竜神様の御気に入り

霞花怜

文字の大きさ
7 / 33

第7話 五色の竜の導仙

しおりを挟む
五色ごしきの竜は導仙どうせんを得ると、それぞれに神獣に進化する。俺は黄竜おうりゅうだから、進化したら麒麟きりんになる」
「秘果さんも、竜、なんだ」

 この流れだと、それほど意外でもない。
 この美しくて優しい人が竜神様だと言われたら、そうなんだろうと思えた。

「蜜梨ちゃんはね、導仙の中でも更に特別な存在なんだ。それについては、また今度、話そうか。一気に色々聞いても、覚えきれない、というか受け止めきれないよね」

 秘果が話しながらずっと蜜梨の頬を撫でてくれる。
 それがやけに安心できた。

「全然、わかんないし、実感、ないけど。秘果さんが竜なのは、納得かも。さっきも強かったし、綺麗だから」

 秘果の柔らかな髪が月明かりに照らされて銀色に靡く。
 その顔は今まで見てきた秘果なのに、まるで別人のように美しい。

(イケメンだとは思ってたけど、今日は何時もより神々しくて、綺麗だ)

 うっかり見惚れて、見入った。
 秘果が撫でていた手を止めた。

「そんな顔で、そういうこと言われたら、キスしたくなる。いいの?」

 冗談めいた言葉に、ドキリとする。

「え? でも、秘果さんが黄竜ってことは、導仙ていうのがいるんだよね? 浮気にならないの?」

 導仙は番と話していた。つまりは夫婦になる相手なんだろう。
 秘果がぱちくり、と瞬きした。

「俺の導仙候補は、蜜梨ちゃんだよ」
「え? え? だって俺、男だよ? 伴侶になるなら、女の人じゃないと、無理だよね?」

 秘果がまた、ぱちぱちと瞬きした。

「そっか、ごめん。言い忘れていたけど、桃源には雄しか存在しないんだ」
「え⁉ 繁殖できんの?」

 蜜梨の問いに、秘果がクスリと笑んだ。

「桃源の神獣は、一般的な生物のように牝牡の交尾で生まれる生殖体系とは違うんだ。むしろ、雄と雌の交尾で生まれると普通の獣になっちゃうから、桃源に雌は立ち入り禁止なんだよ」

 蜜梨は、あんぐりと口を開いた。

「何ともBL仕様だね」
「和風ファンタジーBLが好きな蜜梨ちゃん好みの世界観でしょ。ちなみに、雌だけの神獣の国もちゃんとあるんだよ。そっちは源郷げんとうと呼ばれるんだ」

 秘果が楽しそうに笑った。

「創作なら、好きだけどさ。そっか、秘果さんて、リアルBLの世界の神獣だから、BL抵抗なかったんだね」

 巷で腐男子仲間を見付けるのは難しい。
 というか、その中で神獣を引き当てた自分も大概だと思うが。

「現世風にいうなら、俺は腐男子でゲイかな。蜜梨ちゃんがBL好きなのも、桃源の半神族としての本能かなって思うよ。だからSNSでも、BLとゲイ方面で探してた」

 秘果が愛おしそうに蜜梨の頬を撫でた。

「ん? もしかして秘果さんは、俺を探してた、の?」

 これまでの会話の流れだと意外でもないが。
 今更ながら、ビックリした。

「ずっと探してた。蜜梨ちゃんが凶の悪手で桃源から現世に堕とされてから、ずっと」

 秘果の手が蜜梨の両頬を包み込んだ。

「やっと見つけた。現世で姿を見付けた時から、この腕に抱きたかった。俺の導仙は、蜜梨ちゃんだけだよ」

 性急な唇が重なる。
 舌が割り込んで口内を犯して絡まる。

「ん……、ふ……、ぁ……」

 熱くて甘くて、胸が締まって溶けそうだった。

「ぁ……、ごめん。まだ蜜梨ちゃんは何も思い出してないのに。キスは、早かったね」

 秘果が慌てて蜜梨から離れた。
 熱が離れてしまうのが切なくて、蜜梨は秘果の手を握った。

「俺、まだ、色々よくわからないけど、秘果さんのキスは、嫌じゃない、から……」

 今のキスは、気持ち良かったし、ときめいた。

(今まで恋愛的な目で秘果さんを見たコト、なかったけど。今日の秘果さんは、いつもより色っぽくて、ドキドキする)

 蜜梨を見詰める目にすら艶が浮いて、目を合わせるだけで、心臓がうるさい。

「秘果さん、か」

 秘果が、ぽつりと零した。

「え? ダメ? 呼び方、変えた方がいい? てか、これって本名?」
「本名だよ。前の蜜梨ちゃんはね、俺を秘果って呼んでたんだ」

 秘果が蜜梨の額にキスをした。

「ゆっくりでいいから、自分の気持ち、思い出して。もう一度、俺を好きになって、蜜梨ちゃん」
 
 額を合わせた秘果の懇願の声に、蜜梨の胸が切なく締まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【第二章開始】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する

とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。 「隣国以外でお願いします!」 死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。 彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。 いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。 転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。 小説家になろう様にも掲載しております。  ※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

異世界転移をした俺は文通相手の家にお世話になることになりました

陽花紫
BL
異世界転移をしたハルトには、週に一度の楽しみがあった。 それは、文通であった。ハルトの身を受け入れてくれた老人ハンスが、文字の練習のためにと勧めたのだ。 文通相手は、年上のセラ。 手紙の上では”ハル”と名乗り、多くのやりとりを重ねていた。 ある日、ハンスが亡くなってしまう。見知らぬ世界で一人となったハルトの唯一の心の支えは、セラだけであった。 シリアスほのぼの、最終的にはハッピーエンドになる予定です。 ハルトとセラ、視点が交互に変わって話が進んでいきます。 小説家になろうにも掲載中です。

美貌の貧乏男爵、犬扱いしていた隣国の王子に求婚される

muku
BL
父亡き後、若くして男爵となったノエルは領地経営に失敗し、多額の借金を抱えて途方に暮れていた。そこへやって来たのは十年前に「野良犬」として保護していた少年レオで、彼の成長を喜ぶノエルだったが、実はその正体が大国の王子であったと知って驚愕する。 復讐に来たのだと怯えて逃げ出すノエルだったが、レオことレオフェリス王子はノエルに結婚してほしいと頼み始める。 男爵邸に滞在すると言い出す王子は「自分はあなたの犬だ」と主張し、ノエルは混乱するしかない。見通しの立たない返済計画、積極的な犬王子、友人からのありえない提案と、悩みは尽きない美貌の男爵。 借金完済までの道のりは遠い。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。 ✻✻✻ 2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

処理中です...