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15.好きな人
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六月二十日
太陽はまた身長がのびた気がする。
ますますかっこよくなってる。
五月一日
遠足は昴と一緒の班になった。
太陽も一緒ならよかったのになー。
四月五日
今日から五年生。太陽と一緒のクラスになれた! (ついでに昴も)
来年も同じクラスだといいな。
中学は一緒かな?
太陽はすごくやさしいし、身長もぐんぐんのびてきてる。だから、わたしの知らないところでモテちゃったりしないかなー? 不安だ。
太陽も私のことが好きだったらいいのにな。
「太陽も私のことが好きだったらいいのにな」と書いてある。
つまり、「月渚は太陽くんのことが好き」だということだ。
月渚は、学校の友だちのことが好き。
お父さんとお母さんのことも好き。
でも、その「好き」と、太陽くんに向けられた「好き」は別の種類だ。
アンドロイドでも、それくらいのことはわかる。
月渚は太陽くんに「恋」をしていたんだ。
(月渚、すごーい!)
私は月渚に感心していた。
人間って、本当に「恋」をするんだ。
アンドロイドには想像もつかない感情だ。
(恋って、どんな感じだろう……?)
「恋」どころか、「嬉しい」という気持ちも「悲しい」という気持ちも、私にはよくわかっていないのだと思う。
だって私には心が無い。
私はただの機械だから。
相手から受けた発言や行動に反応して体温が上がったり、体のパーツがぎしぎし鳴ったりすることもある。
けれど、それはプログラミングされているからだ。
心があるわけじゃない。
私はとうとう、最初の日記までたどり着くことができた。
日付は十二月二十五日。この日はクリスマスでもあり、月渚の八歳の誕生日でもある。
十二月二十五日
今日はクリスマスパーティーだった。
たいようとすばるにプレゼントをもらった。
たいようからもらったのは、すごくかわいいゆびわだった。
ママが、いいかおりがする、き色のふくろをくれた。
サシェっていうらしい。ゆびわはハンカチにくるんで、サシェの中に大事に入れておこうと思う。
すごくうれしかった。
わすれないように、今日から日記をつけることにした。
(すばるからのプレゼントは、うまいぼう三十本。全部たこやきあじ。なんで?)
サシェの中身は指輪で、贈り主の太陽くんは、月渚の好きな人だったということがわかった。
……それなのに、私は「誰からもらったのか知らない」と太陽くんの前で言ってしまった。
これって、かなりまずかったのでは?
臨海学校中の私のミッションはずばり、「太陽くんとたくさん思い出を作ること」。
月渚が眠っている間に、太陽くんとどんどん仲良くならなくちゃ……!
「お、おーい、月渚? こわいんだけど」
気が付けば、昴くんがおばけでも見たみたいな顔で、私を見返していた。
「座席の隙間から俺を見たまま考えごとするなよ……」
「えっ? あ、ごめんごめん」
つい物思いにふけてしまった。
「ちょっと、耳元で騒がないでくれる?」
私の隣の席でアイマスクを外しながら、瀬戸さんが言う。
瀬戸さんは、バスが学校を出発したときからアイマスクをして寝ていた。隣にいる私とも一言も口を利かなかったし、バスの中のレクリエーションにも、一切参加しなかった。
「ごめんね。起こしちゃったかな?」
「ええ。でもまあ、小暮さんのおかげで、よく寝られたわ。あなたの隣って、すごく退屈だから」
「本当? それはよかった」
「……嫌味で言ったんだけど」
「嫌味? どのへんが嫌味だったのかな? 教えてもらってもいい?」
「…………」
瀬戸さんはまたアイマスクをしてしまった。
「瀬戸さん、また寝るの? もうすぐ着くよ?」
「話しかけないで!」
(瀬戸さんは寝るのが好きなんだなあ)
と思っていると、昴くんが私に「ほっとけ」とささやいた。
(たしかに、眠い人の邪魔はしないほうがいいかも)
バスは高速道路を下りて、街の中を進んでいく。
私たちの臨海学校が、本格的に始まろうとしていた。
太陽はまた身長がのびた気がする。
ますますかっこよくなってる。
五月一日
遠足は昴と一緒の班になった。
太陽も一緒ならよかったのになー。
四月五日
今日から五年生。太陽と一緒のクラスになれた! (ついでに昴も)
来年も同じクラスだといいな。
中学は一緒かな?
太陽はすごくやさしいし、身長もぐんぐんのびてきてる。だから、わたしの知らないところでモテちゃったりしないかなー? 不安だ。
太陽も私のことが好きだったらいいのにな。
「太陽も私のことが好きだったらいいのにな」と書いてある。
つまり、「月渚は太陽くんのことが好き」だということだ。
月渚は、学校の友だちのことが好き。
お父さんとお母さんのことも好き。
でも、その「好き」と、太陽くんに向けられた「好き」は別の種類だ。
アンドロイドでも、それくらいのことはわかる。
月渚は太陽くんに「恋」をしていたんだ。
(月渚、すごーい!)
私は月渚に感心していた。
人間って、本当に「恋」をするんだ。
アンドロイドには想像もつかない感情だ。
(恋って、どんな感じだろう……?)
「恋」どころか、「嬉しい」という気持ちも「悲しい」という気持ちも、私にはよくわかっていないのだと思う。
だって私には心が無い。
私はただの機械だから。
相手から受けた発言や行動に反応して体温が上がったり、体のパーツがぎしぎし鳴ったりすることもある。
けれど、それはプログラミングされているからだ。
心があるわけじゃない。
私はとうとう、最初の日記までたどり着くことができた。
日付は十二月二十五日。この日はクリスマスでもあり、月渚の八歳の誕生日でもある。
十二月二十五日
今日はクリスマスパーティーだった。
たいようとすばるにプレゼントをもらった。
たいようからもらったのは、すごくかわいいゆびわだった。
ママが、いいかおりがする、き色のふくろをくれた。
サシェっていうらしい。ゆびわはハンカチにくるんで、サシェの中に大事に入れておこうと思う。
すごくうれしかった。
わすれないように、今日から日記をつけることにした。
(すばるからのプレゼントは、うまいぼう三十本。全部たこやきあじ。なんで?)
サシェの中身は指輪で、贈り主の太陽くんは、月渚の好きな人だったということがわかった。
……それなのに、私は「誰からもらったのか知らない」と太陽くんの前で言ってしまった。
これって、かなりまずかったのでは?
臨海学校中の私のミッションはずばり、「太陽くんとたくさん思い出を作ること」。
月渚が眠っている間に、太陽くんとどんどん仲良くならなくちゃ……!
「お、おーい、月渚? こわいんだけど」
気が付けば、昴くんがおばけでも見たみたいな顔で、私を見返していた。
「座席の隙間から俺を見たまま考えごとするなよ……」
「えっ? あ、ごめんごめん」
つい物思いにふけてしまった。
「ちょっと、耳元で騒がないでくれる?」
私の隣の席でアイマスクを外しながら、瀬戸さんが言う。
瀬戸さんは、バスが学校を出発したときからアイマスクをして寝ていた。隣にいる私とも一言も口を利かなかったし、バスの中のレクリエーションにも、一切参加しなかった。
「ごめんね。起こしちゃったかな?」
「ええ。でもまあ、小暮さんのおかげで、よく寝られたわ。あなたの隣って、すごく退屈だから」
「本当? それはよかった」
「……嫌味で言ったんだけど」
「嫌味? どのへんが嫌味だったのかな? 教えてもらってもいい?」
「…………」
瀬戸さんはまたアイマスクをしてしまった。
「瀬戸さん、また寝るの? もうすぐ着くよ?」
「話しかけないで!」
(瀬戸さんは寝るのが好きなんだなあ)
と思っていると、昴くんが私に「ほっとけ」とささやいた。
(たしかに、眠い人の邪魔はしないほうがいいかも)
バスは高速道路を下りて、街の中を進んでいく。
私たちの臨海学校が、本格的に始まろうとしていた。
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