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15話
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学校に戻って、調理室に入ると、もうテーブルの上には材料と調理器具がずらっと並んでいた。
「じゃあ、たこ焼き作りたい人!!」
声をかけると、勢いよくロロが手を挙げる。
「タコヤキ!タコヤキ!!」
あのテンションで手を挙げられたら、人数多くてもじゃんけんで決めようなんて言えるはずがない。
たい焼きができなかったこともあり……やらせてやりたくもなるんだけど。
そう思ったのは俺だけじゃなかったようで、満場一致でロロは“たこ焼きチーム“に入ることになった。
そして案の定、その隣には熊五郎──東雲。
東雲が入ると、やりたいと上がっていた手がスッと下りる。
……まぁ、分かる。
結果、当然のように俺も“たこ焼きチーム”に。
つまり、買い出しメンバーでそのまま作ることになった。
「これでいいんだろ」
そう言って、高い棚からたこ焼き器を下ろしてくれた東雲。
しかし何というか…東雲が持つと、たこ焼き機なんてまるでおもちゃだ。
小さな丸い窪みが並んでいるのが、余計にミニチュア感を増している。
──店の名前、熊のたこ焼きやさん、とかで良くないか?
思わず、ブフッと笑ってしまうと、東雲が鬱蒼な瞳をこっちに向けてきて、思わず咳払いをした。
「で?具は何から入れてみる?」
同じたこ焼きチームになった俺は、二人に意見を求めた。
たこ焼きはタコが入っているから“たこ焼き”なんだが、予算の都合でタコはなし。
代わりに、こんにゃく、キムチ、納豆、チョコレート……と、ちょっとした実験みたいな具材が並んでいる。
「とりあえず、先に切るか」
と、こんにゃくを切ることになったが──
「ちょっ…危ない危ない!」
思わず声を上げた。
だってロロが、危なっかしい手つきで抑える手まで一緒に切りそうな勢いだったからだ。
「猫の手にして!猫の手!」
……と言ったところで、フランスで猫の手なんて通じるんだろうか。
「猫……フランス語で猫の手!」と、東雲に視線で通訳を要求する。
東雲がロロに一言。
頷いたロロは、彼の手元を見て、伸ばしていた指先をきゅっと丸めた。
──何だこれ、めちゃくちゃ可愛いじゃん。
不器用さも危なっかしさも含めて、見てて可愛くて仕方ない。
それに対して東雲は……うん、やっぱ熊の手だな。
同じように指を丸めても、可愛い要素は皆無だ。デカい奴は何してもデカい。
まぁでも、大きな背中を少し丸めて包丁を握る姿は……やっぱり可愛くはない。
どう、ひいき目に見ても、無理がある。
そう結論づけた俺だったが、横でシャルロットは「カワイイ」と満面の笑みを浮かべている。
(やっぱりフランスの感性はよくわからん。熊も可愛く見えるのか。)
熊っぽいから可愛いのか。
東雲だから可愛いのか。
……どっちにしろ、ロロの感情は全部、東雲に向いてる。
そのことを、俺はもう薄々気づいていた。
「じゃあ、たこ焼き作りたい人!!」
声をかけると、勢いよくロロが手を挙げる。
「タコヤキ!タコヤキ!!」
あのテンションで手を挙げられたら、人数多くてもじゃんけんで決めようなんて言えるはずがない。
たい焼きができなかったこともあり……やらせてやりたくもなるんだけど。
そう思ったのは俺だけじゃなかったようで、満場一致でロロは“たこ焼きチーム“に入ることになった。
そして案の定、その隣には熊五郎──東雲。
東雲が入ると、やりたいと上がっていた手がスッと下りる。
……まぁ、分かる。
結果、当然のように俺も“たこ焼きチーム”に。
つまり、買い出しメンバーでそのまま作ることになった。
「これでいいんだろ」
そう言って、高い棚からたこ焼き器を下ろしてくれた東雲。
しかし何というか…東雲が持つと、たこ焼き機なんてまるでおもちゃだ。
小さな丸い窪みが並んでいるのが、余計にミニチュア感を増している。
──店の名前、熊のたこ焼きやさん、とかで良くないか?
思わず、ブフッと笑ってしまうと、東雲が鬱蒼な瞳をこっちに向けてきて、思わず咳払いをした。
「で?具は何から入れてみる?」
同じたこ焼きチームになった俺は、二人に意見を求めた。
たこ焼きはタコが入っているから“たこ焼き”なんだが、予算の都合でタコはなし。
代わりに、こんにゃく、キムチ、納豆、チョコレート……と、ちょっとした実験みたいな具材が並んでいる。
「とりあえず、先に切るか」
と、こんにゃくを切ることになったが──
「ちょっ…危ない危ない!」
思わず声を上げた。
だってロロが、危なっかしい手つきで抑える手まで一緒に切りそうな勢いだったからだ。
「猫の手にして!猫の手!」
……と言ったところで、フランスで猫の手なんて通じるんだろうか。
「猫……フランス語で猫の手!」と、東雲に視線で通訳を要求する。
東雲がロロに一言。
頷いたロロは、彼の手元を見て、伸ばしていた指先をきゅっと丸めた。
──何だこれ、めちゃくちゃ可愛いじゃん。
不器用さも危なっかしさも含めて、見てて可愛くて仕方ない。
それに対して東雲は……うん、やっぱ熊の手だな。
同じように指を丸めても、可愛い要素は皆無だ。デカい奴は何してもデカい。
まぁでも、大きな背中を少し丸めて包丁を握る姿は……やっぱり可愛くはない。
どう、ひいき目に見ても、無理がある。
そう結論づけた俺だったが、横でシャルロットは「カワイイ」と満面の笑みを浮かべている。
(やっぱりフランスの感性はよくわからん。熊も可愛く見えるのか。)
熊っぽいから可愛いのか。
東雲だから可愛いのか。
……どっちにしろ、ロロの感情は全部、東雲に向いてる。
そのことを、俺はもう薄々気づいていた。
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