令和に活きる就活終活のヒント

令和宗活(のりかつのりかつ)

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《9》デモンストレーション

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「じゃーあ。アンキーが。この玩具の遊び方を。皆に教えちゃうぞ! OK?」と満面精一杯の笑顔で俺が言うと、
「オー、ケー」と周りを取り囲んだ未就学児達とそのママ達、パパ達も大きな声で答えた。
 来週の火曜日、文化の日まで4日間開催するイベントの初日、俺は、いつもの金髪にピンクのキャップを被って、濃い頬紅を塗って、ダブダブのオーバーオールを着て、棒付きの大きな飴を持っている。この格好で日本玩具グループの新商品の実演をして、会場内と6階の玩具売場で販売してるその商品を買ってもらうんだ。このキャラの名前は「ファンキー」にしたんだけど、子供達が発音できなかったから、「アンキー」に改名した。
 この仕事の為に、俺はスーパーエージェンシー株式会社第35営業局第3営業部専属の契約社員として雇われた。スーパーエージェンシーが日本玩具ホールディングスから1年契約で受注したんだけど、前任者が諸事情で続けられなくなったらしくて、ずっと失業中だった俺が、スーパーエージェンシーのホームページから「イベントプロデューサー(管理・運営責任者)急募 全国出張あり」に応募したんだ。勿論、アンキーだけやってるわけじゃなくて、施工会社、音響なんかの機材の会社、人材派遣会社、それから印刷会社のコントロールも、俺がやってる。
 例外的に3社競合のコンペにさせられたのが、今日のこのイベントだったんだけど。「文化の日らしい要素も巧みに織り込んだイベントの御提案をお願いしたい」なんて、宣伝部から言われちゃってさ。で、企画書が進まなくて、赴任早々、牟礼歌音部長を会社に泊まらせちゃうことになっちゃったんだよね。結局、俺も面倒臭くなっちゃって、企画書の全ページの下端、フッターに、薄い薄いピンクの小さな文字で「兎1匹ねらい撃ち」って入れてもらったわけ。結果、それで済んでくれた。
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