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ミモザの恋が実る時
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バイト先で俺の一個年上の代は女子が圧倒的に多い。
女子の先輩たちの噂話がマネージャーにまで届いているとは驚きだ。
まあ、ここのバイトの人たちってみんな和気あいあいとしてて仲がいいからなあ。年に何回かバーベキューとかボウリングとか集まるイベントがあるし、ここで出会った人同士が結婚しましたってハガキが、バックヤードに何枚も貼ってあるぐらいだ。
だからか知らんが、マネージャーになる人は伝統的にお節介な人が多いらしい。俺は目をぱちくりさせてから口をむうっとへの字に曲げた。
「……彼女では、ないっす。前にも話したかもですけど、第一第三日曜日は用事があって」
「あー。習い事だっけ?」
いちいち全員のシフトの要望なんて覚えちゃいられないんだろうけど、そんな風にとぼけられて、俺はむきになってらしくなく少し語気を強めてしまった。
思ったより突っ込んでこられて面倒だなって思ったけど確認されたから仕方ない。
「いや、そういんじゃなくて、人と会う約束があるんです」
そしたら先輩は何を勘違いしたのか、目を輝かせてニヤニヤしてきた。
「やっぱ彼女とデートか。お前は見た目も中身も、可愛いのと格好いいのが絶妙に混ざり合っててモテそうだもんな。周りに黙っててやるから、俺にだけどんな娘か教えろ」
「いやいやいや。会うの、彼女じゃなくて友達なんですけどっ」
「へえ?」
なんてちょっと裏返り気味の声を出されて驚かれたから、こっちもビビる。そんなに驚かれることなんだろうか。なんだか馬鹿にされたような気分だ。
「友達と月に二回もわざわざ日曜日会うなんて、そんなことある? 隠さなくてもいいぞ。友達って、狙ってる娘? ここのバイト先の子とか? 俺にいえねぇとか?」
先輩いい人なんだけど、こういう時しつこくて辟易してしまう。俺は肩を落として赤いスニーカーのつま先を見た。瑞貴、待たせてごめんなあ、帽子でへたってなった髪の毛なんて気にしないで即、ここを出ればよかったと益々後悔する。
「いや、普通に、男の幼馴染っすけど」
「男友達? 月に二回わざわざ曜日まで決めて会うって、そんなんあまり聞いたことないなあ」
「え……」
わざわざ同じ内容を繰り返して断言されたから、俺は戸惑ってしまう。そんなに変なことをしている自覚はなかった。おしゃべりな方の俺が珍しく言葉に詰まったからか、マネージャーはさらに押し込んできた。
「でもまあ、幼馴染との約束は恋人のお願いには負けるよなあ。坪井の事、助けてやんねぇと。それにここんとこ、日曜入る人少なくって困ってたから、これからは度々はいって欲しいんだよね」
「そうっすか。……分かりました」
なんて笑って答えてはみたけど余計にもやっとした。また顔に出てる自覚がある。そのまま小さく頭を下げて挨拶をすると足元に目線をおとしたまま店を後にした。
これは日曜のシフトを今より増やされて、死守してきた第一第三日曜日の空白にも無理やりねじ込まれてしまうのかもしれない。
誰にだって事情はあるし、自分だって体調不良になる可能性はあるからそれは仕方ないって思えるけど、シフトの調整はやっぱり一回でも譲るとほら、やっぱりあいつシフト譲れるでしょって狙われる。薄々想像はしていたが、あーあ。これからどうしようかなあと思う。
(瑞貴、忙しくて中々会えないから、今日みたいに一日がっつり遊べる日を楽しみにして、それモチベにして生きてんのに。楽しい気分に水ぶっかけられた感じ。だいたいさあ、恋人との用事が上等で、幼馴染との約束が格下かどうかなんて他人に決めつけられたくないんだけど!)
先輩には言えなくて飲み込んだ言葉が喉元まで次から次にせり上がってくる。ぎゃあぎゃあ声に出して騒いでしまいたい気分だ。
俺にとっては、瑞貴は物心ついた時から傍に居た奴で、一緒にいる方がむしろ普通の相手だ。離れている今の方が変なんだ。昔から特別で一番仲がいい、大事な人なんだよ。
むかむかする。スマホをポケットに突っ込んだら中にいれっぱなしのレシートに手が当たる。それを腹いせにくしゃって潰した。
中学まではずっと同じ学校に通っていたから毎日一緒にいられたけど、瑞貴が有名男子校、俺が地元の県立高校って進学先が分かれてから、一日がっつり一緒にいられる日の方がむしろ『貴重品』になった。
日曜日の約束を言い出したのは瑞貴の方からだった。だけど瑞貴が俺の心中を察してくれたんじゃないかなって思ってる。
女子の先輩たちの噂話がマネージャーにまで届いているとは驚きだ。
まあ、ここのバイトの人たちってみんな和気あいあいとしてて仲がいいからなあ。年に何回かバーベキューとかボウリングとか集まるイベントがあるし、ここで出会った人同士が結婚しましたってハガキが、バックヤードに何枚も貼ってあるぐらいだ。
だからか知らんが、マネージャーになる人は伝統的にお節介な人が多いらしい。俺は目をぱちくりさせてから口をむうっとへの字に曲げた。
「……彼女では、ないっす。前にも話したかもですけど、第一第三日曜日は用事があって」
「あー。習い事だっけ?」
いちいち全員のシフトの要望なんて覚えちゃいられないんだろうけど、そんな風にとぼけられて、俺はむきになってらしくなく少し語気を強めてしまった。
思ったより突っ込んでこられて面倒だなって思ったけど確認されたから仕方ない。
「いや、そういんじゃなくて、人と会う約束があるんです」
そしたら先輩は何を勘違いしたのか、目を輝かせてニヤニヤしてきた。
「やっぱ彼女とデートか。お前は見た目も中身も、可愛いのと格好いいのが絶妙に混ざり合っててモテそうだもんな。周りに黙っててやるから、俺にだけどんな娘か教えろ」
「いやいやいや。会うの、彼女じゃなくて友達なんですけどっ」
「へえ?」
なんてちょっと裏返り気味の声を出されて驚かれたから、こっちもビビる。そんなに驚かれることなんだろうか。なんだか馬鹿にされたような気分だ。
「友達と月に二回もわざわざ日曜日会うなんて、そんなことある? 隠さなくてもいいぞ。友達って、狙ってる娘? ここのバイト先の子とか? 俺にいえねぇとか?」
先輩いい人なんだけど、こういう時しつこくて辟易してしまう。俺は肩を落として赤いスニーカーのつま先を見た。瑞貴、待たせてごめんなあ、帽子でへたってなった髪の毛なんて気にしないで即、ここを出ればよかったと益々後悔する。
「いや、普通に、男の幼馴染っすけど」
「男友達? 月に二回わざわざ曜日まで決めて会うって、そんなんあまり聞いたことないなあ」
「え……」
わざわざ同じ内容を繰り返して断言されたから、俺は戸惑ってしまう。そんなに変なことをしている自覚はなかった。おしゃべりな方の俺が珍しく言葉に詰まったからか、マネージャーはさらに押し込んできた。
「でもまあ、幼馴染との約束は恋人のお願いには負けるよなあ。坪井の事、助けてやんねぇと。それにここんとこ、日曜入る人少なくって困ってたから、これからは度々はいって欲しいんだよね」
「そうっすか。……分かりました」
なんて笑って答えてはみたけど余計にもやっとした。また顔に出てる自覚がある。そのまま小さく頭を下げて挨拶をすると足元に目線をおとしたまま店を後にした。
これは日曜のシフトを今より増やされて、死守してきた第一第三日曜日の空白にも無理やりねじ込まれてしまうのかもしれない。
誰にだって事情はあるし、自分だって体調不良になる可能性はあるからそれは仕方ないって思えるけど、シフトの調整はやっぱり一回でも譲るとほら、やっぱりあいつシフト譲れるでしょって狙われる。薄々想像はしていたが、あーあ。これからどうしようかなあと思う。
(瑞貴、忙しくて中々会えないから、今日みたいに一日がっつり遊べる日を楽しみにして、それモチベにして生きてんのに。楽しい気分に水ぶっかけられた感じ。だいたいさあ、恋人との用事が上等で、幼馴染との約束が格下かどうかなんて他人に決めつけられたくないんだけど!)
先輩には言えなくて飲み込んだ言葉が喉元まで次から次にせり上がってくる。ぎゃあぎゃあ声に出して騒いでしまいたい気分だ。
俺にとっては、瑞貴は物心ついた時から傍に居た奴で、一緒にいる方がむしろ普通の相手だ。離れている今の方が変なんだ。昔から特別で一番仲がいい、大事な人なんだよ。
むかむかする。スマホをポケットに突っ込んだら中にいれっぱなしのレシートに手が当たる。それを腹いせにくしゃって潰した。
中学まではずっと同じ学校に通っていたから毎日一緒にいられたけど、瑞貴が有名男子校、俺が地元の県立高校って進学先が分かれてから、一日がっつり一緒にいられる日の方がむしろ『貴重品』になった。
日曜日の約束を言い出したのは瑞貴の方からだった。だけど瑞貴が俺の心中を察してくれたんじゃないかなって思ってる。
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