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溺愛編
喧嘩2
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「君、年いくつ?」
「……14」
「僕は18だ。成人してる。オメガのフェロモンでああなるのは不可抗力だ。だから、さっきのことは水に流す」
そういって雄々しいほど美しい仕草で髪を後ろにかきあげ、アダンに噛みつき血が滲む痕を見せつけた。
(やっぱりばれてた……)
流石に下半身丸出しの若い男にのしかかられていたら分からないはずはないだろうが、ぼんやりしていたのでばれていないかと思っていた。むうっと綺麗な顔で睨みつけられる。
「すみませんでした」
少年の圧倒的な潔さと圧にやられて、最近では親にすら朝から挨拶もしないで家をでるアダンですら素直に詫びた。すると少年はにこりともせずに片手を外して差し出してきた。
「早く返して。あれは大切なものなんだ」
足元に転がっていた鞄の方へちらっと目を走らせると、アダンの頬から暖かなもう一方の手もどかして彼を離してやった。
アダンはしぶしぶ跪くとリュックの肩紐を手繰り寄せてポケットに手を突っ込む。底の方にあった固く冷たいもの指先に触れた。
(あった。落としてなかった)
「んーっ」
振り返ると少年が手のひらを「ほらよこして」というように長い腕を伸ばし掌を差し出してきた。当たり前だとは言えたが、目はまだ怒っているままで、あの男に向けていたような朗らかな笑顔はなりを潜めていた。それがなにか寂しくて……。
そして先ほどより血の気が頬に戻った少年が思いがけず元気そうに見えて、またむくむくと腹の底から面白くない気持ちが湧き上がってきた。
差し伸ばされた手をぎゅっとブレスレットを持っていない方の手で握ると、少年は少し焦り睫毛を反り返らせて目を見開いた。僅かに引こうとした腕を逆に引いて今度はこちらから視線を挑発的に合わせてやる。思いのほか細い手首にずくっと欲を刺激された。
(俺を、怖がらせたい。俺を……刻みつけたい)
そんな衝動、今まで好きな子にすら感じた事はなかった。乱暴で支配的な欲求がまた熱く燃え上がりそうになる。
「ブレスレット、返さないって言ったら?」
「やるの? 僕、お前には負けないと思うよ?」
先ほどされたことを忘れてはいないだろうに、そんな挑発にもあえてのってくる彼の瞳は、紫色の中に金色の環がゆっくりと広がってきて、ゾクゾクするほど妖しい光を放ってアダンを魅了する。このままブレスレットを素直に返して彼が去るのがどうにも惜しくて、挑発を繰り返してしまうのを自分で止められないのだ。
「お兄さん、俺にさっきみたいに無理やり抱かれたいの? 今度は項に噛みついてやろうか?」
「ほざくな。床と仲良くさせてあげるよ」
オメガというのを忘れる程、色気ある男っぽい表情でにやりと笑う少年に、アダンはその貌に惹きつけられたまま、腕輪をわざと寝台の上に放り投げた。
「……14」
「僕は18だ。成人してる。オメガのフェロモンでああなるのは不可抗力だ。だから、さっきのことは水に流す」
そういって雄々しいほど美しい仕草で髪を後ろにかきあげ、アダンに噛みつき血が滲む痕を見せつけた。
(やっぱりばれてた……)
流石に下半身丸出しの若い男にのしかかられていたら分からないはずはないだろうが、ぼんやりしていたのでばれていないかと思っていた。むうっと綺麗な顔で睨みつけられる。
「すみませんでした」
少年の圧倒的な潔さと圧にやられて、最近では親にすら朝から挨拶もしないで家をでるアダンですら素直に詫びた。すると少年はにこりともせずに片手を外して差し出してきた。
「早く返して。あれは大切なものなんだ」
足元に転がっていた鞄の方へちらっと目を走らせると、アダンの頬から暖かなもう一方の手もどかして彼を離してやった。
アダンはしぶしぶ跪くとリュックの肩紐を手繰り寄せてポケットに手を突っ込む。底の方にあった固く冷たいもの指先に触れた。
(あった。落としてなかった)
「んーっ」
振り返ると少年が手のひらを「ほらよこして」というように長い腕を伸ばし掌を差し出してきた。当たり前だとは言えたが、目はまだ怒っているままで、あの男に向けていたような朗らかな笑顔はなりを潜めていた。それがなにか寂しくて……。
そして先ほどより血の気が頬に戻った少年が思いがけず元気そうに見えて、またむくむくと腹の底から面白くない気持ちが湧き上がってきた。
差し伸ばされた手をぎゅっとブレスレットを持っていない方の手で握ると、少年は少し焦り睫毛を反り返らせて目を見開いた。僅かに引こうとした腕を逆に引いて今度はこちらから視線を挑発的に合わせてやる。思いのほか細い手首にずくっと欲を刺激された。
(俺を、怖がらせたい。俺を……刻みつけたい)
そんな衝動、今まで好きな子にすら感じた事はなかった。乱暴で支配的な欲求がまた熱く燃え上がりそうになる。
「ブレスレット、返さないって言ったら?」
「やるの? 僕、お前には負けないと思うよ?」
先ほどされたことを忘れてはいないだろうに、そんな挑発にもあえてのってくる彼の瞳は、紫色の中に金色の環がゆっくりと広がってきて、ゾクゾクするほど妖しい光を放ってアダンを魅了する。このままブレスレットを素直に返して彼が去るのがどうにも惜しくて、挑発を繰り返してしまうのを自分で止められないのだ。
「お兄さん、俺にさっきみたいに無理やり抱かれたいの? 今度は項に噛みついてやろうか?」
「ほざくな。床と仲良くさせてあげるよ」
オメガというのを忘れる程、色気ある男っぽい表情でにやりと笑う少年に、アダンはその貌に惹きつけられたまま、腕輪をわざと寝台の上に放り投げた。
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