香りの比翼 Ωの香水

天埜鳩愛

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1 双子の兄弟

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初めてその少年に出逢った時、ラグは故郷の人々の争いに巻き込まれ、ふた月にも渡る拘束を解かれた直後だった。

牢屋とまでは行かないが快適とは呼べない監察室から出され、面会室まで連れてこられた。

かつての職場の同僚の他には、荷物を差し入れてくれる家族もない。
あるものを着回し流石にみすぼらしい格好をしていると自分でも思っていたが、少年は眉をややしかめただけでラグを値踏みするようにじっと見つめかえしてきた。

隣に立つ少年の父は硬い顔つきをしたまま、にこりともせず、少年と同じ青い目でラグをみやり目配せをした。

「ああ。分かっている。明日にでも出発する」

少年がただ目線をあげただけでは足りない程、男の顔は遙か頭上にある。
堂々たる偉丈夫に圧倒され、少年が息を呑むのがわかった。

「息子のソフィアリだ。よろしく頼む」

まだほんの十五、十六といったところか。
黒髪に遠征時に見た凪いだ海原のような、深い深い青い瞳。
意志の強そうな釣りあがった直線の眉が、少女のようにも見える顔に力強さを与えていた。
父はその細い背中を力強く押し、ラグの前に彼を立たせた。

「これからお前を守ってくれるものだ。ラグ・ドリだ」

「ラグ……」

まだ声変わりすら途中のように、ハスキーな声で呟く。熊のように大きな手の平が差し出された。

ソフィアリは躊躇なくその手をとって、思いの外強い力で握り返した。

ついに旅立ちの時がきた。ほんの数週間前までは思いもしなかった人生の大転換期に、ソフィアリは思いを馳せて身震いする。
ぎゅっと指先が白くなるほど、ラグを掴んでいない方の手で自分の上着の裾を握りしめた。



ソフィアリが物心ついたときには、自分と同じ顔がもう一つ当たり前に隣にあった。
寂しいときも嬉しいときもいつも一緒にいた半身。
眠るときは向かい合って手をつないでいた記憶がある。

ソフィアリとセラフィンは双子の兄弟だ。
黒髪に青い目。色白でほっそりしてる。
よく似ている双子だが一応二卵性らしい。

父方の伯母に似てキリッとした美人顔だが、兄のソフィアリのほうがやや気の強そうな顔をしていて、弟のセラフィンのほうがややのんびり屋で優しげな顔をしている。

兄弟は他の双子の例にもれず仲がよく、片時もそばを離れずに育った。
主に活発なソフィアリの後ろを、おっとりとしたセラフィンが絶えずついて歩いていた。

双子には兄が二人いて、親に間違われるほど年長の兄が一人と、その下に数個年上の兄。 

この世には男女の別の他にアルファ、ベータ、オメガという性別がさらにある。大多数のベータ。希少で男女ともに子をなせるオメガ。人数的には少ないがアルファは非常に優秀な為支配階級に多い。
兄たちはこのアルファに当たり、全てにおいて有能だ。

家族は他に貴族院議員でアルファの父に、父とは少しだけ年の離れた美しく朗らかなオメガの母の6人家族だった。

ソフィアリとセラフィンは高等教育を受ける学校の3年生。二人とも大変賢く2年までの過程を1年で終わらせているため、飛び級で3年生となっていた。
細いが上背があるため、一つ年上のものたちと混じっても遜色はないのだ。

思春期になり、双子の片割れソフィアリには悩みの種が2つあった。

一つは、双子の弟のセラフィンが自分にベッタリでろくに友人を作ろうともしないことだ。
そして未だにソフィアリと同じ部屋で寝起きをしていることも悩みだった。

以前から今年で高等教育学校を卒業ともなる身で、空き部屋もある広い屋敷の中、同じ寝台に上がるのは流石に抵抗があった。

おっとりした愛らしい夫人である母は、セラフィンったら甘えん坊さんねといって取り合わないし、上の兄はとっくに結婚して家を出ていて今は外交のためここ数年他国で暮らしいる。
次男は兄弟にかまけているような歳ではないので家で顔を合わせることもあまりないのだ。

しかし双子の弟はそんなことを気にするほうがおかしいとばかりに相変わらず同じ寝床に入ってくるのだ。一度断ったら、クリッとした目を潤ませて抗議されてしまったのが2年前。

可愛い弟に弱いソフィアリはそれ以来その事を言い出せないでいた。

だが…… 先日あることが発覚し父母侍女と結託したソフィアリは、二人で使っていた部屋をセラフィンには黙って出ることにした。
家族それぞれの部屋のある階とは少し離れた旧祖父母の寝室を片付けてもらって、そちらに急にうつったのだ。



「ソフィー! どういうこと?!」

風呂に入っている間に消えた兄を、屋敷中探して歩く弟の気配を感じていたが、部屋の鍵をかけて閉じこもっていた。
しかしついに見つかったらしく、廊下からどんどんと重い扉を叩かれる。

「セラ、今日から俺はここで寝起きするから、お前もいい加減一人で寝起きしろ」

「なんだよそれ…… お前最近おかしいぞ」

憤懣やるかたないといった調子の不機嫌な声がする。もともとは母似の性格のおっとりした弟なのだが、最近はそっくり同じだったはずの身長もソフィアリより大きくなり、がっしりしてきて生意気になった。
そしてソフィアリのほうは取り残されたように少年の華奢さを残して、ひょろっと身長が伸びていく。

しかしそれには2つ目の悩みが関係していた。

一週間前のことだ。学校で他の生徒とは別にソフィアリだけが教師に呼び出された。呼び出しに心当たりがあるとすれば、先日受けたバース性の判定結果だろうと思い当たる。他の同級生は一つ年上のため昨年受けていたバース性の判定検査を、飛び級をしていて年齢が一つ年下になるソフィアリとセラフィンは先日受けたばかりだったからだ。
しかしなぜ自分だけ呼び出されたのかと怪訝に思っていると教師から蝋付けされた親書を親に渡す前に、内容について個別に本人に話すと説明を受けた。

当然ソフィアリは父や兄たちと同じく自分たち双子もアルファであると思っていたしそのことを露ほども疑ったことはない。いつだって双子は他の生徒たちより成績も体格も知性も優れていたから、検査結果などさほど気にも留めていなかったのだ。
しかし執務机に座った教師は非常に険しい顔をしてソフィアリの到着を待っていた。入室したソフィアリもやや緊張して息をのむと、隣に立つ保健衛生士の女性とともにこちらを見つめ、重苦しい雰囲気で口を開いた。

「結論から言うと、双子のうち、弟のセラフィンはアルファだが、君はオメガだった。この事態を受け、望めば再検査が受けられるということが書かれた親書をご両親にお見せしてほしい。再検査するかどうかはご両親の判断に任せる」

「そんな…… 俺たちは双子です。そんなの何かの間違いです」

考えてもみなかった判定結果に、みるみる狼狽したソフィアリに、痩せぎすの保健衛生士が宥めるように声をかけた。

「双子と言っても貴方たちは二卵性ですし、ないことではありません。学校ではオメガ専用のクラスを移ってもらうことになるかとは思いますが、最近ではオメガの生徒さんも数は少ないですが学校に通っている実績もありますし……」

その言葉にソフィアリは激高し、顔を真っ赤にして言い返した。

「学年が一緒くたの特別編成クラスですよ! そんなの思う通りに学べるとは思えない! 学校が人権を配慮してお飾りでつくったようなクラスに、俺に通えと言うんですか?」

すると普段温厚な教師が強い口調でソフィアリに釘をさす。

「言葉が過ぎるぞ。我が校のオメガのクラスは国の中でも早くに設置され、伝統もある。もしも君が本当にオメガだったとして、そのように周りから云われたらどう思うか」

ソフィアリは青い目に怒りをため、ギラギラとさせながら教師たちを睨み付けた。

「ありえません。俺はオメガなんかじゃない。だから二度目の検査も受けます。この手紙は両親に渡し、間違っていた場合は謝罪を要求します」
  
そう言い捨てると手紙を握りしめて体当りするようにドアを開け、部屋をあとにした。
  
他の生徒にぶつかりそうになりながら足早で歩くソフィアリの心は激しく波打っていた。しかしソフィアリがこうまで激高したのには訳があった。

数ヶ月前からだ。時折同じ寝台で眠っているといつの間にかセラフィンに後ろから抱きすくめられていることがあった。
最近ではセラフィンはすっかり逞しくなってきて次兄のようにすらりと手足も長くなった。
その腕に絡め取られるようにして気がつくと胸のなかで目を覚ます。

そして無意識にセラフィンがソフィアリの項に唇を当てていることもあった。

びっくりして飛び起きようとするが逆に力強く抱きしめられて、まるで腕から抜け出せなかった。いつの間にかこんなにも力の差がついたのか……

寝ぼけているのか、起きているのかわからないような声でソフィー、いい匂いがすると項に口づけながら呟かれた。
その時ソフィアリは電撃が走ったように何か甘やかでしかし、震えるほど恐ろしい心地がしたのを覚えている。

そしてソフィアリも感じていたのだ。
僅かだがシトラスにネロリの混じったような、爽やかな甘い香りがセラフィンのその身体からゆらりと立ち上っていたのを。

人は恐れていたことの図星を刺されると逆上する…… ザマはないな、と今までの人生で一度たりとも自分自身に失望したことのなかったソフィアリは、激しい自己嫌悪に陥っていた。教師の言葉に動揺し、差別的な発言をした自分を恥じた。

そして意を決して家令に付き添われて再びバース検査を受け直すことになったのだったが、しかし結果は信じがたいことに変わらなかった。

日頃冷静で威厳のある父も、のんびりとした母も家令からの報告に流石に言葉を失っていた。

父よりもオメガである母のほうがショックを受けたらしく、しきりに望まない番になることを防ぐチョーカーをつけることをソフィアリに懇願してきたのだが、まだ発情期に入ったこともないためそれを拒否した。

本当のところはオメガの象徴とも言うべきチョーカーをつけることに多大な抵抗があったのだが、オメガである母親にそんなことを告げられるはずもなく激しく日々煩悶した。

そして当分セラフィンには言わないでくれと両親に頼みこみ、即座に部屋を分けてもらうように訴え、それは当然のことに聞き入れられた。

だからこの部屋の外で幾らセラフィンが中に入ろうと頑張ろうとも、絶対にこの鍵を開けるわけにはいかないのだ。

発育がよく成長期の自分たちはいつプレ発情期にはいり、その後すぐの初めての発情ヒートを迎えてしまうかもわからない。

アルファとオメガの兄弟に間違いがおこり、万が一兄弟で番にでもなったら大変なのだから。
番関係は夫婦にも等しい。実の兄弟での過ちは禁忌でありおよそ赦されるものではないのだ。 

廊下でひとしきり激しくドアを叩いていたセラフィンだったが、やがて諦めて部屋に戻っていった。

翌朝も互いに不機嫌なまま、二人は口も聞かずに登校し、ソフィアリはセラフィンとは関わりの薄い友人たちと過ごしてあえてセラフィンとは、距離を置くようにしていた。登下校も別々にいき、家の中でも食事の時以外は部屋にこもって顔を合わせない。家の中は火が消えたように寂しくなり、母も憂い気な顔で二人の様子を心配しているようだったが、ソフィアリ自身も気持ちが落ち着かず、周りを気遣うまでの余裕を失っていた。

そんなことが2週間は続いた頃。
ソフィアリは夜更けに風の吹き抜ける肌寒さで目が覚めた。

上掛けを手繰り寄せようと、身体を起こす。
すると向かいにあるテラスに月明かりを背に立ちすくむセラフィンの姿を見つけ、胸の鼓動が止まらなくなった。

セラフィンが二階にあるこの部屋へ窓伝いに入ってきたとわかり、背筋に冷たい汗が伝っていく。

「どうして俺のこと避けるの?」

悲しげな声はいつの間にかソフィアリのそれよりずっと低くなっていて、まるで知らない男の声のようだった。
声を上げかけるとさっと動いたセラフィンが寝台に乗り上げて、ソフィアリの口元を掌で塞ぐ。

「……ソフィーがオメガだから?」

誰がバラしたのか、勝手に書類を見たのか。
ソフィアリは暴れながら抗議の声をあげるが、全てほっそりしているが大きな掌に飲み込まれてしまう。

セラフィンはそのままソフィアリを寝台に組敷いた。子供の頃からセラフィンとの喧嘩で負けたことのなかったソフィアリは即座に身を起こそうとするが、寝台に張り付けられた腕はびくともしない。

「……誰も俺にソフィーがオメガだなんて話はしてないよ。……俺はずっと知ってたんだよ。ソフィーがオメガだって」

そういうと熱っぽさが伝わる強引な仕草で口を塞いだまま、軽々と兄を膝の上に抱きあげ胸の中に囲い込んだ。

「ソフィーは昔からすごくいい匂いがしてて……だから知ってたよ」

そう言って兄の細い首筋に柔らかな唇をそわす。明らかにじゃれ合いの域を越えてきた性的な触れ方に呼吸が止まりそうだ……

この男は一体誰なのだろう。
甘く響く低い声色でソフィアリを翻弄する、しなやかで逞しい身体のこの男は……

月明かりが薄っすらとしか存在を浮き立たせない相手を、とても実の弟とは思えなかった。

ソフィアリは本能からくる震えをセラフィンに悟られまいと唇を噛みしめ、身体に力を込めた。

「ソフィー、俺が怖いの?」

わずかに外された手の隙間から、勝ち気な声でまさか! と叫ぶが、ふと嘲笑するような気配が伝わり内心泣きたくなった。

いつだって自分の後ろをついて「ソフィーまって、おいていかないで」とニコニコと追いかけてくる。
可愛くて、おっとりして、守ってやりたい存在だったのに。

どうして同時に生まれた弟がアルファで俺がオメガなんだ!
叫び出したい気持ちと言いしれぬ敗北感に打ちのめされ、いつの間にかソフィアリの身体は抑えが聞かぬほど怒りと悲しみに震えていた。

「ソフィー…… 離れている間辛くて仕方なかった…… 友人たちと親しげにする姿を見て、あいつら全員殺してやりたかったよ。ソフィーは俺のなのにって」

「俺がいつお前のものになったっていうんだ!」

兄の怒りも気にせぬような素振りで、セラフィンはぎゅっと強く背中から回した左手で腰を抱き、右手は身をよじりセラフィンの胸に手を突き上げてできるだけ離れようとするソフィアリの右の手首をきつく掴みあげた。

「っ!」

痛みに思わず声を漏らす。ふふっと嗜虐的に笑いながら顔を寄せてセラフィンが鏡写しの様によく似た顔で囁く。

「母様のお腹の中で一緒にいたときから、俺たちはずっと一緒だった。オメガとアルファに別れたのだって、腹の中にいたときみたいにまたソフィアリと一つに、溶け合えるように。神様がそうしてくださったんだよ。
……ソフィー。いい匂いがする。ソフィーも感じてるんでしょう? 俺のフェロモン」
 
ふわふわと漂う、セラフィンのフェロモンの香り。甘く爽やかなそれに絡め取られると、ソフィアリは自分の身体が弛緩し次第に頭にモヤがかかるような酩酊状態になっていくのを感じた。

頭を支えるように移動した弟の腕に頭部を預けるようして、仰のいて薄く唇を開く。
セラフィンはその唇に指を這わせてうっとりとつぶやく。

「ソフィー。綺麗…… 」

そして子どもの頃に遊びでしていたキスとは違う、濃厚な口づけを兄に与えた。

ぴくりっとソフィアリの身体が震え、セラフィンは寝具のシャツの間から差し入れた身体の滑らかな感触を確かめながら、柔らかく力を失った舌を舐めとる。
どこで覚えたのか、感じたくなくてもわざといやらしく意識するような巧みさでソフィアリの官能を煽ってくる。
暫くそうやって唇を犯され、ソフィアリがぐったりと腕に身体全てを預けてくるのを見計らってから、セラフィンは名残惜しそうに唇を舐めとりながら顔を離した。

「毎日こうして通ってフェロモンを当ててあげるよ。今までもそうしてきたんだよ?そうしたらきっと、初めての発情が来たとき一番傍にいるのが、俺になるでしょ。発情期がきたらすぐに番になろうね。ソフィー大好き。これからもずっと一緒にいよう」

子供の頃と変わらず無邪気な口調でそう言い、わずかに反応をしかけたソフィアリの足の間のふくらみを弄ろうとしたが、その手にソフィアリは爪をたて必死に拒んで身を引けるだけ引いた。

「セラ、駄目だ…… こんなこと、許されない」

すると月明かりに照らされた自分とよく似た面差しが、艶やかに笑みを浮かべながらソフィアリの身体をきつく抱きしめた。

「誰が俺たちを引き裂けるの? 女神様が俺たちをこういうふうに作ったんだから。俺たちは祝福されてる。そうだろ? ソフィーさえ俺を拒まなければずっと一緒にいられるんだよ。……それとも、ソフィーは俺から離れたいの?」

その声は低く冷たく、まるでソフィアリの不実を詰るかのように恐ろしかった。フェロモンが香りたち、再び身体と心を絡めとってこようとする。ソフィアリはそれに抗うために自分の爪が手のひらに食い込むほど強く握りしめた。

アルファはフェロモンで相手を支配することができる。当然自分もアルファだと思っていたソフィアリは、もしも自分が愛したものが他のものに奪われると思ったらそれを使ってしまうのかとしれないなと、若者にありがちな夢想として無邪気にそう思っていた。

しかし、実際使われる立場になった時、その支配される恐怖は想像の上を行った。
オメガとは、圧倒的弱者だ。
力も弱く、こうして抱きしめられた腕から抜け出すことも拒むこともできない。その上無理やりにでも番にされたら生涯そのアルファから逃れることはできないのだ。

悔しくて悔しくて身体から焰が立ち上りそうな怒りがあるのに、それを相手にぶつけることもできない。ぎりぎりと歯をか食いしばって怒りに震えるが、
その一方で心のどこかで誰よりも愛おしい弟を拒めない自分がいる。

「ソフィー。今までどおり。俺だけのソフィーでいて。あんなやつらと一緒にいないで。眼差し一つでも他にやらないで…… じゃないと俺、ソフィーを番にするまで閉じ込めてしまうかも。それともこうしようかな……」 
 
セラフィンの不埒な手のひらが、ソフィアリの尻の間を緩やかに弄り、熱い息を漏らしながらソフィアリの項を強く吸い、甘く噛みついた。

「……今すぐここで、奪ってしまおうか?」

ひくっと喉が恐怖で鳴る。
屈したくない。でも逃げることもできず、ソフィアリはプライドをずたずたに引き裂かれながらポロポロと涙を流し、弟に懇願した。

「しない! 他の奴らと一緒にいたりしないから…… だから離して。お願いだから……」

「……約束だよ」

首筋に舌を這わされ、ズボンの中に手を入れられる。
やめて、と拒むがその手は止まらず、信じたくないが、セラフィンのフェロモンによってゆるゆると立ち上りかけていたソフィアリの雄を取り出される。
 
セラフィンはわざと身体を窓辺に向けさせ、座り直すと胸にソフィアリの細い背中を持たれかからせるようにした。
青白い光の中にふるふると震えるソフィアの陰茎を晒して熱い吐息を漏らす。

「ふふっ…… ソフィーのここ、可愛い。責任をとって、俺が解放してあげる」
 
「やめて……」

拒否する言葉を唇ごと飲み込まれながら、まだ少し柔らかかった茎を思う様扱かれる。

尻から背中に硬いものが当たる感覚に怯えながら、いかにセラフィンを怒らせずこの場をやり過ごすかそのことだけ考えようと努力する。
しかし、人の手による圧倒的な快感の前に理性はなすすべもなく砂のように崩れていく。

「ああ…… ソフィー。ずっとこうして触りたかった」

噛み締めた唇から溢れるように喘ぎ声が漏れ、それをとても自分の声とは思えず、ソフィアリは涙を零して身を震わせる。

果てる予兆を感じたセラフィンはソフィアリを乱暴に寝台に押し倒すと、自らの唇で陰茎を包み込み、大きくひとしゃぶりしてその精を口内に受け止めた。

「いやあ!!!」

ビクビクと打ち上げられた魚のように身を震わせ屈辱と快楽の縁に沈んだ細く美しい身体を、セラフィンは口元を拭いながら、帝王のように冷たく昏い目で見下ろす。

そしてかすれた色っぽいうめき声を漏らしながら、自らの逸物を取り出し性急に強くしごき、ソフィアリのはだけた服から見える真っ白な胸元を汚すように解き放った。

そしてそれを嗤いながら胸元に擦り付けるようにされる。

ソフィアリは恐怖と緊張からそのまま意識を手放した。






 


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