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四月三日:招
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校長室は無人だった。というのも、部屋の明かりが消えていたためである。念のため軽くノックをしてみたが、何も反応はなかった。
「校長先生はもう帰ったみたい」
「ね。ただ、華火が校長室ノックしだした時は心臓止まるかと思ったのよ」
「さっきから祭ちゃん心臓弱すぎるよ」
「逆なのよ!逆!華火が強いの!毛が生えてるのよ!心臓に!」
「祭ちゃんの心臓の方が強そうだけど」
華火はじっと祭の胸を見る。
「いやそんなあたかも実物を品定めした感想やめてほしいのよ」
「私の心臓はガラス細工のように透明度が高くて繊細だよ」
「それはもはや心臓じゃないし、知らない人からもらったお菓子を遠慮も怪しみもせず、食べちゃう人の心臓の形容詞にも当てはまらないのよ」
「じゃあ祭ちゃんは自分の心臓をなんだと思ってるの」
「心臓だよ。少なくとも透明でもガラスでもない。血液を循環させてくれてる内臓なのよ」
「そうなんだ。動脈派?それとも静脈派?」
「犬派?猫派?みたいに聞かないで。どういう質問なのよ」
「私は静脈派かな、青いし」
「まさかそれは青と赤どっちが好き?と同じ意味だったの?流石に祭ちゃんもそこまで拾いきれないのよ」
「早く階段の方に行こう」
「急に真面目に戻らないで!!」
いつの間にか二人の立場が逆転していた。二人は歩数を数えながら目的の場所に向かう。
「ここだよね」
華火は階段の裏側にあたるデッドスペースの中に入り込み、体育座りをする。
「・・・」
「どうしたの華火?」
「消えるかなって・・・」
「本当に消えたらうち泣いちゃうのよ?」
「場所はここだよね?」
「うちのへっぽこ推理が間違ってなければ、だけどね」
「へっぽこって、フフフ。あれ?これって」
華火が指をさした先には階段の裏に何かで彫ったような跡があった。
「これって鳥居?神社?」
階段の裏には鳥居や神社に見えるような彫り物が、うっすらと存在していた。
「あ、華火、これ。文字が書いてある!」
『友好の証に供えよ』
絵のちょうど真下あたりに小さくそう彫られていた。
「友好の証って・・・、さっき聞いたような?」
「なっちゃんだ。もしかしてこれもなっちゃん?」
「十分あり得る。なんならこの学校の七不思議を作った人物なんじゃないかとすら思うのよ」
「さっきもらったお菓子、お供えしてみようかな」
華火はココアシガレットを箱ごと取り出し、階段の裏にそっと置く。
二礼
二拍手
「七不思議が全部解けますように」
一礼
祭はなんだか本当に、神社にでも詣でてるようだ、と思った。
そう、一瞬思うだけだった。思うだけで精いっぱいだった。なぜなら、二人は気づけば違う場所にいたのだから。
「え」
「あ、あれ?」
南階段一階の階段裏から一変して広々とした何もない空間にいた。あるのは目の前に突然現れた、古びた扉だけだった。
私は周りを見渡す。
「ここは、どこ?」
「さっきまで狭い階段だったのよ・・・」
「あ、あれ、お菓子ない。お供えして持っていかれちゃった?」
「いや、お菓子どころじゃないのよ。嘘っしょ・・・。信じられないのよ」
二人は必死に状況を掴もうとしていた。
「そうだ!スマホ!!」
祭は思い出したかのように取り出し、外と連絡を取ろうと試みた。
「だめだ、圏外だ。いや、圏外って、ここどこなのよほんと・・・」
「この扉、開けるしかないね」
華火はそう言うと扉に手をかけた。しかし、すぐに祭に止められる。
「いやいやいやいやいや!ちょっと待って!華火!そんな簡単にこんな怪しい扉開けないで!せめてもう少し調べよう!?」
「え、あ、ごめん。つい」
「つい、じゃないのよ!扉開けるのは最終手段にしたいのよ」
二人は扉に耳を澄ませ何か聞こえないか試してみたり、何もない空間を少し歩いてみたりしたが、何も発見はなかった。本当に、何もなかった。電波もなく、出口もなかった。あるのは扉だけだった。
「祭ちゃん、やっぱこの扉開けようよ」
「う~ん、もうそれしかないのかな・・・。でも、怖くないの?」
「そう?私ドキドキはするけど怖くはないかな。なんかこの扉、好きなんだよね」
「・・・ほんと華火は度胸あるなぁ。なにこの扉好きって、デザインが好きなの?」
「なんとも言えないけど、好きかも」
私は古びた扉を撫でる。
ガチャ
突然扉が開いた。そしてバランスを崩した華火は一歩、先へと招かれた。
「華火!!」
祭は華火へ手を伸ばす。二人は引きずり込まれるように扉の中へ吸い込まれた。
「校長先生はもう帰ったみたい」
「ね。ただ、華火が校長室ノックしだした時は心臓止まるかと思ったのよ」
「さっきから祭ちゃん心臓弱すぎるよ」
「逆なのよ!逆!華火が強いの!毛が生えてるのよ!心臓に!」
「祭ちゃんの心臓の方が強そうだけど」
華火はじっと祭の胸を見る。
「いやそんなあたかも実物を品定めした感想やめてほしいのよ」
「私の心臓はガラス細工のように透明度が高くて繊細だよ」
「それはもはや心臓じゃないし、知らない人からもらったお菓子を遠慮も怪しみもせず、食べちゃう人の心臓の形容詞にも当てはまらないのよ」
「じゃあ祭ちゃんは自分の心臓をなんだと思ってるの」
「心臓だよ。少なくとも透明でもガラスでもない。血液を循環させてくれてる内臓なのよ」
「そうなんだ。動脈派?それとも静脈派?」
「犬派?猫派?みたいに聞かないで。どういう質問なのよ」
「私は静脈派かな、青いし」
「まさかそれは青と赤どっちが好き?と同じ意味だったの?流石に祭ちゃんもそこまで拾いきれないのよ」
「早く階段の方に行こう」
「急に真面目に戻らないで!!」
いつの間にか二人の立場が逆転していた。二人は歩数を数えながら目的の場所に向かう。
「ここだよね」
華火は階段の裏側にあたるデッドスペースの中に入り込み、体育座りをする。
「・・・」
「どうしたの華火?」
「消えるかなって・・・」
「本当に消えたらうち泣いちゃうのよ?」
「場所はここだよね?」
「うちのへっぽこ推理が間違ってなければ、だけどね」
「へっぽこって、フフフ。あれ?これって」
華火が指をさした先には階段の裏に何かで彫ったような跡があった。
「これって鳥居?神社?」
階段の裏には鳥居や神社に見えるような彫り物が、うっすらと存在していた。
「あ、華火、これ。文字が書いてある!」
『友好の証に供えよ』
絵のちょうど真下あたりに小さくそう彫られていた。
「友好の証って・・・、さっき聞いたような?」
「なっちゃんだ。もしかしてこれもなっちゃん?」
「十分あり得る。なんならこの学校の七不思議を作った人物なんじゃないかとすら思うのよ」
「さっきもらったお菓子、お供えしてみようかな」
華火はココアシガレットを箱ごと取り出し、階段の裏にそっと置く。
二礼
二拍手
「七不思議が全部解けますように」
一礼
祭はなんだか本当に、神社にでも詣でてるようだ、と思った。
そう、一瞬思うだけだった。思うだけで精いっぱいだった。なぜなら、二人は気づけば違う場所にいたのだから。
「え」
「あ、あれ?」
南階段一階の階段裏から一変して広々とした何もない空間にいた。あるのは目の前に突然現れた、古びた扉だけだった。
私は周りを見渡す。
「ここは、どこ?」
「さっきまで狭い階段だったのよ・・・」
「あ、あれ、お菓子ない。お供えして持っていかれちゃった?」
「いや、お菓子どころじゃないのよ。嘘っしょ・・・。信じられないのよ」
二人は必死に状況を掴もうとしていた。
「そうだ!スマホ!!」
祭は思い出したかのように取り出し、外と連絡を取ろうと試みた。
「だめだ、圏外だ。いや、圏外って、ここどこなのよほんと・・・」
「この扉、開けるしかないね」
華火はそう言うと扉に手をかけた。しかし、すぐに祭に止められる。
「いやいやいやいやいや!ちょっと待って!華火!そんな簡単にこんな怪しい扉開けないで!せめてもう少し調べよう!?」
「え、あ、ごめん。つい」
「つい、じゃないのよ!扉開けるのは最終手段にしたいのよ」
二人は扉に耳を澄ませ何か聞こえないか試してみたり、何もない空間を少し歩いてみたりしたが、何も発見はなかった。本当に、何もなかった。電波もなく、出口もなかった。あるのは扉だけだった。
「祭ちゃん、やっぱこの扉開けようよ」
「う~ん、もうそれしかないのかな・・・。でも、怖くないの?」
「そう?私ドキドキはするけど怖くはないかな。なんかこの扉、好きなんだよね」
「・・・ほんと華火は度胸あるなぁ。なにこの扉好きって、デザインが好きなの?」
「なんとも言えないけど、好きかも」
私は古びた扉を撫でる。
ガチャ
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