フリージアを嫌わないで

天埜鳩愛

文字の大きさ
46 / 47
リナリアを胸に抱いて

20

しおりを挟む
 再びぐっっと唇に鈴口を押し付けられた透は、口を離してけほけほと咳き込む。
 普段の雷なら慌てて謝ったかもしれないが、ベッドの上では違っていた。咳が治まった透をすかさず押し倒し、肉を貪る獣のようにのしかかる。足を乱暴に開かせ、綻び濡れた蕾に己のものを擦り付けた。
 透は「ひあっ」と悲鳴をあげた。まだ呼吸が整わずとても苦し気だ。眉を寄せた表情は色っぽくて、もっともっとと責め苛みたくなる。そういう危うげな魅力が透にはある。きっと兄も透のそこに溺れたのだろうと、分かりたくもないのに知れるのだ。
(俺のものだ)
 蕾にぐっと頭だけ押し当てた。切っ先を飲み込ませ、引くことを繰り返す。先走りでぐちゃぐちゃと音が鳴る。乳首を指で苛め、情欲を高める口内を荒らす口付けを施したが、それ以上はわざと進めない。焦れた透がきつく、雷の腕を掴む。爪が食い込むが逆に興奮が高まった。
 透の前が再び立ち上がり、ゆらゆらと腰を動かす仇っぽい仕草を繰り返す。細身の先っぽから雫を滴り落としながら雷の硬い腹筋をしとどに濡らす。

「透さん、俺の腹、べちゃべちゃ。気持ちよくてしょうがない?」
「い、言わないで」
「……俺は嬉しいよ。透さんが俺で気持ちよくなってくれるってことでしょ?」
「やあっ」

 透は雷の腹に自らのものを擦り付け腰を振るのを止めた。代わりに自分の手で高みを極めようとする。しかし雷は唇の端を上げるように嗤うと、その手を掴んで頭の上で張り付けにした。

「自分だけ、イキきたいんだ」
「雷くん、離して」
「俺が欲しいって言って。俺のでイキたいって」
「雷くん……、雷くん」

 べろりと胸を舐め上げたら、透は大きな瞳に涙を浮かべたまま、熱に浮かされたように雷の名前を呼んだ。善がる透は雷のものをもっと飲み込もうと腰を浮かせ摺り寄せてきた。

「……ほ、欲しい、雷くんが、欲しいからあ」
「何が欲しいの?」
「い……。意地悪」

 はあっ、はあと零す息と甘い嬌声。滑らかな太腿が雷の胴を周り、踵でぐっと背中を押された。焦れた透の見せた大胆な仕草に雷はにやりと笑う。

「俺はね、たまに好きな子、泣かしたくなるんだ」

 雷は自分の口をついた言葉に、自分で驚いた。なんとも子供じみた台詞だ。
 幼い頃から自立したい、子どもだからと軽んじられたくない、そう気を張って生きてきた。だけど五つ年上の透が、年下の普通の青年として雷を扱ってくれるから、それが心地よくて、無意識にそんな台詞を口走ってしまった。

(……俺、大分キてるな。透さんは甘ったるくて、中毒性のある、危険なベノムだ)

 透の眼差しも、震える舌も、滑らかな素肌もすべて、痺れるほど甘い毒となって雷の全てを侵していく。
 手に入れたと錯覚したのは気のせいで、囚われているのは自分の方なのかもしれない。だけど構わない。未来永劫、このままでいたい。
 透はぽってりと赤く染まった唇を綻ばせ、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。

「雷がそうやって甘えてくれるの、僕……。好きだよ」
「……っつ!」
 鈍いようで、おっとりしているようでいて、透には何もかもお見通しなのだ。焦れたのはむしろ自分の方だった。
「透さんの中に、俺を入らせてっ」
「おいで」

 招かれた先、奥まで一気に貫いて、天にも昇る程の快感が襲う。
 頭の上で戒めていた手を外し、両手の指をぐっと絡めてシーツに押し付けた。突き上げるたびに混ざりあう雷の吐息と透の甘い嬌声。
 今度は自らの腹を濡らし、伝う透の飛沫の香りが、互いのフェロモンに混ざりあう。

「らい、らい、すき……」
「俺も、好きだ」

 愛したい、愛されたいと強く強く願った相手から求められている。
 ああ、ずっと。あの花を胸に中に抱いてきてよかったと。この恋に透が応えてくれた幸せを、雷はまた強く噛み締めていた。                      
                                         終 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...