感謝の気持ちをいつかまた

おむらいす

文字の大きさ
8 / 8

8

しおりを挟む
『牧岡杏奈さんへ。短い間でしたが、積極的に話しかけてくれてありがとう。文学を語り合える人は少ないので、とても嬉しかったです。その感性、これからも大事に育てていって下さい。願わくば、あなたの人生のハイライトに僕の残像をいつまでも...』

私は静かな教室の中で一人、頬に大粒の雨を降らせた。

「何で気づかなかったんだろう。半年も持っていたのに」

綺麗な文字で書かれたその字を滲ませぬよう、私は服の袖で涙を拭った。

「何でこんな最後のページに。このメッセージが届くかどうかもわからないのに」

涙を拭ったはずが、再びぽつりと涙を流した。

もう会えないのに。

時計の針が音を鳴らしながら私は一人ぼっちの部屋の中で瞳を揺らした。

会いたい。

たとえ叶わぬ願いだと思っていても、やはりあの声を、あの笑顔を忘れることはできない。

私はあることを調べた。死者に再び会える方法を。

それは、夢で見ること。見たい人の写真を枕の下に置いたり、など。そんなことで会えるはずないなんてわかっているけど会いたいと強く願ってしまった。

私は潤んだ視界を必死に凝らしながら携帯で調べた。

早速今日の夜。ではなく今すぐ私は調べた事全て試してみることにした。

なぜなら、浅い眠りを維持することが必要らしく、学校の机で寝たら浅い眠りにつく事が可能だと思ったからだった。

誰かが教室に入ってこないよう、鍵を閉めた。そして、私はすぐに眠りについた。

霧の中でうっすらとした人影を見つけた。私は勝手な感で、それを大城先生だと思った。いつ夢から覚めてしまうか分からないから、すぐに本題に入った。

「幸せの意味、分かりました」

だんだんと霧が晴れ、先生が現れた。先生は期待に満ちた目で私を見つめていた。

「最初、私なくならないと分からないものって聞いて分からなかったんです。その理由が、自分が全て持っていたからなのかなって思ったんです」

先生は、まっすぐに私の目を見ながら優しく頷いた。

「先生と毎日話せる日々とても楽しかったんです。でもそれが幸せって気づいたのは先生がいなくなったからだったんです。先生がいなくなったことで、『あぁ。幸せってこういうことなのかな』と思いました」

先生は少しの間私の目を見つめたあと、ふっと笑った。

「自分で言うのもあれだけど、いいと思う。告白みたいだね」

先生はからかいながら笑った。
私は顔を真っ赤にして目を逸らした。

「好きでした。国語の時間ずっと楽しみにしてました。まだかな、早く来ないかな。なんてずっと考えてましたし、先生がいた間ずっと楽しかったです。ちゃんとお別れしたかったんです。あんな別れ方しないでくださいよ。半年の間でしたが、ありがとうございました。これからも大好きです。さようなら」

やはり先生は笑いながら、でも真剣にこう答えた。

「そんなことを言いに来たのか。ありがとう。僕もそう言いたかった。杏奈さんの気持ちには応えられないが、その気持ちは受け取っておく。さようなら、今までありがとう。元気でな」

私はもう一つの質問の答えを先生に聞いてみた。

「死ぬ瞬間何を考えましたか?」

先生はニコニコの笑顔で笑った。

「君と一緒にいる未来。」

先生が最後まで言った瞬間、霧が急に現れて、先生を連れ去った。

目覚めた時、私の視界は再び潤んでいて黒板を見てみると、卒業おめでとう、大城。と書かれていた。

私は、あのメッセージが書かれた小説を大事に両手で持ちながら言った。

「今までありがとうございました。また会いたいです。」

そう言って、小説を段ボールの奥底にしまって私は光先生に別れを告げた。その時、風でカーテンがふわりと揺れそこに光先生が立っているかのように見えた。

私は光先生に、ふわりと笑いかけてまた会いたい。なんてことを考えていた。先生の言葉で心に余裕ができた。先生がいてくれたおかげで幸せがわかった。

桜舞う季節。
私は新たな一歩を踏み出す。

大城光先生。

また会いに来てください。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...