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第Ⅰ章 ゲーム本編①
58.箱を開けたら神様出てきた
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寮の自室で、ノエルはベッドに倒れ込んでいた。
(なんか色々疲れたなぁ。まだまだ、問題は山済みだけど)
急展開で色々ありすぎて疲れた。異世界というのは、そういうものなんだろうか。
(ゲームも小説も漫画も、面白いから作品になる。面白さには事件が要るし、展開が早くないと読者が飽きるもんなぁ)
日本でぬくぬくと何気ない日常を過ごしている人間が、突然、こんな魔法バトル世界に放り込まれても、対応できるわけがない。
(本当に、よく頑張ったよ、私。とりあえずこれで前半戦は、クリアだ)
気になる課題はあるものの、大きな山は越えたと思う。
マリアだけがまだ目覚めない現状も、レイリー後継者育成も、この後のイベントで解決できるはずだ。
(そのあたりの目処は立ってる。残る問題は、アレだ)
机の上に目が向いた。
本棚の隙間から見つけた箱が、置いたままになっている。
「何回か頑張ったけど、開かないんだよね。なんかもう、開けなくてもいいかな」
呟きながら触れると、ピカッと光った。
大変、既視感のある反応だ。
「……開けろってことか。鍵がまだ、見付かっていないんだよなぁ」
箱を持ち挙げて振ってみたり、耳を押し当てて中を音を聞いてみたりしてみる。
何も反応がない。
「やっぱり、いいや。必要なら、そのうち開くだろ」
箱を放り投げようとした途端、ノエルの胸がぼんやりと赤く光った。
光の筋が伸び、鍵穴に吸い込まれる。
(ええええ、ナニコレ、どういう……)
自分の胸を改めて確認する。
赤く光っているあたりにあるのは多分、魔石だ。
(魔力の核は心臓に近いって話だし、きっと魔石が光っているんだ)
恐る恐る、赤い光に触れる。光が凝集して、鍵の形になった。
カラン、と音を立てて机の上に転がった。
「こんなに簡単に見つかるんなら、もっと早く欲しかったよ……」
独り言ちながら、鍵を差し込む。
がちゃり、と大袈裟な音がして、蓋が開いた。
「やっと開けたねぇ。全然、鍵見付けないんだもん。仕方ないから、こっちから渡しにいったよね~」
箱の中から、見覚えのある小さい爺さんが飛び出した
思わず小さい爺さんを握り潰した。
「痛い、痛いってば。神様なんだから崇め敬えって言ったでしょ。久しぶりの再会をもっと喜んでくれる? こっちに顕現するのも体力使うんだからさぁ」
小さい爺さんがノエルの指をパンパンとタップする。
「今更、何の御用でしょうか? こっちは訳も分からんまま放置されて、危うく死にかけたんですが」
「折角、用意した転生特典を開けないから、開けるように伝えに来たんだよ。でも、上手くやってたみたいだねぇ。安心したよ」
ノエルの指に肘をついて小首を傾げる。
無駄に可愛い仕草に、またイラっとする。
「転生特典て、この箱が?」
「そうだよ。事情を知らない君に事情を伝えるためのアイテム」
「私の転生特典は、属性とか魔法がすぐ使えるとか、そういうんじゃなくて?」
神様が、はて? と言わんばかりに眉を下げた。
「今の神にそんな力ないよ~。失敗続きで神力減退しまくってるからさぁ。だから君には是非とも功績を挙げて、結果を残してもらいたいわけ!」
両の拳を握って腕をぶんぶん振る爺さんを、ぽいと投げ捨てる。
「神様が他力本願て、どういうことですか。ていうか、じゃぁ、私の今の状態って、どういうことなんですか?」
全属性適応者であることも、魔法がすぐに使えることも、中和術が覚えられたことも、転生特典じゃなければ説明が付かない。
「そんなの、偶然と君の努力の結果でしょ? 頑張ってたもんねぇ、偉い偉い」
小さな手に頭を撫でられた。
「偶然? だと? 努力の結果? 努力なんて必ず実るものじゃないだろ」
よく知っている。自信作だと思って書き上げた原稿が丸ごと没るのなんか、日常茶飯事だ。何百時間と費やした時間が無駄になるなんて、普通の話だ。
「君さぁ、本当に自己評価低いねぇ。自分が作った世界なんだし、すぐに魔法が使えても不思議じゃないよ? すごく努力してたのも、神は知ってるよ」
小さい爺さんが良い顔で微笑む。
「君が能力高いから、ここに送り込んだわけだから。イレギュラー転生だけど、適応できるだろうなぁって」
「イレギュラー転生?」
突然飛び出した言葉が気になった。
「そそ。最初に自分で言ってたヤツ。本当ならゼロ歳からの転生スタートなのに、途中で魂入れ替わってるでしょ? 普通はやらないよ、そんな転生。時間軸も他とズレているから仕方なくってさぁ」
「時間軸?」
聞けば聞くほど、わからなくなる。
「この世界は、今ちょっと崩れがちだから、通常の時空からズレててさ。他の世界、例えば地球とかの輪廻から解脱した十年前の魂とか十年後の魂とかが時空を迷って飛んできたりしてるの」
「それって、まずいことなんですか?」
「時系列がズレるのは、あんまりねぇ。時々、前世の記憶持って生まれる人もいるからねぇ」
転生ものにはお決まりの設定だ。
特に問題なく聞こえる。
「元からそういう理なら良いんだけど。ここはそうじゃないからさぁ。この世界の歪みが他の世界にも影響してニルヴァーナ・ショック起こしたりしちゃうわけよ。それって理的にヤバくてさ」
「ニルヴァーナ・ショック? 聞いたことないんですが」
神様が首を傾げた。
「あれ? 神の間じゃ、有名な単語なんだけどなぁ。簡単に言うと魂のリサイクルが滞るってこと。結論だけ言うと、全世界の崩壊に繋がるんだよねぇ」
恐ろしいことを簡単に言ってくれる。
「世界がたった一つ歪んだだけで? いっそ一つくらい、消してしまえばいいのでは?」
「自分が創作したこの世界を? 壊して平気なの?」
ノエルは口を噤んだ。
自分が作った事実以上に、この世界には多くの人が生きて、暮らしている。もう、自分だけの創作の世界ではない。
(この世界は、とっくに私の手を離れている。私ですら、登場人物の一人なんだ)
「生み出された世界は、総てが現実、命が育まれる場所。神が守るべき世界なんだ」
神様が神様らしいことを初めて言った。
「だから、神に代わって君に立て直してほしいわけ。まだシナリオの第二部がある。君が正しいと思う方法が、正しい選択肢だよ」
「そんな曖昧な感じで良いんですか?」
神様のアドバイスには、不安しかない。
「君が作った世界なんだ。君がそうなってほしいと願う先に、希望があるんだよ。逆に君が壊れてしまえと思えば、すぐ壊れるからね。神的に絶対やってほしくない」
書きかけの原稿が気に入らなくて全消去する感覚だろうか。無に帰すって感じは、確かにある。
「シナリオから外れたり、没になった設定が活きていたりするのは、どういうことなんでしょう?」
「世界が崩れているせいだから……だよ。その状況から、君がどう立て直したいか、……を考えるといい。もっとも、それって……だから、……じゃ、な……思う」
神様の姿が透け始めた。声が途切れて、大切な部分が聞き取れない。
「時間になっちゃったね。神に……がある……は、箱を開け……ら、……に一回くらいは、話せ……よ。じゃぁね~」
神様が箱の中に吸い込まれて消えた。
「役に立ってんだか、立ってないんだか」
ノエルは、箱の中を覗き込んだ。
(なんか色々疲れたなぁ。まだまだ、問題は山済みだけど)
急展開で色々ありすぎて疲れた。異世界というのは、そういうものなんだろうか。
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(本当に、よく頑張ったよ、私。とりあえずこれで前半戦は、クリアだ)
気になる課題はあるものの、大きな山は越えたと思う。
マリアだけがまだ目覚めない現状も、レイリー後継者育成も、この後のイベントで解決できるはずだ。
(そのあたりの目処は立ってる。残る問題は、アレだ)
机の上に目が向いた。
本棚の隙間から見つけた箱が、置いたままになっている。
「何回か頑張ったけど、開かないんだよね。なんかもう、開けなくてもいいかな」
呟きながら触れると、ピカッと光った。
大変、既視感のある反応だ。
「……開けろってことか。鍵がまだ、見付かっていないんだよなぁ」
箱を持ち挙げて振ってみたり、耳を押し当てて中を音を聞いてみたりしてみる。
何も反応がない。
「やっぱり、いいや。必要なら、そのうち開くだろ」
箱を放り投げようとした途端、ノエルの胸がぼんやりと赤く光った。
光の筋が伸び、鍵穴に吸い込まれる。
(ええええ、ナニコレ、どういう……)
自分の胸を改めて確認する。
赤く光っているあたりにあるのは多分、魔石だ。
(魔力の核は心臓に近いって話だし、きっと魔石が光っているんだ)
恐る恐る、赤い光に触れる。光が凝集して、鍵の形になった。
カラン、と音を立てて机の上に転がった。
「こんなに簡単に見つかるんなら、もっと早く欲しかったよ……」
独り言ちながら、鍵を差し込む。
がちゃり、と大袈裟な音がして、蓋が開いた。
「やっと開けたねぇ。全然、鍵見付けないんだもん。仕方ないから、こっちから渡しにいったよね~」
箱の中から、見覚えのある小さい爺さんが飛び出した
思わず小さい爺さんを握り潰した。
「痛い、痛いってば。神様なんだから崇め敬えって言ったでしょ。久しぶりの再会をもっと喜んでくれる? こっちに顕現するのも体力使うんだからさぁ」
小さい爺さんがノエルの指をパンパンとタップする。
「今更、何の御用でしょうか? こっちは訳も分からんまま放置されて、危うく死にかけたんですが」
「折角、用意した転生特典を開けないから、開けるように伝えに来たんだよ。でも、上手くやってたみたいだねぇ。安心したよ」
ノエルの指に肘をついて小首を傾げる。
無駄に可愛い仕草に、またイラっとする。
「転生特典て、この箱が?」
「そうだよ。事情を知らない君に事情を伝えるためのアイテム」
「私の転生特典は、属性とか魔法がすぐ使えるとか、そういうんじゃなくて?」
神様が、はて? と言わんばかりに眉を下げた。
「今の神にそんな力ないよ~。失敗続きで神力減退しまくってるからさぁ。だから君には是非とも功績を挙げて、結果を残してもらいたいわけ!」
両の拳を握って腕をぶんぶん振る爺さんを、ぽいと投げ捨てる。
「神様が他力本願て、どういうことですか。ていうか、じゃぁ、私の今の状態って、どういうことなんですか?」
全属性適応者であることも、魔法がすぐに使えることも、中和術が覚えられたことも、転生特典じゃなければ説明が付かない。
「そんなの、偶然と君の努力の結果でしょ? 頑張ってたもんねぇ、偉い偉い」
小さな手に頭を撫でられた。
「偶然? だと? 努力の結果? 努力なんて必ず実るものじゃないだろ」
よく知っている。自信作だと思って書き上げた原稿が丸ごと没るのなんか、日常茶飯事だ。何百時間と費やした時間が無駄になるなんて、普通の話だ。
「君さぁ、本当に自己評価低いねぇ。自分が作った世界なんだし、すぐに魔法が使えても不思議じゃないよ? すごく努力してたのも、神は知ってるよ」
小さい爺さんが良い顔で微笑む。
「君が能力高いから、ここに送り込んだわけだから。イレギュラー転生だけど、適応できるだろうなぁって」
「イレギュラー転生?」
突然飛び出した言葉が気になった。
「そそ。最初に自分で言ってたヤツ。本当ならゼロ歳からの転生スタートなのに、途中で魂入れ替わってるでしょ? 普通はやらないよ、そんな転生。時間軸も他とズレているから仕方なくってさぁ」
「時間軸?」
聞けば聞くほど、わからなくなる。
「この世界は、今ちょっと崩れがちだから、通常の時空からズレててさ。他の世界、例えば地球とかの輪廻から解脱した十年前の魂とか十年後の魂とかが時空を迷って飛んできたりしてるの」
「それって、まずいことなんですか?」
「時系列がズレるのは、あんまりねぇ。時々、前世の記憶持って生まれる人もいるからねぇ」
転生ものにはお決まりの設定だ。
特に問題なく聞こえる。
「元からそういう理なら良いんだけど。ここはそうじゃないからさぁ。この世界の歪みが他の世界にも影響してニルヴァーナ・ショック起こしたりしちゃうわけよ。それって理的にヤバくてさ」
「ニルヴァーナ・ショック? 聞いたことないんですが」
神様が首を傾げた。
「あれ? 神の間じゃ、有名な単語なんだけどなぁ。簡単に言うと魂のリサイクルが滞るってこと。結論だけ言うと、全世界の崩壊に繋がるんだよねぇ」
恐ろしいことを簡単に言ってくれる。
「世界がたった一つ歪んだだけで? いっそ一つくらい、消してしまえばいいのでは?」
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「生み出された世界は、総てが現実、命が育まれる場所。神が守るべき世界なんだ」
神様が神様らしいことを初めて言った。
「だから、神に代わって君に立て直してほしいわけ。まだシナリオの第二部がある。君が正しいと思う方法が、正しい選択肢だよ」
「そんな曖昧な感じで良いんですか?」
神様のアドバイスには、不安しかない。
「君が作った世界なんだ。君がそうなってほしいと願う先に、希望があるんだよ。逆に君が壊れてしまえと思えば、すぐ壊れるからね。神的に絶対やってほしくない」
書きかけの原稿が気に入らなくて全消去する感覚だろうか。無に帰すって感じは、確かにある。
「シナリオから外れたり、没になった設定が活きていたりするのは、どういうことなんでしょう?」
「世界が崩れているせいだから……だよ。その状況から、君がどう立て直したいか、……を考えるといい。もっとも、それって……だから、……じゃ、な……思う」
神様の姿が透け始めた。声が途切れて、大切な部分が聞き取れない。
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