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第二章 HOW To ヒート!
10 口づけの痕
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青葉はベッドの上、再び寝返りを打つ。尊が出て行った扉を親の仇のように恨みがましく見つめた。
(尊、行っちゃった……)
初めて彼を受け入れた身体は気だるく、そこここにちりちりとした痛みを感じる。ふと腕を上げてみると、手首に赤い口づけの痕がついていた。
「これ……」
昨晩の狂おしい記憶が蘇る。
背後から抱き込まれて身動きが取れないまま、気づかわし気にねっとりと緩慢に腰を動かされた。それがむしろ、狂おしい。本人は無意識かもしれないが、強い力で押さえつけられ、ひたすら後ろから与えられる快感に息も絶え絶えに喘ぎ身もだえした。
『奥、ふかいっ……、ああっ、ううっ』
『ゆっくり動くから。心配しないで。ただ俺の事、感じて』
『もっ。おかしくなちゃう……』
串刺しにされたまま髪を振り乱し泣きぬれる青葉の頬に、尊は口づけて励ましつづけた。そして腰をずりっと背後から持ち上げられると、大きな掌で前の熱を何度も何度も摺り上げ散らしてくれた。その間も中挿は止まらない。ゆっくりだが長大なものが何度も中をこすり上げ、悲鳴を上げかけた唇は慰めるように優しく唇で塞がれる。
『……番にして、今すぐ噛んでっ』
それは散々嬲られた獲物が、楽にして欲しいと捕食者に願うようなものだったのかもしれない。ヒート中の強いフェロモンをまき散らし、オメガの自分がめちゃくちゃに泣きわめいても、尊はひたすらに冷静だった。憎らしい程に。
『青葉の全部、俺のものにしたい。でもまだ傷つけたくないんだ』
その優しさが意地悪く感じるなんて、思いもよらなかった。
『青葉……。俺のものになってくれる?』
尊の腰に足を回して引き寄せるなんて大胆な行為に及びながら、青葉は駄々っ子みたいに涙交じりに訴えた。
『なりたい、尊のにして! もっと奥まで来て、早く噛んで! 噛みついて!』
『……っ! たまらないな。でも、ダメだよ』
熱を帯びた狂おしい目つきをしているくせに、平静を装う尊が憎たらしくて、愛おしくて、ぞくっとするほど色っぽい。
『青葉は快楽に弱い質なんだね? 心も体も、素直で可愛い』
からかわれて泣きそうになったけれど、なおも「噛んで、噛んで」といやいやして涙をこぼしたら、尊は少しだけ切なげに微笑んだ。
『青葉、正気の時もそんな風にいえる?』
(尊、いじわるだ)
そんなこと正気の時に言えるはずもない。恥ずかしくて、はしたなくて、ヒートのせいにして大胆に自分を開放するしか彼を誘惑する手立てがない。
『みことぉっ、うなじ、かんでっ』
万感の思いだけを載せて名前を呼べば、大きく黒目勝ちの綺麗な尊の瞳が熱く欲を帯び、ふと目をそらして青葉の手首に口づけを落としてきた。
唇が離れた後に散った赤い花のような噛み痕がついた。
『噛みたい、噛みたいよ。でも我慢する。青葉を大切にしたい』
(尊、行っちゃった……)
初めて彼を受け入れた身体は気だるく、そこここにちりちりとした痛みを感じる。ふと腕を上げてみると、手首に赤い口づけの痕がついていた。
「これ……」
昨晩の狂おしい記憶が蘇る。
背後から抱き込まれて身動きが取れないまま、気づかわし気にねっとりと緩慢に腰を動かされた。それがむしろ、狂おしい。本人は無意識かもしれないが、強い力で押さえつけられ、ひたすら後ろから与えられる快感に息も絶え絶えに喘ぎ身もだえした。
『奥、ふかいっ……、ああっ、ううっ』
『ゆっくり動くから。心配しないで。ただ俺の事、感じて』
『もっ。おかしくなちゃう……』
串刺しにされたまま髪を振り乱し泣きぬれる青葉の頬に、尊は口づけて励ましつづけた。そして腰をずりっと背後から持ち上げられると、大きな掌で前の熱を何度も何度も摺り上げ散らしてくれた。その間も中挿は止まらない。ゆっくりだが長大なものが何度も中をこすり上げ、悲鳴を上げかけた唇は慰めるように優しく唇で塞がれる。
『……番にして、今すぐ噛んでっ』
それは散々嬲られた獲物が、楽にして欲しいと捕食者に願うようなものだったのかもしれない。ヒート中の強いフェロモンをまき散らし、オメガの自分がめちゃくちゃに泣きわめいても、尊はひたすらに冷静だった。憎らしい程に。
『青葉の全部、俺のものにしたい。でもまだ傷つけたくないんだ』
その優しさが意地悪く感じるなんて、思いもよらなかった。
『青葉……。俺のものになってくれる?』
尊の腰に足を回して引き寄せるなんて大胆な行為に及びながら、青葉は駄々っ子みたいに涙交じりに訴えた。
『なりたい、尊のにして! もっと奥まで来て、早く噛んで! 噛みついて!』
『……っ! たまらないな。でも、ダメだよ』
熱を帯びた狂おしい目つきをしているくせに、平静を装う尊が憎たらしくて、愛おしくて、ぞくっとするほど色っぽい。
『青葉は快楽に弱い質なんだね? 心も体も、素直で可愛い』
からかわれて泣きそうになったけれど、なおも「噛んで、噛んで」といやいやして涙をこぼしたら、尊は少しだけ切なげに微笑んだ。
『青葉、正気の時もそんな風にいえる?』
(尊、いじわるだ)
そんなこと正気の時に言えるはずもない。恥ずかしくて、はしたなくて、ヒートのせいにして大胆に自分を開放するしか彼を誘惑する手立てがない。
『みことぉっ、うなじ、かんでっ』
万感の思いだけを載せて名前を呼べば、大きく黒目勝ちの綺麗な尊の瞳が熱く欲を帯び、ふと目をそらして青葉の手首に口づけを落としてきた。
唇が離れた後に散った赤い花のような噛み痕がついた。
『噛みたい、噛みたいよ。でも我慢する。青葉を大切にしたい』
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