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第一章 くんか、くんか SWEET

31 ずっと好きだった

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 コットンキャンディーなんて生易しいものではない、豊潤で濃密な甘さの中に小野寺の欲を煽る堪らない媚薬がでいるような香り。
 コップが手から滑り落ち足元で水をまき散らし、薬が密やかな音を立てて床に散らばっていく。 
 青葉はあまりにも妖艶な表情を浮かべて、ゆるゆると体勢を変え横たわっていた身体から気だるげに片腕を小野寺に向かって伸ばしつつ、小野寺と目が合えば嬉しそうにコケティッシュな表情で囁いてきた。

「みこと、きて」
「駄目だ……」

 言葉とは裏腹に足は一歩一歩と、青葉に引き寄せられていく。数歩歩けばもう、寝台にたどり着いてしまう。
 小野寺はベッドの横に跪く。
 雨の打ち付ける窓を背に、街灯の明かりに僅かに照らされた青葉の白い貌を見つめると、その腕にゆっくりと愛を乞うように口づけた。

「俺は、本当に君のことが、ずっと前からすごく、すごく好きなんだ。だからこんな風に……」

 長く吸い込んだらもう、このフェロモンの魔力に飲み込まれてしまいそうだ。だが小野寺は青葉の為にすぐにその場を立ち去れない弱い自分を恥じて顔を自分の袖に埋め、項垂れる。

「みこと、おれのことすき?」

 だぼついたパーカーの袖からほっそりと長く綺麗な指先が伸び、小野寺の顔を覆う腕をゆっくりと取り払っていく。熱に浮かされた口調とは裏腹に、青葉の瞳は澄んで真っすぐに苦し気な小野寺を見つめてきた。
 そして懸命に寝台から首を伸ばし、キスを強請るように唇を突き出してくる。

「好きだ。ずっと、好きだった」

 そう再び告白して、耐えきれず青葉の頭を愛し気に引き寄せたら、唇が重なる瞬間に青葉が「おれもすき」と囁いた。それでもう小野寺の遠慮も何も頭から吹き飛んでしまった。
 緩んだ唇から歯列を割り、一気に侵入した青葉の口内は熱く甘い。舌を擦り合わせ、青葉からも積極的に求められる。

「んっ……ふう」
「青葉、あおば……。可愛い……」

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