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ゴミの中の宝石
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投稿は後にしよう。
そんなことを思いながら、蓮井はスマホを伏せてベッドに横になった。
朝から疲れることばかりで、寝たら全部なかったことにならないかな──と、現実逃避という名の昼寝を決め込む。
まぶたがゆっくりと落ちていった。
──気づけば、部屋の中が淡いオレンジ色に染まっていた。
外はもう夕方だ。
体を起こそうとしたとき、腹のあたりに妙な温かさを感じた。
そっと視線を下げると、そこには小さく丸まったコジャクの姿。
尻尾をもふもふと体に巻きつけ、顔を完全に隠している。
コジャクも眠っているのか、じっと動かない。
(喋らないと……一緒にいても、静かでいいんだけどな)
「……おい。どこが顔だよ」
尻尾をそっと持ち上げてみる。
──が、すぐに別の尻尾がふわりと動いて、顔を覆い隠した。
今度は横から。
……やっぱりダメだ。どこからどう見ても“金色の毛玉”にしか見えない。
「……お前、綿毛の化身とかじゃないのか?」
25本もある尻尾。
どれを退けても、どれかが邪魔をする。
顔が見えたと思えば、また別の尻尾が動いて塞ぐ。
まるで意地でも姿を見せたくないらしい。
長い格闘の末、ようやく鼻先がちょこんと覗いた。
ぴくぴくと微かに動くそれが、なんとも言えず可愛い。
もう少し角度を変えて──と、そっとスマホを構える。
カシャ。
撮れた写真は、ふわふわの尾の中にぽつんと浮かぶ、黒い鼻の一点。
どう見ても“生物”というより“謎の生命体”。
「……いや、案外これはこれでアリかもしれないぞ」
妙に気になる人が、もしかしたら現れるかもしれない。
そう思いながら、写真を選択して譲渡ページの下書きに貼りつけ、“公開”を押した。
正直、ちょっとだけドキドキしている。
もし連絡が来たらどうしよう。
どんな流れで譲渡するんだろう。
もし、問い合わせが殺到したら──。
(先着順か? いや、コジャクが懐いた人を選ぶべきか? やっぱり)
……そんな妄想をしていたが、当然のように夜になっても反応はなかった。
閲覧数「1」。
登録者「0」。
「……まぁ、だよな」
蓮井は深くため息をつき、スマホを放り投げた。
やっぱり顔写真は必要だ。
人間のマッチングアプリだって、顔がないとスルーされる。
動物だって、きっと同じこと。
(……お前も、“選ばれない側”なのか)
そう思った瞬間、胸の奥がわずかに痛んだ。
不思議と、コジャクの寝息が少しだけ愛おしく感じた。
──が。
次の瞬間、腹の上でふるふると動く気配。
目を覚ましたコジャクが、すくっと立ち上がり、言った。
「あなた、いつになったらダージリン淹れてくださるの?!」
その一言で、愛おしさは粉々に砕け散ったのだった。
そんなことを思いながら、蓮井はスマホを伏せてベッドに横になった。
朝から疲れることばかりで、寝たら全部なかったことにならないかな──と、現実逃避という名の昼寝を決め込む。
まぶたがゆっくりと落ちていった。
──気づけば、部屋の中が淡いオレンジ色に染まっていた。
外はもう夕方だ。
体を起こそうとしたとき、腹のあたりに妙な温かさを感じた。
そっと視線を下げると、そこには小さく丸まったコジャクの姿。
尻尾をもふもふと体に巻きつけ、顔を完全に隠している。
コジャクも眠っているのか、じっと動かない。
(喋らないと……一緒にいても、静かでいいんだけどな)
「……おい。どこが顔だよ」
尻尾をそっと持ち上げてみる。
──が、すぐに別の尻尾がふわりと動いて、顔を覆い隠した。
今度は横から。
……やっぱりダメだ。どこからどう見ても“金色の毛玉”にしか見えない。
「……お前、綿毛の化身とかじゃないのか?」
25本もある尻尾。
どれを退けても、どれかが邪魔をする。
顔が見えたと思えば、また別の尻尾が動いて塞ぐ。
まるで意地でも姿を見せたくないらしい。
長い格闘の末、ようやく鼻先がちょこんと覗いた。
ぴくぴくと微かに動くそれが、なんとも言えず可愛い。
もう少し角度を変えて──と、そっとスマホを構える。
カシャ。
撮れた写真は、ふわふわの尾の中にぽつんと浮かぶ、黒い鼻の一点。
どう見ても“生物”というより“謎の生命体”。
「……いや、案外これはこれでアリかもしれないぞ」
妙に気になる人が、もしかしたら現れるかもしれない。
そう思いながら、写真を選択して譲渡ページの下書きに貼りつけ、“公開”を押した。
正直、ちょっとだけドキドキしている。
もし連絡が来たらどうしよう。
どんな流れで譲渡するんだろう。
もし、問い合わせが殺到したら──。
(先着順か? いや、コジャクが懐いた人を選ぶべきか? やっぱり)
……そんな妄想をしていたが、当然のように夜になっても反応はなかった。
閲覧数「1」。
登録者「0」。
「……まぁ、だよな」
蓮井は深くため息をつき、スマホを放り投げた。
やっぱり顔写真は必要だ。
人間のマッチングアプリだって、顔がないとスルーされる。
動物だって、きっと同じこと。
(……お前も、“選ばれない側”なのか)
そう思った瞬間、胸の奥がわずかに痛んだ。
不思議と、コジャクの寝息が少しだけ愛おしく感じた。
──が。
次の瞬間、腹の上でふるふると動く気配。
目を覚ましたコジャクが、すくっと立ち上がり、言った。
「あなた、いつになったらダージリン淹れてくださるの?!」
その一言で、愛おしさは粉々に砕け散ったのだった。
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