【完結】Reste, mon étoile. −君にもう一度会いたくて−

豊川夢久

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7話

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たい焼きは、今や、あんこだけじゃないらしい。
カスタード、チョコレート、期間限定のメロンソーダ味まである。
……メロンソーダって、美味いのか?

「どれ、オイシ?」
「えっ、どれだろ。俺もあんこしか食べたことないから!」

横から東雲が「最初は粒あんかこし餡だろ」と口を挟むと、ロロが小首を傾げた。
そして、さらっとフランス語で粒あんとこし餡の違いを説明した(気がする)。

その結果――ロロと東雲は“こし餡派”、俺は“粒あん派”になった。
好みの問題なのに、ちょっとだけ寂しい。

……いやいや、俺はわざとロロと違うのを選んだんだ。
「ちょっと食べてみる?」って分けてあげたくて。

東雲、お前にはそんなこと、そんな気遣いはできないだろ。
少しだけ“お兄ちゃん”になった気分で、熱々のたい焼きを受け取る。

両手で持って「あちあち」と言うロロに、思わずキュンとした。

「どこから食べるの?」
たい焼きを手にしたロロが、可愛く小首を傾げる。

「しっぽから食べる派!」と俺が即答したその隣で、東雲はため息交じりに呟いた。
「頭から一口だろ、普通。で、端っこ残す」

ロロは二人を交互に見比べ、迷った末に――東雲の真似をして、頭から小さくかじった。
その仕草が、なぜか胸に刺さる。

「俺のも、ちょっと食べてみる?」
差し出したたい焼きに、ロロはやんわり首を横に振った。

「ダイジョブ。……今度、タベル」

さらりと断られる俺。……撃沈。

そのときだった。
ロロが、道端のヴァイオリン教室の広告を見ながら、ぽつりと呟いた。

「C’est impressionnant, ceux qui savent jouer d’un instrument. J’admire ça.」
(楽器を弾ける人ってすごいよね。尊敬する)

「え?……マジで? 楽器やってる人、尊敬するって!?」
こくりと頷くシャルロットを見て――

(これ、フラグじゃね!?)
俺に楽器を始めてほしいってことじゃね!?
俺に、期待してるってことじゃね!?

……そう思った瞬間、隣でたい焼きを頬張っていた東雲が、大きな口でたい焼きを口内に納めてしまうと、包装袋を丸めて「先、帰る」と言い残し、背を向けた。

「おう、またな~!」
「……Bye」

ロロの、少し寂しそうな声が彼の背中に届いたかはわからない。


――だから、俺は言ってしまったんだ。

「……俺さ、ギター、始めようかな」
「Mh?」
「いや、前からちょっと気になっててさ……弾けたら格好いいだろ?」

ロロがふわっと微笑む。
「C’est vraiment bien(いいね)」

それは少し切なそうな――いや、もしかしたら照れただけかもしれない。

東雲とロロの間にあるものが、どんなに揺るがなくても。
俺はまだ、終わらせたくなかった。
もしかしたらと思えることが少しでもあるんなら、頑張ってみたかった。


この一歩が、俺の“戦い”でもあったんだ──。
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