【完結】Reste, mon étoile. −君にもう一度会いたくて−

豊川夢久

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14話

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今日は文化祭の調理班の買い出しの日。
授業時間の一部を使って準備をしていいことになった。

校内で作業する組と、買い出しに行く組に分かれることになったのだが──よりによって、選ばれたのは東雲とロロと俺の3人。

(……なんか、この2人と一緒に行動するの、久しぶりな気がする)

学校の近くにスーパーはないため、買い物はドラッグストアで済ませることになった。
カゴを片手に、俺が先頭を歩き、その後ろでロロは興味津々に店内を見回していた。
どうやらここに来るのは初めてらしい。

「コレ、なに?」
「白玉粉」
「しららま……?」
「白い団子を作る粉。でも、食べる機会はあんまりないかもな」
「しららま、コ」
「いや、今回買うのはこっち。たこ焼き粉だ」

俺が袋を見せると、ロロの青い瞳が寄り目になる。
それが妙に可愛くて、思わず胸がきゅんとした。

(……やっぱ可愛いな)

その後もロロは、指差した商品について東雲に質問し、淡々とした解説を受けていた。
説明があると、つい色々聞きたくなるらしい。

「コッチは?」
「紅しょうが」
「……カライ?」
「そう。焼きそばに乗ってる赤いやつな」

(平和だな~。初めてのおつかい感あって可愛いじゃん)

……そう思っていた、その時。

「これは?」
ロロがとことこ歩き、食品棚じゃないほうから小さな箱を手に取った。
何気なく視線を向け──二度見した。

(お、おいおいおい、それは……!)

他の薬より派手なパッケージ。端っこには妙に力強いフォントで「LOVE」の文字。
……間違いない。“コンドウさん”だ。

男子高校生にとってはちょっとした禁断のアイテム。
縁がなければ一生縁がないし、口に出すのはなんとなく恥ずかしい代物。
俺は東雲の反応をうかがった。

「……避妊具」
低い声で、東雲が至極あっさりと言い放つ。

「ヒニン……?」
「妊娠しないようにするやつ」

(いやっ!用途説明もいいけど、まず“コンドウさん”って名前を教えてやれよ!)

ロロは箱をしげしげ眺めながら、商品名を口の中で転がす。
「コン……?」

東雲が面倒くさそうに、でも流れるようなフランス語で説明。

(……おい、あの熊、フランス語で“コンドウさん”の講義までしてんのか?)

あまりの光景に、乾いた笑いがこみ上げた。
ロロはパッケージを両手で持ち、光に透かしてまで観察。
完全にお菓子か何かだと思ってる顔だ。

その横で、東雲は低い声で淡々と説明を続ける。
顔も声も一切ブレない。
まるで「今日はいい天気ですね」くらいのノリだ。

(……やっぱ経験済みの余裕ってやつか?)

脳内に、なぜか肌色が多めの東雲とロロの背中だけが見える“アレ”な映像が流れ込み──

「っっ!!」
慌てて首をブンブン振ったら、通りかかったおばちゃんに二度見された。

そして次の瞬間、ロロの顔がパッと明るくなる。
「オー!コンドォム!フランスのより小さいね!」

「声でっかいって!!!」
思わず一気に詰め寄ってロロの口を塞ぐ。
もごもご言ってるが、それどころじゃない。
周囲の客に聞こえたらどうするんだ!

さっきニヤッと笑ったおばちゃんが、またこっちを見た気がした。

東雲はというと──動じずに缶詰をカゴに入れている。

(お前、なんでそんな平然としてられんの……)

……あの筋肉質な体、あの落ち着き。
やっぱ経験済みなんじゃ──と想像した瞬間、さらに肌色成分が増えた映像が浮かび、慌てて頭を振った。

店を出ても、ロロは「フランスでは~」と東雲に楽しそうに話しかけ、東雲は相槌だけで歩き続ける。

(お前らな……その距離感でそんな話すんな)

俺はというと、頭の中の不本意な映像が消えず、変な汗が止まらなかった。
袋の中で、紅しょうがとたこ焼き粉がやけに真面目な顔して揺れているように見える。

……文化祭の買い出しで、こんなに精神削られるとは思わなかった。

しかも帰り際、ロロが無邪気に──
「ミンナ、あそこで、コンドーム、カイマスカ?」

(だからそういう質問はやめろっ!
 日本はそんなオープンな国じゃないんだって!!)
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