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運命の出会い
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秋の日は落ちるのが早い。 急には目がなれぬほど薄暗く日が暮れてきた公園からは和哉ぐらいの年の子どもはどんどん引けていく。
その代わりに近隣中学から部活帰りの中学生がちらほらと通りがかる。毎日だいたい同じ時刻に通るからなんとなく見覚えのある顔ばかりだ。
道路側の端に植えられた金木犀が甘く濃厚な香りを漂わせている。
このところ毎日和哉がベンチに座っていることを知っているものも多いようだ。その日はある生徒がつかつかと近寄ってきてかなり強い口調で呼びかけられた。
「お前いつもここ陣取ってるよな? 俺らもここ座りたいんだけど、どいてくんない?」
仁王立ちした少年のカバンについたサッカーボール型のキーホルダーが大きく揺れた。
先に座っていたのは和哉だし、向こうは近隣の中学の制服姿でをつけた年上のグループだ。しかし相手が大人数だからといって即引くのもしゃくだった。
「ボクが先にここに座ってたんですけど?」
「僕だって? お前、女じゃねぇの?」
それだけで周りに嘲るような笑いがさざ波のように伝わって、和哉は非常に不愉快になった。
母が亡くなる前からやや普通の男の子よりは長めだった髪の毛は今や伸び放題だ。
妻子思いで土日は必ず家族で出かけるなど、あれだけ活動的だった父は、妻を亡くした衝撃から立ち直れずに、今では休みには昼までと言わず終始寝てばかりだ。
平日は平日で帰ってくる時間も遅いので、和哉の身だしなみについて気がつく余裕がなかったのだろう。もっとも家事代行の人が来ているから服装が、小汚いということもない。
同級生はみな和哉に同情的でいちいち髪型について指摘されたことはなかった。初対面のものから見たらこの頃の和哉は愛らしいかった母の面差しに似た、美少女に見えていたのかもしれない。
サラサラの光に透かすと金色にすら見える明るい茶色の髪に、同じくガラス玉みたいと言われるほどの色の薄い瞳。夏休みの途中からどこにも行けずに家に引きこもっていたせいで、肌も真っ白で、その上今日に限って母親の趣味に寄った、明るい色調の赤と黄色のチェックのシャツを着ていた。
可愛い顔立ちをしているくせに生意気な態度の和哉から、良くない刺激になったようだ。中学生達はわざと意地悪をしてみたい欲求に駆られざわつく。
「まじかよ? 男女? ほんとに男?」
「女みてぇな顔じゃない? 」
「離せよ! クソ野郎」
今まで使ったこともないように汚い言葉を吐き捨てて、和哉は掴まれた腕を振りほどく。その時、拳が相手の身体に激しくあたり、中学生は怖い顔になった。
「なんだこいつ? 生意気じゃねぇ?」
和哉が嫌気がさして家に帰ろうとベンチから立ちあがったところを、ばんっと突き飛ばされた。
「……っ!」
よろけた拍子に運悪く日陰で乾いていなかった湿った泥の上に尻もちをついた。当然ズボンは泥だらけ、ついた掌もピリッと痛みが走る。
その上大切なスマホも回転しながら結構遠くまで飛んでいく。そしてこちらに向かって歩いてくるところだった制服の少年の足元に落ちた。
「ふざけんなよ! なにすんだよ!」
悔しさと理不尽さに和哉が顔を真っ赤にして声を震わせた。流石に周りの中学生たちも、小学生相手に何をやっているんだと引き気味になっている。
突き飛ばした相手も引っ込みがつかなくなったのか謝るタイミングをなくして立ち尽くしていた。
その代わりに近隣中学から部活帰りの中学生がちらほらと通りがかる。毎日だいたい同じ時刻に通るからなんとなく見覚えのある顔ばかりだ。
道路側の端に植えられた金木犀が甘く濃厚な香りを漂わせている。
このところ毎日和哉がベンチに座っていることを知っているものも多いようだ。その日はある生徒がつかつかと近寄ってきてかなり強い口調で呼びかけられた。
「お前いつもここ陣取ってるよな? 俺らもここ座りたいんだけど、どいてくんない?」
仁王立ちした少年のカバンについたサッカーボール型のキーホルダーが大きく揺れた。
先に座っていたのは和哉だし、向こうは近隣の中学の制服姿でをつけた年上のグループだ。しかし相手が大人数だからといって即引くのもしゃくだった。
「ボクが先にここに座ってたんですけど?」
「僕だって? お前、女じゃねぇの?」
それだけで周りに嘲るような笑いがさざ波のように伝わって、和哉は非常に不愉快になった。
母が亡くなる前からやや普通の男の子よりは長めだった髪の毛は今や伸び放題だ。
妻子思いで土日は必ず家族で出かけるなど、あれだけ活動的だった父は、妻を亡くした衝撃から立ち直れずに、今では休みには昼までと言わず終始寝てばかりだ。
平日は平日で帰ってくる時間も遅いので、和哉の身だしなみについて気がつく余裕がなかったのだろう。もっとも家事代行の人が来ているから服装が、小汚いということもない。
同級生はみな和哉に同情的でいちいち髪型について指摘されたことはなかった。初対面のものから見たらこの頃の和哉は愛らしいかった母の面差しに似た、美少女に見えていたのかもしれない。
サラサラの光に透かすと金色にすら見える明るい茶色の髪に、同じくガラス玉みたいと言われるほどの色の薄い瞳。夏休みの途中からどこにも行けずに家に引きこもっていたせいで、肌も真っ白で、その上今日に限って母親の趣味に寄った、明るい色調の赤と黄色のチェックのシャツを着ていた。
可愛い顔立ちをしているくせに生意気な態度の和哉から、良くない刺激になったようだ。中学生達はわざと意地悪をしてみたい欲求に駆られざわつく。
「まじかよ? 男女? ほんとに男?」
「女みてぇな顔じゃない? 」
「離せよ! クソ野郎」
今まで使ったこともないように汚い言葉を吐き捨てて、和哉は掴まれた腕を振りほどく。その時、拳が相手の身体に激しくあたり、中学生は怖い顔になった。
「なんだこいつ? 生意気じゃねぇ?」
和哉が嫌気がさして家に帰ろうとベンチから立ちあがったところを、ばんっと突き飛ばされた。
「……っ!」
よろけた拍子に運悪く日陰で乾いていなかった湿った泥の上に尻もちをついた。当然ズボンは泥だらけ、ついた掌もピリッと痛みが走る。
その上大切なスマホも回転しながら結構遠くまで飛んでいく。そしてこちらに向かって歩いてくるところだった制服の少年の足元に落ちた。
「ふざけんなよ! なにすんだよ!」
悔しさと理不尽さに和哉が顔を真っ赤にして声を震わせた。流石に周りの中学生たちも、小学生相手に何をやっているんだと引き気味になっている。
突き飛ばした相手も引っ込みがつかなくなったのか謝るタイミングをなくして立ち尽くしていた。
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