15 / 46
14話
しおりを挟む
今日は文化祭の調理班の買い出しの日。
授業時間の一部を使って準備をしていいことになった。
校内で作業する組と、買い出しに行く組に分かれることになったのだが──よりによって、選ばれたのは東雲とロロと俺の3人。
(……なんか、この2人と一緒に行動するの、久しぶりな気がする)
学校の近くにスーパーはないため、買い物はドラッグストアで済ませることになった。
カゴを片手に、俺が先頭を歩き、その後ろでロロは興味津々に店内を見回していた。
どうやらここに来るのは初めてらしい。
「コレ、なに?」
「白玉粉」
「しららま……?」
「白い団子を作る粉。でも、食べる機会はあんまりないかもな」
「しららま、コ」
「いや、今回買うのはこっち。たこ焼き粉だ」
俺が袋を見せると、ロロの青い瞳が寄り目になる。
それが妙に可愛くて、思わず胸がきゅんとした。
(……やっぱ可愛いな)
その後もロロは、指差した商品について東雲に質問し、淡々とした解説を受けていた。
説明があると、つい色々聞きたくなるらしい。
「コッチは?」
「紅しょうが」
「……カライ?」
「そう。焼きそばに乗ってる赤いやつな」
(平和だな~。初めてのおつかい感あって可愛いじゃん)
……そう思っていた、その時。
「これは?」
ロロがとことこ歩き、食品棚じゃないほうから小さな箱を手に取った。
何気なく視線を向け──二度見した。
(お、おいおいおい、それは……!)
他の薬より派手なパッケージ。端っこには妙に力強いフォントで「LOVE」の文字。
……間違いない。“コンドウさん”だ。
男子高校生にとってはちょっとした禁断のアイテム。
縁がなければ一生縁がないし、口に出すのはなんとなく恥ずかしい代物。
俺は東雲の反応をうかがった。
「……避妊具」
低い声で、東雲が至極あっさりと言い放つ。
「ヒニン……?」
「妊娠しないようにするやつ」
(いやっ!用途説明もいいけど、まず“コンドウさん”って名前を教えてやれよ!)
ロロは箱をしげしげ眺めながら、商品名を口の中で転がす。
「コン……?」
東雲が面倒くさそうに、でも流れるようなフランス語で説明。
(……おい、あの熊、フランス語で“コンドウさん”の講義までしてんのか?)
あまりの光景に、乾いた笑いがこみ上げた。
ロロはパッケージを両手で持ち、光に透かしてまで観察。
完全にお菓子か何かだと思ってる顔だ。
その横で、東雲は低い声で淡々と説明を続ける。
顔も声も一切ブレない。
まるで「今日はいい天気ですね」くらいのノリだ。
(……やっぱ経験済みの余裕ってやつか?)
脳内に、なぜか肌色が多めの東雲とロロの背中だけが見える“アレ”な映像が流れ込み──
「っっ!!」
慌てて首をブンブン振ったら、通りかかったおばちゃんに二度見された。
そして次の瞬間、ロロの顔がパッと明るくなる。
「オー!コンドォム!フランスのより小さいね!」
「声でっかいって!!!」
思わず一気に詰め寄ってロロの口を塞ぐ。
もごもご言ってるが、それどころじゃない。
周囲の客に聞こえたらどうするんだ!
さっきニヤッと笑ったおばちゃんが、またこっちを見た気がした。
東雲はというと──動じずに缶詰をカゴに入れている。
(お前、なんでそんな平然としてられんの……)
……あの筋肉質な体、あの落ち着き。
やっぱ経験済みなんじゃ──と想像した瞬間、さらに肌色成分が増えた映像が浮かび、慌てて頭を振った。
店を出ても、ロロは「フランスでは~」と東雲に楽しそうに話しかけ、東雲は相槌だけで歩き続ける。
(お前らな……その距離感でそんな話すんな)
俺はというと、頭の中の不本意な映像が消えず、変な汗が止まらなかった。
袋の中で、紅しょうがとたこ焼き粉がやけに真面目な顔して揺れているように見える。
……文化祭の買い出しで、こんなに精神削られるとは思わなかった。
しかも帰り際、ロロが無邪気に──
「ミンナ、あそこで、コンドーム、カイマスカ?」
(だからそういう質問はやめろっ!
日本はそんなオープンな国じゃないんだって!!)
授業時間の一部を使って準備をしていいことになった。
校内で作業する組と、買い出しに行く組に分かれることになったのだが──よりによって、選ばれたのは東雲とロロと俺の3人。
(……なんか、この2人と一緒に行動するの、久しぶりな気がする)
学校の近くにスーパーはないため、買い物はドラッグストアで済ませることになった。
カゴを片手に、俺が先頭を歩き、その後ろでロロは興味津々に店内を見回していた。
どうやらここに来るのは初めてらしい。
「コレ、なに?」
「白玉粉」
「しららま……?」
「白い団子を作る粉。でも、食べる機会はあんまりないかもな」
「しららま、コ」
「いや、今回買うのはこっち。たこ焼き粉だ」
俺が袋を見せると、ロロの青い瞳が寄り目になる。
それが妙に可愛くて、思わず胸がきゅんとした。
(……やっぱ可愛いな)
その後もロロは、指差した商品について東雲に質問し、淡々とした解説を受けていた。
説明があると、つい色々聞きたくなるらしい。
「コッチは?」
「紅しょうが」
「……カライ?」
「そう。焼きそばに乗ってる赤いやつな」
(平和だな~。初めてのおつかい感あって可愛いじゃん)
……そう思っていた、その時。
「これは?」
ロロがとことこ歩き、食品棚じゃないほうから小さな箱を手に取った。
何気なく視線を向け──二度見した。
(お、おいおいおい、それは……!)
他の薬より派手なパッケージ。端っこには妙に力強いフォントで「LOVE」の文字。
……間違いない。“コンドウさん”だ。
男子高校生にとってはちょっとした禁断のアイテム。
縁がなければ一生縁がないし、口に出すのはなんとなく恥ずかしい代物。
俺は東雲の反応をうかがった。
「……避妊具」
低い声で、東雲が至極あっさりと言い放つ。
「ヒニン……?」
「妊娠しないようにするやつ」
(いやっ!用途説明もいいけど、まず“コンドウさん”って名前を教えてやれよ!)
ロロは箱をしげしげ眺めながら、商品名を口の中で転がす。
「コン……?」
東雲が面倒くさそうに、でも流れるようなフランス語で説明。
(……おい、あの熊、フランス語で“コンドウさん”の講義までしてんのか?)
あまりの光景に、乾いた笑いがこみ上げた。
ロロはパッケージを両手で持ち、光に透かしてまで観察。
完全にお菓子か何かだと思ってる顔だ。
その横で、東雲は低い声で淡々と説明を続ける。
顔も声も一切ブレない。
まるで「今日はいい天気ですね」くらいのノリだ。
(……やっぱ経験済みの余裕ってやつか?)
脳内に、なぜか肌色が多めの東雲とロロの背中だけが見える“アレ”な映像が流れ込み──
「っっ!!」
慌てて首をブンブン振ったら、通りかかったおばちゃんに二度見された。
そして次の瞬間、ロロの顔がパッと明るくなる。
「オー!コンドォム!フランスのより小さいね!」
「声でっかいって!!!」
思わず一気に詰め寄ってロロの口を塞ぐ。
もごもご言ってるが、それどころじゃない。
周囲の客に聞こえたらどうするんだ!
さっきニヤッと笑ったおばちゃんが、またこっちを見た気がした。
東雲はというと──動じずに缶詰をカゴに入れている。
(お前、なんでそんな平然としてられんの……)
……あの筋肉質な体、あの落ち着き。
やっぱ経験済みなんじゃ──と想像した瞬間、さらに肌色成分が増えた映像が浮かび、慌てて頭を振った。
店を出ても、ロロは「フランスでは~」と東雲に楽しそうに話しかけ、東雲は相槌だけで歩き続ける。
(お前らな……その距離感でそんな話すんな)
俺はというと、頭の中の不本意な映像が消えず、変な汗が止まらなかった。
袋の中で、紅しょうがとたこ焼き粉がやけに真面目な顔して揺れているように見える。
……文化祭の買い出しで、こんなに精神削られるとは思わなかった。
しかも帰り際、ロロが無邪気に──
「ミンナ、あそこで、コンドーム、カイマスカ?」
(だからそういう質問はやめろっ!
日本はそんなオープンな国じゃないんだって!!)
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました
あと
BL
「目指せ!!魅力的な彼氏!!」
誰にでも優しいように見えて重い…?攻め×天然な受け
⚠️攻めの元カノが出て来ます。
⚠️強い執着・ストーカー的表現があります。
⚠️細かいことが気になる人には向いてません。
合わないと感じた方は自衛をお願いします。
受けは、恋人が元カノと同級生と過去の付き合いについて話している場面に出くわしてしまう。失意の中、人生相談アプリの存在を知る。実は、なぜか苗字呼び、家に入れてもらえない、手を出さないといった不思議がある。こうして、元カノなんか気にしなくなるほど魅力的になろうとするための受けの戦いが始まった…。
攻め:進藤郁也
受け:天野翔
※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。
※タグは定期的に整理します。
※批判・中傷コメントはご遠慮ください。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる