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憧れの人
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柚希と恋人になって9か月。Ωになってまだ2年だから恋人同士っぽい感じが出せないのは大目に見てくれ、などと繰り返し晶に小さな牽制をされ、しかしこちらも負けじといつかは番になろうとこちらも懇願を繰り返す。ある意味中身は童女の様に純粋な柚希の歩調に合わせてゆっくりと愛を育んて来たはずだった。
あの夏、彼女とユズ先輩がお揃いで買っていたのが羨ましく妬ましくて、自分もこっそり買ったイルカのストラップ。未練がましくスマホにつけていたことを見とがめられて、『物持ちいいな?』なんて笑われて。それがきっかけでまたあの水族館にいった。
あの頃はこっそり忍んで見つめるしか無かった柚希のくっきりした二重の大きな瞳が、イルカやペンギン、コツメカワウソを見ては大喜びし、懐っこく半月型になる可愛い笑顔を独り占めできて晶は幸せだった。
まるで高校生の恋愛に戻ったかのように柚希と初めてのたどたどしい口づけを交わしたのは、その水族館を再び訪れた時、照明が落とされた室内展示室の天井まである見上げる程大きな水槽前でだった。
「昔、家族みんなで来たこともあったんだ。あの時は……楽しかったな」
そうぽつりと呟いて、夜のように暗い室内に青い海を閉じ込めたような静かな水槽前で、柚希はどこか寂し気な表情を浮かべたまま、大きな瞳で瞬きもせず尾びれをひらひらと揺らめかせてゆったりと泳ぐ魚たちを眺めていた。
その横顔がひどく遠くに感じて、晶は思わず柚希を抱き寄せ口づけてしまった。それは長年の想いを込めた、長い長い口づけで、その最中柚希は鼻で息ができなかったらしく、途中でぷはっとなってしまって、恥ずかしそうにはにかんで顔を片手で隠す慣れぬ姿に胸が熱くなった。
「俺さ……。彼女いたんだけど、なんだかんだで、その……」
女の子と付き合っていた時すら、柚希は結局キス一つするタイミングをつかめないまま、忙しくなって疎遠になったり、別にまた付き合うことができても長くて四か月も付き合えなかったらしい。なんとなくお友達でいましょうという雰囲気になってしまって、その後はオメガ判定をされてしまって別れたりと自分から能動的に告白したことは無かったというのだ。
無理もないと思う。柚希は晶が今まで出会ってきた誰よりも可愛らしいところがある愛おしい人だし、柚希と付き合った少女たちも、もしかして本能で彼の本質を嗅ぎ分けていたのかもしれない。
「ちゃんと付き合ったのはさ、多分お前が初めてなんだと思う」
そんなことを言われて滾らない男はいないと思う。その夜宿泊した海辺のホテルでそのまま身体を繋いでしまいたかったが、柚希が身体を震わせて怯えるのでぐっと我慢をした。
(大切にしよう。無理なことはしない。ずっと大事にしたい)
あの夏、彼女とユズ先輩がお揃いで買っていたのが羨ましく妬ましくて、自分もこっそり買ったイルカのストラップ。未練がましくスマホにつけていたことを見とがめられて、『物持ちいいな?』なんて笑われて。それがきっかけでまたあの水族館にいった。
あの頃はこっそり忍んで見つめるしか無かった柚希のくっきりした二重の大きな瞳が、イルカやペンギン、コツメカワウソを見ては大喜びし、懐っこく半月型になる可愛い笑顔を独り占めできて晶は幸せだった。
まるで高校生の恋愛に戻ったかのように柚希と初めてのたどたどしい口づけを交わしたのは、その水族館を再び訪れた時、照明が落とされた室内展示室の天井まである見上げる程大きな水槽前でだった。
「昔、家族みんなで来たこともあったんだ。あの時は……楽しかったな」
そうぽつりと呟いて、夜のように暗い室内に青い海を閉じ込めたような静かな水槽前で、柚希はどこか寂し気な表情を浮かべたまま、大きな瞳で瞬きもせず尾びれをひらひらと揺らめかせてゆったりと泳ぐ魚たちを眺めていた。
その横顔がひどく遠くに感じて、晶は思わず柚希を抱き寄せ口づけてしまった。それは長年の想いを込めた、長い長い口づけで、その最中柚希は鼻で息ができなかったらしく、途中でぷはっとなってしまって、恥ずかしそうにはにかんで顔を片手で隠す慣れぬ姿に胸が熱くなった。
「俺さ……。彼女いたんだけど、なんだかんだで、その……」
女の子と付き合っていた時すら、柚希は結局キス一つするタイミングをつかめないまま、忙しくなって疎遠になったり、別にまた付き合うことができても長くて四か月も付き合えなかったらしい。なんとなくお友達でいましょうという雰囲気になってしまって、その後はオメガ判定をされてしまって別れたりと自分から能動的に告白したことは無かったというのだ。
無理もないと思う。柚希は晶が今まで出会ってきた誰よりも可愛らしいところがある愛おしい人だし、柚希と付き合った少女たちも、もしかして本能で彼の本質を嗅ぎ分けていたのかもしれない。
「ちゃんと付き合ったのはさ、多分お前が初めてなんだと思う」
そんなことを言われて滾らない男はいないと思う。その夜宿泊した海辺のホテルでそのまま身体を繋いでしまいたかったが、柚希が身体を震わせて怯えるのでぐっと我慢をした。
(大切にしよう。無理なことはしない。ずっと大事にしたい)
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