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第二章 HOW To ヒート!
19 連れ戻す
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「まぶし……」
雨上がりのしっとりとした空気が火照った頬にひんやりとする。ぷるっと身体が震えた。きらきらと眩いベランダには観葉植物や花やハーブと思わしく植物も植えられている。緑が柔らかく生き生きとしていた。それらに住民のまめで世話好きな性格を透かし見て青葉は微笑んだ。
大きなサンダルを借りてベランダに降りると、線路は建物に阻まれているのかここから見えぬが、電車の走行音が聞こえた。
尊の大学やバイト先のショップモールのある地域に面した窓のようだ。周囲の様子からここが建物の三階か四階かその程度と分かる。
「げっ……」
眼下を見下ろしたらぴかぴかと黒光りする車高の高いタクシーが目に入る。それは医療用の運転席と乗車席が完全に遮断されているタイプの車だった。ヒート中のオメガや感染症にかかった患者専用で、補助金を後から申請すれば幾ばくか帰ってくるが、運賃はバカ高いのだ。
車の前にいた仁王立ちになった黒髪長身の少年とかなり遠めだというのに確実に目があったと思った。きっとお互いの視力の良さと、長い付き合いだからだろう。
(やばい、こうくん学校早退したのかな? 本気で俺を連れ戻しに来てる)
たらっといやな汗が背中を伝う。冷や汗なのかヒートの名残なのかよくわからないがぞくぞくっと体温が上がる感じがした。
「おーれーは、大丈夫だから! かえんない!」
そう唇でぱくぱくと呟いて手を力なく振ってみたが、彼はこちらを見上げるとものすごい勢いでマンションのエントランスと思わしき場所に向かって走ってきた。
それなりに広い間取りといい、周囲の様子といい、オートロックのマンションだとわかっていたので中までは一気に入っては来られないと思った。そのうち玄関先で尊と鉢合わせになるかもしれないが、その時は一緒にこうくんを説得してもらおうと思った。
しかし彼の要領の良さを甘く見ていたようだ。
ものの五分もたたぬうちに彼はマンション内に侵入し、部屋の扉横のインターフォンを鳴らしまくる攻撃に打って出てきた。
インターフォンがけたたましく鳴らされ、青葉はぼんやりとした頭で腰かけていたベッドの上からのろのろと足を床につける。
雨上がりのしっとりとした空気が火照った頬にひんやりとする。ぷるっと身体が震えた。きらきらと眩いベランダには観葉植物や花やハーブと思わしく植物も植えられている。緑が柔らかく生き生きとしていた。それらに住民のまめで世話好きな性格を透かし見て青葉は微笑んだ。
大きなサンダルを借りてベランダに降りると、線路は建物に阻まれているのかここから見えぬが、電車の走行音が聞こえた。
尊の大学やバイト先のショップモールのある地域に面した窓のようだ。周囲の様子からここが建物の三階か四階かその程度と分かる。
「げっ……」
眼下を見下ろしたらぴかぴかと黒光りする車高の高いタクシーが目に入る。それは医療用の運転席と乗車席が完全に遮断されているタイプの車だった。ヒート中のオメガや感染症にかかった患者専用で、補助金を後から申請すれば幾ばくか帰ってくるが、運賃はバカ高いのだ。
車の前にいた仁王立ちになった黒髪長身の少年とかなり遠めだというのに確実に目があったと思った。きっとお互いの視力の良さと、長い付き合いだからだろう。
(やばい、こうくん学校早退したのかな? 本気で俺を連れ戻しに来てる)
たらっといやな汗が背中を伝う。冷や汗なのかヒートの名残なのかよくわからないがぞくぞくっと体温が上がる感じがした。
「おーれーは、大丈夫だから! かえんない!」
そう唇でぱくぱくと呟いて手を力なく振ってみたが、彼はこちらを見上げるとものすごい勢いでマンションのエントランスと思わしき場所に向かって走ってきた。
それなりに広い間取りといい、周囲の様子といい、オートロックのマンションだとわかっていたので中までは一気に入っては来られないと思った。そのうち玄関先で尊と鉢合わせになるかもしれないが、その時は一緒にこうくんを説得してもらおうと思った。
しかし彼の要領の良さを甘く見ていたようだ。
ものの五分もたたぬうちに彼はマンション内に侵入し、部屋の扉横のインターフォンを鳴らしまくる攻撃に打って出てきた。
インターフォンがけたたましく鳴らされ、青葉はぼんやりとした頭で腰かけていたベッドの上からのろのろと足を床につける。
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