【完結】Reste, mon étoile. −君にもう一度会いたくて−

豊川夢久

文字の大きさ
16 / 46

15話

しおりを挟む
学校に戻って、調理室に入ると、もうテーブルの上には材料と調理器具がずらっと並んでいた。

「じゃあ、たこ焼き作りたい人!!」
声をかけると、勢いよくロロが手を挙げる。

「タコヤキ!タコヤキ!!」
あのテンションで手を挙げられたら、人数多くてもじゃんけんで決めようなんて言えるはずがない。
たい焼きができなかったこともあり……やらせてやりたくもなるんだけど。

そう思ったのは俺だけじゃなかったようで、満場一致でロロは“たこ焼きチーム“に入ることになった。

そして案の定、その隣には熊五郎──東雲。
東雲が入ると、やりたいと上がっていた手がスッと下りる。

……まぁ、分かる。

結果、当然のように俺も“たこ焼きチーム”に。
つまり、買い出しメンバーでそのまま作ることになった。

「これでいいんだろ」

そう言って、高い棚からたこ焼き器を下ろしてくれた東雲。
しかし何というか…東雲が持つと、たこ焼き機なんてまるでおもちゃだ。
小さな丸い窪みが並んでいるのが、余計にミニチュア感を増している。

──店の名前、熊のたこ焼きやさん、とかで良くないか?
思わず、ブフッと笑ってしまうと、東雲が鬱蒼な瞳をこっちに向けてきて、思わず咳払いをした。

「で?具は何から入れてみる?」
同じたこ焼きチームになった俺は、二人に意見を求めた。

たこ焼きはタコが入っているから“たこ焼き”なんだが、予算の都合でタコはなし。
代わりに、こんにゃく、キムチ、納豆、チョコレート……と、ちょっとした実験みたいな具材が並んでいる。

「とりあえず、先に切るか」
と、こんにゃくを切ることになったが──

「ちょっ…危ない危ない!」
思わず声を上げた。
だってロロが、危なっかしい手つきで抑える手まで一緒に切りそうな勢いだったからだ。

「猫の手にして!猫の手!」
……と言ったところで、フランスで猫の手なんて通じるんだろうか。

「猫……フランス語で猫の手!」と、東雲に視線で通訳を要求する。


東雲がロロに一言。
頷いたロロは、彼の手元を見て、伸ばしていた指先をきゅっと丸めた。

──何だこれ、めちゃくちゃ可愛いじゃん。
不器用さも危なっかしさも含めて、見てて可愛くて仕方ない。


それに対して東雲は……うん、やっぱ熊の手だな。
同じように指を丸めても、可愛い要素は皆無だ。デカい奴は何してもデカい。

まぁでも、大きな背中を少し丸めて包丁を握る姿は……やっぱり可愛くはない。
どう、ひいき目に見ても、無理がある。

そう結論づけた俺だったが、横でシャルロットは「カワイイ」と満面の笑みを浮かべている。

(やっぱりフランスの感性はよくわからん。熊も可愛く見えるのか。)

熊っぽいから可愛いのか。
東雲だから可愛いのか。

……どっちにしろ、ロロの感情は全部、東雲に向いてる。
そのことを、俺はもう薄々気づいていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました

あと
BL
「目指せ!!魅力的な彼氏!!」 誰にでも優しいように見えて重い…?攻め×天然な受け ⚠️攻めの元カノが出て来ます。 ⚠️強い執着・ストーカー的表現があります。 ⚠️細かいことが気になる人には向いてません。 合わないと感じた方は自衛をお願いします。 受けは、恋人が元カノと同級生と過去の付き合いについて話している場面に出くわしてしまう。失意の中、人生相談アプリの存在を知る。実は、なぜか苗字呼び、家に入れてもらえない、手を出さないといった不思議がある。こうして、元カノなんか気にしなくなるほど魅力的になろうとするための受けの戦いが始まった…。 攻め:進藤郁也 受け:天野翔 ※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。 ※タグは定期的に整理します。 ※批判・中傷コメントはご遠慮ください。

処理中です...