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溺愛編
香り2
しおりを挟む再び恐る恐る濡れた髪の毛を掻き分けて首筋を晒すと、そこはまっさらで噛み痕は見受けられない。さらにさらに強くなった香りがダイレクトに鼻孔に忍び入ってきて抑制剤など飲んでもいないまだ未分化のアダンでもわかるほどの官能的な香り。股間がずきずきと痛くなり、流石に焦ってきた。身体を離して立ちあがろうとするのに、魅了されたように動けず、どんどん顔を近づけていってしまう。
アダンは操られるように寝台によじ登ると彼の身体の上に四つん這いに手足をたてる。そして首筋に鼻先を近づけると、思うさま香りを吸い込んだ。
くらくらと初めて酒を盗み飲んだ時のような酩酊感に晒され、夢中で犬か狼か分からぬが、動物的な感覚で味見するように彼の首筋をぺろぺろと舐めてしまう。
相手は見ず知らずの男で、自分が意地悪をしたせいで川に落ちた複雑な感情を抱く相手であるのに。
止められない衝動に自分で自分の抑えが利かないのだ。
その間にどんどん股間ははちきれんばかりに硬く膨れ上がり、普段から気崩して身に着けていた制服の黒いズボン、そのベルトにガチャガチャと早急に手をかけて大人顔負けの大きさのそれを取り出す。
息を荒げながら上掛けをはぎとりつつ、少年の引き締まった腹にそれを押し当てた。
先をぐりぐりと刺激し、腰を使いながら、頭のどこかではとんでもないことをしでかしているとわかっている自分がいる。しかし千切れそうに痛く張り詰めたこれを放たねばとりあえずまともな思考を取り戻すことなどとてもできそうになかった。
自分がアルファなのかもしれぬということは犬歯や少しずつ大きくなってきた根本の瘤で分かっていたが、アダンにとってそんなことはどうでもいいことだった。アルファであろうがなかろうが自分が恵まれた体格をした若い男であることには変わらないし、人が自分を見る目など変わることはない。来年のバース検査に対して大きな期待も寄せていない。
しかし今自分自身のこの頭を狂わされたような動きを感じるにつけ、まざまざと恐怖感すら浮かんできた。
(やばい、このままこいつを犯して噛みついたら、俺、番になっちまうのか? でも、ああ……)
たとえ頭を殴られても刺されてもやめられそうにない快楽に引きずられて衝動が抑えられない。思わず掠れた声で少年の耳元に囁いてしまう。
「きもちい、も、でそうだ」
喘ぎながら大きく逸物を扱き、獣のように牙を剥いて少年の首の根元、鎖骨に近い部分に大きく嚙みついた。瞬間その衝撃で、ぱたぱたっと少年の腹の上に精子が放たれる。
「痛い! うわあ!」
頭の上で悲鳴が上がって、瞬間アダンは我に返り身を起こした。
「お、お前……!」
絶句した相手と目があい、アダンは再び自分がしでかしたことに頭を抱えながら、放ったもので汚れた手を上掛けでひと拭きし、さらに証拠隠滅とばかりに少年の腹の上にそれをかけて隠した。
とはいえ誤魔化されるはずもなく、どんな罵倒が飛んでくるかと身構えていたら、少年はまたくてんっと枕に顔をうずめてぽろぽろと涙を零していた。
「あ……頭痛い」
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