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四月九日:激流
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どうにも祭は居づらかった。
「祭~、今日ずっとそんな顔してるつもり~?」
真水が急に目の前にいた。
「は?そんな顔って、どんなよ」
真水は弱めの力で祭のほっぺをつまむ。
「ちょ、なに!」
「うーん?そんな顔っていうのはこういう仏頂面のことだよ~って、教えてあげてるのよ」
「もう!やめるのよ!」
祭は無理やり真水の手をどけさせる。
「ちぇ、つまんなーい」
「うちはあんたのおもちゃじゃないっての」
真水は何が面白いのかケラケラと笑っている。
「それで?華火ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「・・・してない」
祭は目をそらす。
「ふ~ん、じゃあどうして今日は二人とも目も合わせないのかしら」
「・・・さぁ」
真水はニヤニヤしながら祭を見ている。
「ほら、もう授業始まるんだからさっさと席戻るのよ」
「はいはーい。じゃあ、まったね~」
祭は大きなため息をついた。
結局、華火とは一度も話すことなく放課後になっていた。
気は乗らないが、部活に顔を出す。
「・・・意外と、どうにかなっちゃうな」
身体を動かすと変なことを考えなくていい。祭は無心で練習に取り組む。
「どうした、今日は嫌にやる気だな」
「別に普通にやってるだけですよ」
顧問に絡まれた。
「いや、いつもより集中してるだろ。それくらいわかるっての」
「そうですかねぇ」
「毎日そのくらい集中してくれれば、今度はインハイ優勝も夢じゃないな」
「・・・うす」
およそ二時間、動き続けた。片付けをしているとまた、頭がもやもやしてくる。
うちは間違ってない・・・。
「ありがとうございました!」
部の号令と同時に誰かと誰かが一緒に帰ろうなど言葉が聞こえてくる。そんな声を無視して祭は一人で学校を出た。
「あ、きたきた。そろそろかなぁって、思ってたよ」
制服ではなく、私服に着替えた真水が校門の前で待ち構えていた。
「どうしたの」
「ん?ちょっと祭に話が合って」
「電話でも良かったんじゃない?」
「なぁに、真水ちゃんに会いたくなかったの~?」
「いや、別にそういう意味じゃなくて」
確かに今、真水にはあまり会いたくなかったかもしれない。こんな気分の日は大概遊ばれて終わるのだ。
「ほらほら、さっさと歩く」
真水は祭の腕を引いて歩きだす。
「どこ行くのよ」
「うーん、とりあえず私は今、猛烈にあったかい飲み物が欲しい。だからとりあえずコンビニ!」
「へいへい」
言われるがまま、近くのコンビニに入る。
そうえば、先週もこのコンビニに来たな。七不思議調べるために夕飯、買いに来たんだよなぁ。
「祭?」
「え、なに」
「もう~、祭は何飲むって聞いたんじゃない~!今日は私のおごりよ~」
真水はコンビニでカフェラテを買うらしく、カップを持っていた。
「・・・じゃあ、肉まんとから揚げ棒とあんまんとあったかいお茶」
「多い!!」
「お腹減っちゃったのよ」
「・・・肉まんとお茶は買ってあげるわ」
「・・・しょうがない。妥協してあげるのよ」
「お金出すのは私なんですけどぉ」
「最初におごりって言ったのは真水じゃん」
「限度を覚えなさい」
「へいへい」
目当ての物を買い、祭は真水についていく。
「それで、どこ行くの?」
「うーん、どこでもいいんだけど。公園にでも行きましょうか」
真水はそう言うと近くの児童公園に足を向けた。もう日も落ち、遊んでいる子供はいなかった。二人は何となく公園のベンチに座る。
「あったかいうちに食べちゃいなさい。せっかくなんだから」
うちはコンビニの袋から肉まんを取り出す。
「ほら」
「え」
祭は肉まんを半分に分け、片方を真水にあげた。
「なに、食べないの?」
「いや、いいの?」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
二人は無言で肉まんを食べ始めた。春とはいえ、この時間になると結構冷える。それを見越してか、真水はあったかそうな上着を羽織っていた。
「それで、話って?」
先に祭が切り出した。
「うん、華火ちゃんと喧嘩したんでしょう?」
「なに、仲を取り持とうとか考えてるの?」
それは確かに真水が考えそうなことだった。真水は昔から仲裁役だった。そして誰の見方もせずに取り入り、様々なことを見聞きしていた。他人への振舞い方がうまい人間なのだ。
「いやいやいや。今回はその逆」
「・・・逆?」
「そう。喧嘩したのならこのまま、華火ちゃんとはバイバイしちゃいなさい」
「祭~、今日ずっとそんな顔してるつもり~?」
真水が急に目の前にいた。
「は?そんな顔って、どんなよ」
真水は弱めの力で祭のほっぺをつまむ。
「ちょ、なに!」
「うーん?そんな顔っていうのはこういう仏頂面のことだよ~って、教えてあげてるのよ」
「もう!やめるのよ!」
祭は無理やり真水の手をどけさせる。
「ちぇ、つまんなーい」
「うちはあんたのおもちゃじゃないっての」
真水は何が面白いのかケラケラと笑っている。
「それで?華火ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「・・・してない」
祭は目をそらす。
「ふ~ん、じゃあどうして今日は二人とも目も合わせないのかしら」
「・・・さぁ」
真水はニヤニヤしながら祭を見ている。
「ほら、もう授業始まるんだからさっさと席戻るのよ」
「はいはーい。じゃあ、まったね~」
祭は大きなため息をついた。
結局、華火とは一度も話すことなく放課後になっていた。
気は乗らないが、部活に顔を出す。
「・・・意外と、どうにかなっちゃうな」
身体を動かすと変なことを考えなくていい。祭は無心で練習に取り組む。
「どうした、今日は嫌にやる気だな」
「別に普通にやってるだけですよ」
顧問に絡まれた。
「いや、いつもより集中してるだろ。それくらいわかるっての」
「そうですかねぇ」
「毎日そのくらい集中してくれれば、今度はインハイ優勝も夢じゃないな」
「・・・うす」
およそ二時間、動き続けた。片付けをしているとまた、頭がもやもやしてくる。
うちは間違ってない・・・。
「ありがとうございました!」
部の号令と同時に誰かと誰かが一緒に帰ろうなど言葉が聞こえてくる。そんな声を無視して祭は一人で学校を出た。
「あ、きたきた。そろそろかなぁって、思ってたよ」
制服ではなく、私服に着替えた真水が校門の前で待ち構えていた。
「どうしたの」
「ん?ちょっと祭に話が合って」
「電話でも良かったんじゃない?」
「なぁに、真水ちゃんに会いたくなかったの~?」
「いや、別にそういう意味じゃなくて」
確かに今、真水にはあまり会いたくなかったかもしれない。こんな気分の日は大概遊ばれて終わるのだ。
「ほらほら、さっさと歩く」
真水は祭の腕を引いて歩きだす。
「どこ行くのよ」
「うーん、とりあえず私は今、猛烈にあったかい飲み物が欲しい。だからとりあえずコンビニ!」
「へいへい」
言われるがまま、近くのコンビニに入る。
そうえば、先週もこのコンビニに来たな。七不思議調べるために夕飯、買いに来たんだよなぁ。
「祭?」
「え、なに」
「もう~、祭は何飲むって聞いたんじゃない~!今日は私のおごりよ~」
真水はコンビニでカフェラテを買うらしく、カップを持っていた。
「・・・じゃあ、肉まんとから揚げ棒とあんまんとあったかいお茶」
「多い!!」
「お腹減っちゃったのよ」
「・・・肉まんとお茶は買ってあげるわ」
「・・・しょうがない。妥協してあげるのよ」
「お金出すのは私なんですけどぉ」
「最初におごりって言ったのは真水じゃん」
「限度を覚えなさい」
「へいへい」
目当ての物を買い、祭は真水についていく。
「それで、どこ行くの?」
「うーん、どこでもいいんだけど。公園にでも行きましょうか」
真水はそう言うと近くの児童公園に足を向けた。もう日も落ち、遊んでいる子供はいなかった。二人は何となく公園のベンチに座る。
「あったかいうちに食べちゃいなさい。せっかくなんだから」
うちはコンビニの袋から肉まんを取り出す。
「ほら」
「え」
祭は肉まんを半分に分け、片方を真水にあげた。
「なに、食べないの?」
「いや、いいの?」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
二人は無言で肉まんを食べ始めた。春とはいえ、この時間になると結構冷える。それを見越してか、真水はあったかそうな上着を羽織っていた。
「それで、話って?」
先に祭が切り出した。
「うん、華火ちゃんと喧嘩したんでしょう?」
「なに、仲を取り持とうとか考えてるの?」
それは確かに真水が考えそうなことだった。真水は昔から仲裁役だった。そして誰の見方もせずに取り入り、様々なことを見聞きしていた。他人への振舞い方がうまい人間なのだ。
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