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第六章 貴方が狩りゲーで重視するのはなんですか?

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『次はチームポテトサラダ、チームスルメイカ、チーム辛味噌キュウリ、チームカニ味噌、チーム――』



「いよいよですね」

「やっとか、待ちくたびれたぜ」

「ふぁ~.....」

「......」


ん?そういえば......チームメンバーが足りないな。
5人のはずだけど、藤井 瑛真君は???

まで来てないだけかな.....。

嫌な予感を胸にモッチー先生の元へ歩いていく。



「おーし集まったな?んじゃ、全員このブレスレットつけろ~」


配られたのは無骨なブレスレット。鉄色で軽く、ツルツルとした触り心地。言われるがまま左手首に装着した。


「全員つけたな?詳しい説明は森に入ってからだ。ついてこい」


モッチー先生について行くと、木々を抜けて更地となった場所が視界に広がった。

ここは.....


「オレが異能で蹴散らしたとこじゃねぇか」


交流会でサマ臣君がやらかした場所。うわー、木が生えてこなくなったんだここ。


「詳しいルール説明すっからよく聞け。今からチームごと森に入ってカタラを狩ってもらう。ただし異能を使うのは禁止とする」


異能を使わず。異能を使わずカタラを狩る.....?


「「「「「「はぁ!?!?」」」」」」


本気で言っているのこの教師!?
――あ、れ?でもカタラって異能を使わなくても狩れるんだっけ?

.....不可能ではないのかな。


「もちろん素手であいつらを狩るのは不可能だ。だからこちらから武器を提供する。1チーム5つまで選んでよし」


指さされたのは地面に広げられた武器達。
短刀、短剣、槍、バルディッシュ、ハルバード、長剣、大太刀、弓、拳銃、ライフル、バックラー....etc.

試しに近づき、短剣を手に取ってみる。

なんの素材で作られているかは分からない。だけど何の変哲もない短剣というのはわかる。重さも、切れ味もだ。

そう――僕の使う切り裂く刃リッパーほど軽い訳でもなく、良く斬れるという訳でもない。


驚くほど普通の短剣。


「異能でズルしようとしてもダメだぞ~。お前らに付けてもらったブレスレットは影子の操作を不可能にするものだ。もちろん試験が終わるまで取れないようロック済みだから無駄な事はしないように。説明は以上!武器を選び次第チームカニ味噌から出発な」


モッチー先生の説明が終わり、それぞれのチームは集まって話し合う。それは僕達も例外ではない。


「どうします?これヴァイス相当きついですよ」

「テキ先め。おもしれぇ試験内容じゃねぇか」

「はいそこ、言ってる場合じゃないです。それでヴァイスの皆さん、武器の心得はおありで?」



ヴァイスにとってきつい試験と言ったのは、彼らが基本的に武器を使って戦うことがないからだ。
瀧ちゃんのクレアティオやサマ臣君を見ればわかる通り、基本的にドール頼み。本人は無手なことが多い。

でも、もしかしたら家の方針で武器の扱いを習ってるってこともあるかもしれない。

さて、3人はいかに。


「.....オレは武器なんか使ったことねぇな」

「俺も~」

「俺も」


.....モッチー先生が僕のチームをヴァイスで固めたのはこのためか!とんだハンデじゃないか!
そ、そうだ、頼みの綱である藤井 瑛真君は――



「藤井?あ~.....っと、あったあった。あらら、そいつ今朝自主退学して学校出ていったってよ。ということでお前のチーム4人な」


クソ教師め。仕組んだ?もしかして仕組んだ?
そのにやけ顔を見ているとそう勘繰ってしまう。

息を深く吐き、深呼吸。チームの元へ戻った僕は4人で試験をクリアしなければいけないことを伝えた。しかし3人はどうでも良さそうに返事をするだけだった。


「逃げる奴なんていらねぇよ。それよりなんの武器を使うか……迷うな」

「俺はバスターソード!使ってみたかったんだよねぇ~」

「俺は平和主義者だから弓を」


4人になったことをみんな気にしてない。

.....僕はもう人数について考えるのをやめた。



「萩野君はバスターソードで財前君は弓.....なら僕は双剣で」

「使い慣れてるから~?」

「そういう理由で選んだわけではありませんよ」


まぁ使い慣れてはいるけど、本当の理由は――後ほど。


「オレはバックラーにした」

「バックラー....小盾ですか。またなんで?」

「気分」

「あ、そうですか」


これで僕達4人の武器は決まった。
.....双剣、バスターソード、弓、バックラー、そして片手剣。
藤井君は居ないけど、1チーム5つまでいいからね。まぁ武器は多いに越したことはないだろう。


「準備完了しました」


モッチー先生にそう伝えると、彼はニヤリと笑ってパチンと手を叩く。その音によそを向いていたメンバー3人の注意が先生に向く。


「おー、なら出発な。おっと、そうだ。これ渡しとく」

「なつかし~!ビー玉じゃん」


萩野君が言うように、渡されたのは赤いビー玉のようなもの。
なにこれ?


「その玉に寄ってきたカタラを狩れ」

「それで試験終了ですか....了解です」


説明することはもう無いという先生の態度にメンバー3人は意気揚々と森に入っていく。
僕もそれに続こうとするが、しかし腕を掴まれ足を止める。


「なんですか先生?」

「.....お前のチームだけ難易度高ぇから」

「全く.....僕にゲームで負けたからってこういうので意趣返しするのは大人気ないのでは?」

「はっ、悪いな。俺はゲームに関しては負けず嫌いなんだ。覚えとけ」

「.......ええ、覚えときます」


それだけ言って先に行く3人の後を追う。





森に入ってか数分が経った。後ろを振り返ればもう更地は見えず、辺りは木々に囲まれている。

見通しの悪さに一抹の不安を感じながらも警戒は怠らない。


「それにしてもこの腕輪マジで異能使えねぇな。こんなもの作れるとしたら五大家の美城か?」

「どうでもいいよ~、そんなこと。俺としてはこんな試験を思いついたテキ先の動機が気になるねぇ」


はぁ。僕はいつカタラが襲ってくるのかビクビクしてるっていうのに、この2人は散歩をしているかのような軽い足取りだ。
もう少し緊張感というのを持って欲しい。財前君を見習いなさい。



「一条さん.....あれ」

「ん?」


何かを発見したらしい財前君。指のさされた先には銀色の何かが落ちているのが確認できた。


「2人とも止まってください」

「あ?なにかあったのか」

「ああ来なくていいですよ。――これは双剣?」


こっちに来ようとしたサマ臣君を手で制しながら、銀色の何かに寄っていくとそれが双剣であることがわかった。


「なんで武器が落ちてんだ....?一条さんのじゃないよな?」


財前君の言葉に違うと首を振る。僕の選んだ武器はちゃんと腰に帯剣している。


「持ち主は食われたな。血の匂いがする」


爛々と輝く赤い瞳を歪めてサマ臣君はそう言った。そんな今にもヨダレが垂れそうな獣の笑みに1歩彼から離れる。

同時に、ふと気づいた。

.....彼は血の匂いに敏感だ。もしかしたらグラウンドに集まっていた時から血の匂いを感じていたのかもしれない。テンションが高かったのはそのせいかも。だとすると、

――気を引き締めないとね。

それ即ち、試験が始まる前から血の匂いを纏ったカタラが森に放たれていたということ。


「手強そうですね」

「上等だァ」


嬉しそうに笑うサマ臣君に苦笑う。相対するとこの上なく厄介だが、こういう場面では頼もしい限りだ。






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