怖いんだよ。
どこか、そんな雰囲気があるんだよ!
実際問題、クラスのほぼ全員が東雲のこと、ちょっと怖がってる。
誰もが、一歩遠巻きに見るように離れてる。
だって、あいつ何考えてるか分かんないし。
俺がシャルロット君の隣にいたら、もっと楽しく、ちゃんと通じ合える会話できるのに──!
東雲はろくに目も合わせず、適当にあしらってるようにすら見える。
……いくら何でも、雑すぎるだろ!
東雲はろくに目も合わせず、塩対応。
美人が隣にいるんだから、せめて笑顔ぐらい見せろって話だろ!
いやいや、たとえシャルロット君がブスだったとしても、ちゃんと対応しろよって話だろ!
フランス語がペラペラだからって調子に乗るなよ!?
何なんだよ、そのギャップ!!
くそぉ…!
なんか、色々くやしいっ!!
「教科書、隣の奴に見せてもらえ~」
先生の緩い一言に従って、忘れ物組があっちこっちで机を寄せ合う。
その中でも、ひときわ異彩を放つペアがいた。
白い肌に金髪、青い目の美少年──シャルロット・べラミー。
そして、筋肉質で熊みたいな体格、制服を着崩し、口元にピアスの東雲梓真。
まるで絵画から抜け出した天使と、路地裏の用心棒。
同じ机を並べて1冊の教科書を覗き込む光景は、どう見てもアンバランスだった。
……うらやましい。
あのとき、俺が怖気付かずに手を挙げていたら──今ごろ隣に座っていたのは俺だったかもしれない。
さらさらの金髪にふと触れたり、ペンを貸し借りしたり、小指がぶつかってお互い照れたり……(いや、後半は完全に妄想だけど!)
ノートに文字を書くふりをしながら、こっそり2人を観察する。
東雲!お前、そもそも勉強なんかしないだろ!
そんなくっついて座らなくてもいいだろ!
教科書ごと渡してやりなさいよ!!
醜い嫉妬に駆られながら、常にテストの点が低空飛行な東雲を睨みつける。
シャルロット君が、これは?とでも言いたげに白い指先を教科書に沿わせるたび、東雲は面倒くさそうな顔で時々答える。たまに無視する。
なんなんだお前は。
ちゃんと教えてやれよ……この熊野郎がっ……!
心の中では罵倒しながらも、口に出せるわけはない。
何せ席は、隣の隣。
それに、東雲はクラスで一番、喧嘩売っちゃいけない人間だってのも理解してる。
でも、そのときだった。
何かを呟いたシャルロットに、東雲が、軽く――本当に軽く、笑ったのが見えた。
東雲って、笑うんだーー。
それが俺の正直な感想だった。
東雲って、いつも詰まらなさそうに、教室の椅子にだらしなく座ってる印象しかない。
いつも1人で、教師にも同級生にも興味がなさそうで「学校には高卒という称号を取るために来てるだけ」って先生にも言ってしまえるほどの筋金入りのやる気なさ男。
でも、今は違った。
面倒臭そうにしながらも、何かを書いてやる東雲は、シャルロットが聞いたことにちゃんと答えてやっているみたいだ。
シャルロットの口元が「merci」と動いたのが分かったから。
それに東雲がひらっと手を振って、頬杖をついたときーー
俺は、見てしまった。
シャルロットが、心底嬉しそうに微笑んで、東雲の横顔をじっと見つめているところを。
“熱がこもった瞳“って、この前国語の授業で出て来たけど、これがまさにそれだよ、と言われてるような気がした。
え……?
もしかして……シャルロット君…
東雲のこと、好きなの──?
だから、初日にも突然、東雲に話しかけたり──?
いやいや、そんなわけない。
だってあの東雲だぞ!?
誰がどう見ても、怖いだろ!あいつ!!
真後ろに立って黙ったまま退けよとでも言うように、上から見下ろされたら、心臓止まりそうになるの、俺だけじゃないと思う。
熊に美味しそうと言われた兎。
いや、違う、蛇に睨まれた蛙だ。
思わず「あっ!ごめんな!!」って言いながら軽く飛び上がってしまうのも俺だけじゃないはずだ。
今日だって、当然な顔をして遅刻してきた。
遅刻しても先生は「もうちょっと早く来ような~」で終わるし、誰も本気で怒らない。
もっとちゃんと怒ってやって!と思わなくもないけど、もしそれで先生が殴られるようなことがあったら困る。
だって、学校の秩序が崩壊するだろ!
でも「他校のやつと喧嘩して遅刻しました」って言われても、納得できちゃうところが怖いんだよ。
どこか、そんな雰囲気があるんだよ!
実際問題、クラスのほぼ全員が東雲のこと、ちょっと怖がってる。
誰もが、一歩遠巻きに見るように離れてる。
だって、あいつ何考えてるか分かんないし。
俺がシャルロット君の隣にいたら、もっと楽しく、ちゃんと通じ合える会話できるのに──!
東雲はろくに目も合わせず、適当にあしらってるようにすら見える。
……いくら何でも、雑すぎるだろ!
東雲はろくに目も合わせず、塩対応。
美人が隣にいるんだから、せめて笑顔ぐらい見せろって話だろ!
いやいや、たとえシャルロット君がブスだったとしても、ちゃんと対応しろよって話だろ!
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