八尋学園平凡(?)奮闘記

キセイー

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第5話 戦略的撤退だってよ

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「ふぅ........」


悪鬼は深く息を吐き、乱れてデコに垂れた髪を掻き上げる。
その動作がエロく見えた俺はこの学園に汚染されているのだろう。.....ちょっと頭の休息が必要ですね俺。

ビクッ

な、なんでそんな睨むんですか?
あ~怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!


「ク、クハハハハッ............啼かす」

「ごめんなさいっ!!」


ダッシュだ俺!
捕まったら命どころじゃねぇ、貞操が無くなるぞこれ!!


「だ、誰かーっ!助けてぇ!」

「逃がすかテメェ!」


俺が悪いみたいになってるけど最初にちょっかいかけてきたのあんたじゃん!


「そこまでやっ!!!」


来た救世主!!
食堂入口で風紀という腕章を腕に着ける生徒達を引き連れた白髪ピンクメッシュの.......あれ?
見たことあるなぁ....あの色。

だがしかし!俺には考えている余裕が無いのですよ。なぜなら悪鬼がすぐ後ろにっ!

風紀の人達が食堂内になだれ込み、揉みくちゃ状態に。
うぉぉぉ、乱闘の輪が広がった!
このまま食堂脱出だ~。おっと危ない。
ちょ、俺蹴らないで!?

あ、前方に強そうな後ろ姿発見!
白髪ピンクメッシュ......?
まぁいっか!!

せいっ


「うぉ!?」

「げっ!?」


裏膝キーック!そしてフェードアウト
俺は人混みに紛れて悪鬼と白髪ピンクメッシュを隠れ見る。

白髪は凄まじい殺気を発し立ち上がり振り向いた。

うわ、白髪の人めっちゃ男前だ。鋭い黒目がちょい怖いけど。
.....この人なんでメガネかけてるの?いや、メガネをかけるのは悪いことじゃないよ?
ただ.....似合わねぇ。メガネのせいでせっかくの男前が損なわれている気がする。

メガネが似合わないやつって居ねぇだろ!とか思ってたけど、居たわ。なんかメガネかけるとバカっぽく見えるってある意味凄いなぁ。こういう美形も存在するんだ。(しみじみ)


「またお前か。」

「はっ!?俺じゃねぇ!チッ、またこのパターンかよ!!」


ざまーみろ悪鬼め。早く退治されてしまえ!
ってか白髪の人、変わったイントネーションだな。関西弁か?いや、でも標準語混じってるし......?


「どーせこの乱闘もお前のせいやろ?」

「........テメェに用はねぇ。そこを退け。」

「それは無理やなぁ。一度ならず二度までもワイの裏膝に蹴りいれおって....ただで済むと思うとらんよな?.......またその腕折ったるわ!!!!」

「上等だ!二度と歩けないようその足へし折ってやらァ!!!」

「この脳内どピンク野郎がっ!今日こそその頭血ぃで真っ赤に染めたる!」

「んだとこのださメガネ!今日こそそのメガネかち割ってやる!」


この2人仲悪いなぁ。罵り合いながら殴りあってるよ。
今気づいたんだけど、白髪ピンクメッシュさんは俺が以前悪鬼に嗾けた人じゃん。

申し訳ないことしたなぁ。
俺はそう思いながらも食堂を後にする.....まえに、残りのカラーボール投げとこ。


「ほいっ!」


天井高く投げられたカラーボールはあっという間に人混みの中に消えた。
たーまやーってね。それ花火か。


「誰じゃコラーーー!!!!」

「設楽ァァァァァァ!!!!!」


やっべ、まさかのラッキーパンチが。逃げよ。


もう午後の授業受けるのたるいなー。よし、サボろ。
ということで、寮へ帰ります。

王道君?知らん。1人で帰って来れるでしょ。
役員に捕まったなら俺は助けらんないし。
.....もう強く生きろとしか応援できない。頑張れ王道君。

それにしても結構動いたからお腹すいたなぁ。部屋の冷蔵庫何かあったけ?

ぐぅぅぅぅぅ

ついにお腹まで鳴っちゃったよ。カツサンド食ったのになぁ。ホント燃費悪い身体だ。まぁ寮まであと少しの辛抱だし頑張るか。


「お?猫屋じゃねぇか。」


この声と呼び方は.....


「おっちゃん。こんなとこでどうしたんですか?放浪癖?」

「放浪癖は猫屋の方だろ。まぁ散歩してたんだよ、おっちゃんは。」

「そうですか、じゃあさようなら。」

「ちょいちょいちょい!お前さんお腹すいてるんだろ?」

「?なんで知ってるんですか?」

「あんな大きな腹音鳴らしてりゃ、そらわかるぞ。準備室に魚介天丼あるんだが。どうだ?」

「そこまででかかったですかね?って、魚介天丼!?行きます!是非行かせてください!」

「ははっ、なら行くか。」


普通ならすぐに寮に帰れる位置にいるのにわざわざここから遠い校舎内の数学準備室に行くなどありえないだろう。たとえ、おっちゃんという付加価値があっても俺は行かない。....他の人は知らんけど。
だがしかし、魚介天丼があるなら話は別だ!!

俺、実は大の魚好きなんですよ。食堂でカツサンド食ってたけどあれは気分ね。そりゃ大好物だからって毎食食いたいってわけじゃないし。

でも今は魚の気分!
魚の手料理は手間がかかるからね。既に魚介天丼が用意されてるなら行くしかないでしょ!

俺はおっちゃんに肩を組まれ準備室へと向かった。魚介天丼が楽しみすぎて肩組まれたこととかどうでもよかったね。
身長差があるから肩組むと俺の方に体重かけられて、めっちゃ重かったけど笑顔で許した。

言うけど普段の俺ならこんなこと許さないからね?


「失礼しまーす。魚介天丼」

「あい、いらっしゃい。ちょい待ってな。」


魚介天丼♪魚介天丼♪魚介天丼♪
あぁ涎が垂れそう。


「ほら、おまちどうさん。」

「いただきます!!」


ウマウマ。天丼のタレとアナゴの天ぷらはまじで良い組み合わせ。マグロも、アジも、鯖も、全て美味い。至福。


「美味しそうに食うなぁ。」


おっちゃんが俺の隣に座った。隣.....?
まぁいいか。モグモグ、ウマウマ。


「猫屋はピアスあけねぇの?」

「っん、モグモグ。....耳あんま触んないでください。あと、痛いの嫌いなんであけないですね。」


食ってる時に右耳をするりと触られて、思わず叫びそうだったが何とか耐えた。
あの、触んないでって言ったのに触り続けないでぇ.....擽ったいんですけど。

しかも触られてるのは悪鬼に噛まれた方.....おっちゃんの手に悪鬼の唾液着いたかも?
......言わぬが仏か。


「痛いのなんて一瞬だぜ?あけろよ穴。」

「嫌ですよ。一瞬の痛みも感じたくないんです。....おっちゃんはピアスつけてるんですね?」


ふとおっちゃんの耳を見ると両方に黒色のピアスがあった。なんかすごい高そうなやつだな。


「ん?あぁ、まぁな。猫屋はピアス似合うと思うんだけどなぁ。菫色とか似合うだろうなー。」

「あ~、あける機会があれば菫色のつけてもいいですよ~。」


おっちゃんがしつこかったので適当に流して、また魚介天丼を味わう。
モグモグとしていると、隣が静かになったのが気になった。さっきまでピアスピアスと煩かったのに。


「おっちゃん?」


俺がそう呼びかけるとおっちゃんは身体をビクッとさせ、伏せていた顔をゆるゆると上げた。


「ん、どうした猫屋?」

「?や、呼んだけ。」


おっちゃんの様子はいつも通りだ。気のせいか?
一瞬すげぇ怖い顔してたように見えたんだけど...いつものにやけ顔だし。


「そういやもうすぐ交流会だな。」

「あ~もうそんな時期かぁ。」


交流会....それは他学年との親交を深めるための行事である。
1年から3年の不良たちが交流する。もうこの時点で血なまぐさい未来しか見えない。

去年はドロケイで、それはもう酷かった。全学年ランダムで泥棒と警察に別れて警察が泥棒を追って捕まえるんだけど、泥棒って檻に入れられても外から他の泥棒が触ったら解放されちゃうじゃん?
それにキレた警察が泥棒をボコボコにしたんだよね。で、気づいたのよ。気絶させれば逃げられないって。......頭悪いよねぇ。

もうそっからは血で血で洗う戦いよ。泥棒も警察に捕まらなければいいから普通に応戦するし。気絶させてから運ぶとか普通だったからね?

頭はいいんだけど思考が不良寄りって言うか不良だから、どうしても最終的には殴り合いになるんだよ。

俺は思った。これ、親交深めれてなくね?って。逆に憎しみが育ってた気がする。
まぁ、不良風に言えば親交(意味深)は深めれたんだろうけど。


「お前さんが寮前に居たってことは午後受けないんだろ?」

「はい。受けません。」

「正直でよろしい。実は帰りのホームルームで交流会の説明をするつもりだったんだが、今言っとくな。」

「.....ありがとうございます。」

「よし、心して聞け。今年はキングダムハントだ。」


キングダムハント......国狩り?
また血が流れそうなゲームだな。やっぱ生徒会頭おかしいのか?親交深める気ないよね。誰だよ発案者。


「ルールは、学年ごとにチームを別けてポイントを取り合うってのが主だ。生徒会は身体能力おかしいから別枠で、1年生、2年生、3年生、生徒会の4チームで争う。風紀は見回りで不参加な。で、各チームにはキング1人、クイーン1人、ルーク2人、ナイト2人、ビショップ2人、ポーン8人をランダムで決めてもらう。まぁもう察しているだろうが、その16人は雑兵とは違ってポイントがすげぇ高い。」


なるほど。
キング:200
クイーン:100
ルーク:40
ナイト:35
ビショップ:30
ポーン:15
という内訳で、ポイントを奪い合うんだな。
雑兵は1ポイント。....これはいかにチェス駒を捕まえるかだな。

.......捕まえる?


「おっちゃん先生。どうやったらポイントを得たことになるんですか?捕まえるだけじゃダメですよね。」

「それはだな。ハチマキの数でポイントを数えることになっている。」

「ハチマキ?それはまた......。」


背の低い人たちが不利ですね。王道君とかしゃがんでもらわないとハチマキ取れないんじゃ?
これは暴力の匂いがっ、どうせあれだろ?
ハチマキを取りたければ俺に膝をつかせろ的なことになるんですよね?

結局喧嘩じゃん。

いや、もしかしたら捕まって大人しくハチマキを渡す人がいるかも........いて欲しい。


「明日の帰りのホームルームでクジ引いて雑兵とそれ以外を決めっからサボるなよ?」

「了解です。さて、魚介天丼も食べ終わりましたし、俺はもう行きますね。ご馳走様でした。」

「おう、どういたしまして。いいか?明日はサボんなよ?」

「わかってますって。そもそも俺そんなサボったことないですし。」

「それは嘘だな。」

「あははははは、バレちゃいましたか。では明日。」

「.....じゃーな。」


数学準備室を出て寮へと帰る。

明日くじ引きかぁ。
雑兵がいいな俺。これでキングとかクイーン当てたら当日休もっかな.....それはそれであとが怖いか。
どの学年も5クラスまであるからチェス駒に当たる確率は低いと思うけどさ、王道君居るからなぁ。絶対あの子チェス駒引くでしょ。
これは交流会中は別行動かな?
流石の俺も命は惜しいし。






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