香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

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溺愛編

装具3

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 そのまま指先に何度も口づけられ、ふわふわとした心地になってきたヴィオの項をセラフィンは再び甘噛する。

「ふぁあ」

 ゾクゾクっとする快感が駆け上がり、前のめりに倒れ込むのをセラフィンが胸元に手を置き我が身にピタリと引き寄せた。
 そのままはだけたシャツの隙間に手を忍ばせ、項を舐め齧りながら胸の飾りをくにくにといじり始めたのだ。

「せ、せんせえ?」

 なんで? どうして?というような顔で振り向いてきたヴィオに向かい、濡れた色っぽい口元でセラフィンは艶美に笑うと高らかに宣言した。

「番になるのは待つけれど、それまで手を出さないとは言ってない」
「ふぇえ?」

 それはもう、輝く美貌で有名な愛の女神もかくやという色気漂う表情なのに言っていることの率直さにヴィオは動揺して大きな動作をしかけたが、セラフィンが意地悪くヴィオの胸飾りをきゅっと摘んでしまった。

「はうぅっ」
「クィートにも口説かれていたんだろう? あいつは綺麗なものに目がないんだ。すぐに手を出そうとするし。ヴィオは無防備すぎて、危ないったらない。よくも今まで無事に育ってきたものだ……。俺と初めて会った時だってかどわかされかかっていただろう? さっきだってね? お前かその気になったならばそのまま今すぐ番にしてしまおうって気ぐらい俺にだってあったのだよ? アルファがこんなに美味しそうなオメガを横においてお預けできるのは奇跡だって思いなさい」

 少しすねた口調のセラフィンが面白くて、胸元を撫ぜられてるという濡れ場であるというのに不謹慎ながらヴィオが声を立てて軽やかに笑う。

「余裕だな」
「だって、先生なんだか可愛いです」
「あー、それそれ。そろそろやめなさい。俺の先生呼び。なんだか患者に手を出してるような気分になる」
「じゃあなんてお呼びすればよいのですか」

 するとセラフィンは少しだけ黙り込むとヴィオを抱えなおして後ろから抱きしめる。すでに腰のものが硬く当たっていることにヴィオは気が付いていたが、そこを指摘すると藪蛇になりそうなので顔を赤くしながらうつむいた。

「セラと。親しいものにはそう呼ばれている。お前にもそう呼んでほしいよ」

 それはジルが『先生』呼び以外にセラフィンに呼びかけていたもので、二人の親しげな様子にヴィオはちょっぴり疎外感を感じていたから、とても印象深く耳に残っていた呼び名だった。

(ぼくもそう呼んでいいんだ。特別になれたんだ! )

 そんな風に素直にうれしくて、ヴィオは身体をよじって笑い声をあげると、初めてその名を呼んでみたのだ。

「せ、せら?」

 なのにいざ口に出すと恥ずかしくてうまく舌先に乗せられなかった。
 しかしセラフィンにしてみたら、最愛のものに少し舌ったらずにそう呼ばれることが耳にこんなに心地が良いとはと感じ入ってしまった。

「ヴィオ。お前のセラ呼び、凄くいいな。興奮する」

 そう言い捨て今度は耳の縁をべろっと舐めた後、耳をはぐはぐと獣のようにかじりながら痛めている方の腕で無理せぬぐらいにヴィオを抱きしめ、利き手でヴィオの足の間のくたりとしていた茎に手を伸ばす。あの夜の再来のような動きに図らずもなってしまったが、ヴィオは今度は素直に身を任せて伸びやかで野山を駆ける牡鹿のように美しい筋肉がついた足をゆっくりと開いてそれに応じていった。セラフィンは再び茎を擦ることを再開し、ヴィオはくびれた腰をセラフィンの硬いそれに擦り付けるようにして仰のきながら、嬌声を甘く零れさせた。

「最後まではしないから。俺で心地よくなって欲しい。だんだんと俺に慣れて行ってくれればいい。心地よいことしかしないから……。ヴィオ。一緒に少しずつ、幸せになっていこうな」
「あんっ……。せらぁ。そこ……。きもちいいよ」

 雁首まで一気に摺り上げられる刺激にうっとりとしつつ、声を漏らしながらも。ヴィオは否定するように小さく首を振ってから振り向いてにっこりと笑った。

「ああっ……。でも。今も、もう、ぼく幸せだよ」
「ああ、言われてみればそうだな。俺も今幸せだ」

 振り返るヴィオの唇を情熱的に吸いながら、セラフィンは再び香り立つヴィオの香気に包まれて幸福感に満たされる。その晩はそうして互いに触れ合いながら、気が付くと眠ってしまっていたヴィオを胸に抱いて、セラフィンも明りをつけたまま天蓋だけ引いて眠りに落ちてしまった。





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