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4話
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それは、シャルロットくんが来て数日後。
昼休みが始まってすぐのことだった。
シャルロットが女子たちに囲まれていた。
「ねぇ、一緒に食堂行かない?」
「お弁当持ってきてないでしょ?」
──そうだ、シャルロットは学校の寮暮らしだ。お昼はいつも食堂か購買だと聞いた。
東雲が横で机に突っ伏して寝ているのに、まったく物怖じしないその女子たちのガッツに驚きつつ、俺はその様子を見守っていた。
すると、彼が東雲の肩を軽く突いて、何か話しかけようとしている。
……起こすつもり!? やめとけって!
寝た子を起こすな、って言うじゃん!──意味違うけど!
案の定、東雲は手で払いのけるだけで再び眠りに戻った。
シャルロットは肩をすくめ、困ったように笑う。
(……日本語での会話が不安なのか? 女の子たちと話が通じないのを心配してる?)
俺の中に湧き上がる“正義感”。
俺が!この、田中善人が助けるしかないだろーーー!
「……あのさ、俺フランス語ちょっとだけ分かるんだけど。
一緒に昼行っていい?」
そう声を掛けると、「えー助かるー!」と女子たちの歓声が上がり、シャルロットも安心したように微笑んだ。
食堂までの道すがら、俺はどこかふわふわした気持ちで歩いていた。
女子たちの質問を俺がシャルロットに伝え、返事をまた女子たちに伝える。
──何か俺、来日した大人気俳優の通訳として同行してる気分。
キラキラした女子たちの視線。
顔面の造作が美しいシャルロット。
その横で、格好よくバイリンガルな姿を見せる俺──!
たとえ、純和風な顔と罵られても、正直なところ……気分がとてもいい。
こんなんなら、将来は通訳になってもいいかもなーー。
なんていう浮かれ気分だった。
しかも女の子たちも「善人くんすごいね。発音綺麗じゃない?」とか褒めてくれる。
「えっと、“元気?”って聞きたいときは、Ça va? だよ。」
「Ça va, merci.(元気だよ)」
と返してくれるシャルロットの声に、女の子たちも「きゃーかわいいー!」と大盛り上がり。
逆に、「ゲ、ン、キ」と片言で返してくる彼に「上手~!」と拍手まで起きる始末。
……やっぱ俺の方が、向いてるんじゃないか?
東雲の素っ気ない態度より、よっぽどシャルロットも助かるはずだ。
いや、絶対そうだ。そうに決まってる。
なぁ、シャルロット。俺の方がいいよな?
そう思ってくれてるよな……?
────
シャルロット・ベラミーくんと親しくなって、数日。
俺、田中善人は……今、人生で一番フランス語を使っている。
そして、人生で一番ハイテンションかもしれない。
「なぁシャルロット、この問題わかる?“Que veut dire cela ?”って書いてあってさ『これはどういう意味でしょう?』ってことなんだけど――」
「あっ、メルシー。ヨク、ワカッタ」
そんなふうに、たどたどしい日本語と、ちょっとだけ流暢なフランス語で会話する日々。
昼休みはもちろん一緒。
教室の休み時間には、机に突っ伏して寝てる東雲を横目に、俺は一直線にシャルロットのもとへ向かう。
だって、彼は――“言葉の壁に不安を抱える異国の姫”。
姫を守るのは“凶悪なドラゴン“。
俺は、“その壁を越える勇敢な騎士”。
……これ、もう完全に物語だよな?
青春だよな?
そう信じて、浮かれまくっていた。
この時はまだ――その妄想が粉々になる日がすぐそこまで来ているなんて、考えもしなかった。
昼休みが始まってすぐのことだった。
シャルロットが女子たちに囲まれていた。
「ねぇ、一緒に食堂行かない?」
「お弁当持ってきてないでしょ?」
──そうだ、シャルロットは学校の寮暮らしだ。お昼はいつも食堂か購買だと聞いた。
東雲が横で机に突っ伏して寝ているのに、まったく物怖じしないその女子たちのガッツに驚きつつ、俺はその様子を見守っていた。
すると、彼が東雲の肩を軽く突いて、何か話しかけようとしている。
……起こすつもり!? やめとけって!
寝た子を起こすな、って言うじゃん!──意味違うけど!
案の定、東雲は手で払いのけるだけで再び眠りに戻った。
シャルロットは肩をすくめ、困ったように笑う。
(……日本語での会話が不安なのか? 女の子たちと話が通じないのを心配してる?)
俺の中に湧き上がる“正義感”。
俺が!この、田中善人が助けるしかないだろーーー!
「……あのさ、俺フランス語ちょっとだけ分かるんだけど。
一緒に昼行っていい?」
そう声を掛けると、「えー助かるー!」と女子たちの歓声が上がり、シャルロットも安心したように微笑んだ。
食堂までの道すがら、俺はどこかふわふわした気持ちで歩いていた。
女子たちの質問を俺がシャルロットに伝え、返事をまた女子たちに伝える。
──何か俺、来日した大人気俳優の通訳として同行してる気分。
キラキラした女子たちの視線。
顔面の造作が美しいシャルロット。
その横で、格好よくバイリンガルな姿を見せる俺──!
たとえ、純和風な顔と罵られても、正直なところ……気分がとてもいい。
こんなんなら、将来は通訳になってもいいかもなーー。
なんていう浮かれ気分だった。
しかも女の子たちも「善人くんすごいね。発音綺麗じゃない?」とか褒めてくれる。
「えっと、“元気?”って聞きたいときは、Ça va? だよ。」
「Ça va, merci.(元気だよ)」
と返してくれるシャルロットの声に、女の子たちも「きゃーかわいいー!」と大盛り上がり。
逆に、「ゲ、ン、キ」と片言で返してくる彼に「上手~!」と拍手まで起きる始末。
……やっぱ俺の方が、向いてるんじゃないか?
東雲の素っ気ない態度より、よっぽどシャルロットも助かるはずだ。
いや、絶対そうだ。そうに決まってる。
なぁ、シャルロット。俺の方がいいよな?
そう思ってくれてるよな……?
────
シャルロット・ベラミーくんと親しくなって、数日。
俺、田中善人は……今、人生で一番フランス語を使っている。
そして、人生で一番ハイテンションかもしれない。
「なぁシャルロット、この問題わかる?“Que veut dire cela ?”って書いてあってさ『これはどういう意味でしょう?』ってことなんだけど――」
「あっ、メルシー。ヨク、ワカッタ」
そんなふうに、たどたどしい日本語と、ちょっとだけ流暢なフランス語で会話する日々。
昼休みはもちろん一緒。
教室の休み時間には、机に突っ伏して寝てる東雲を横目に、俺は一直線にシャルロットのもとへ向かう。
だって、彼は――“言葉の壁に不安を抱える異国の姫”。
姫を守るのは“凶悪なドラゴン“。
俺は、“その壁を越える勇敢な騎士”。
……これ、もう完全に物語だよな?
青春だよな?
そう信じて、浮かれまくっていた。
この時はまだ――その妄想が粉々になる日がすぐそこまで来ているなんて、考えもしなかった。
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