香りの鳥籠 Ωの香水

ぼく病気になっちゃった2-2

　確かにランは最近ぐいぐい身長が伸びてきた。長身のメテオからしたらもちろん今でも華奢で小さいが、両ほっぺぷっくぷくの、子ども子どもしていた時期より背が伸びたせいか顔立ちもほっそりしてきた。
　 愛らしさと儚さが同居したような清純な美しさを放つときもある。そんな時はランはオメガなのではと一種期待を込めて思ってしまうのは、昔から変わらぬメテオの悪い癖だ。ありのままの彼の全てを愛しているが、この気持ちはアルファとしての自分の本能のようなものだろう。

　ようやく蕾がつきたての小さな花のような、愛らしいラン。
　ふっくらした頬、膝小僧まで真っ白で柔らかな脚、輝く朝日のような瞳など、果実のように味わってみたくなる美しさだ。華奢だが瑞々しいその姿は本当に可愛らしくて人目を惹く。

　その証拠にやたらと商店街の悪ガキたちがランを遊びに誘いに来ている。小さい頃はもちろんこの街の子どもたちとは毛色の違うランが物珍しくて遊びに誘いに来ていたようだが、最近では店にいる顔をちらっと覗きに来たりする。

　勉強だ、家の手伝いだと追いかえしてもいるが、パン屋の裏でたまに年下の女の子たちとも遊んでいたりしているのも知っている。ランは明るく懐っこく誰にでも優しいので老若男女ともに好かれるのだ。

　自分の世界がラン中心なように、ランの全てがメテオ中心でなくなる日が来る。メテオはそれを内心歓迎していない。だがいい大人がいちいち嫉妬しているなど知られたら、ランはいつか息苦しくなりこの街から逃げ出してしまうかもしれない。
　いつでも優しく理解のある、努めて出来のいい兄を演じてきているメテオの、涙ぐましい努力は続いている。