アンドロイドが知りたいこと

ばやし せいず

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18.月渚っぽくない

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 いかだリレーが終わって、遊泳の時間になった。

 すばるくんはいその上にすわって、海で泳ぐみんなのことをながめている。
 いかだをいでいたときの元気は無くなっていた。

「昴くん、どうしたの?」

 砂浜の上から呼びかける。

(あれだけ頑張がんばって漕いだから、つかれちゃったのかな)

 昴くんはり返ってくれたけど、「べつに」と言うだけだった。

「そうだ。月渚るな、あれ見ろよ」

 昴くんは砂浜からびた堤防ていぼうの先を指さす。
 堤防の先には、岩でできた小さな島があった。
 島の上には赤い、柱を組み合わせたようなものが置かれている。あれは「鳥居とりい」というらしい。

「あそこに小さい神社があるんだ。明日の肝試きもだめしは、あそこまで行って戻ってくるんだぜー」

 昴くんはいたずらを思いついたみたいに、にやっと笑う。

「うん、楽しみだね!」

 私が言うと、昴くんがきょとんとした。

「た、楽しみぃ? おまえ、おばけ屋敷やしききらいだっただろ?」
「おばけ屋敷? ……明日やるのは肝試しだよね?」
「おばけ屋敷は嫌いなのに、肝試しは平気なのかよ。変わってんなー」

 昴くんが笑った。

(肝試しって、おばけ屋敷みたいに怖いことを楽しむイベントだったのかな……?)

 いけない、いけない。
 知らずにいたら、私はにこにこしながら肝試しに参加していたかもしれない。

(肝試しでは、いっぱい怖がるぞ!)

 私は自分に気合を入れた。



 遊泳のあとは、休憩きゅうけい時間になった。夕食の時間までは、宿舎しゅくしゃの部屋にいていいみたい。
 私、樹里じゅりちゃん、恵奈えなちゃん、花鈴かりんちゃんの四人で、さっそく神経衰弱しんけいすいじゃくをスタート! ……と思ったけど、恵奈ちゃんと花鈴ちゃんは、たたみの上でうとうとお昼寝を始めてしまった。
 いかだリレーもやって、海水浴もして、くたくたに疲れてしまったらしい。
 部屋の押し入れの中にうすけ布団を見つけ、私と樹里ちゃんで二人に掛けてあげた。
 人間はお腹を冷やすと体調が悪くなるみたい。

「樹里ちゃんは疲れてないの?」
「うちは元気だけが取りだから。月渚は?」
「私も平気。泳いでないし」

 みんなが夕食を食べている間に控室ひかえしつ充電じゅうでんすれば、私は寝て起きたみたいに元気いっぱいになる。

「月渚、夕飯ゆうはんもみんなと別々なの? 今日のメニュー、月渚の好きなカレーライスらしいよ?」
 「元気だけが取り柄」と言っていたけれど、樹里ちゃんは畳に転がって、目をとろんとさせている。

「う、うん……。入院して以来、あまり食べられなくなっちゃって」
「そっかあ」

 樹里ちゃんの眠そうな声に、さみしさがじる。

「でも、夕食のあとのレクリエーションはできるでしょ?」
「うん! もちろん!」

 私は大きくうなずいた。夕食のあとのレクリエーションというのは、つまり、待ちに待ったカラオケ大会だ。

「樹里ちゃんと歌うの、楽しみにしてるんだ」
「でも無理しないでね。……月渚、早く元気になるといいね」

 樹里ちゃんは目を閉じてしまう。そのまま寝てしまいそうだったけど、私はついいてしまった。

「私、そんなに元気が無いように見える?」
「前にくらべたらね。前はもう、教室をこわすんじゃないかなーってくらい元気だったでしょ?」
「そ、そんなに?」
室名札しつないふだを割ったの、覚えてない?」
(室内札って『〇年〇組』って書いてあるプレート? 月渚はどうやってそんなものを割ったの!?)
「月渚のこと、みんな心配してんだからね」
「……みんな?」

 友だちみんなが私のことを心配しているの? 前と様子が違うから?

「みんなに心配されるほど、私は月渚っぽくないのかな……?」

 樹里ちゃんは返事をしない。すうすうと気持ちよさそうに寝息を立てている。日焼けしてしまったようで、おでこや鼻の頭が赤い。

 私はお布団をもう一枚持ってきて、樹里ちゃんにも掛けてあげた。
 三人がよく寝ていることを確認し、私は部屋のすみでポシェットを開く。取り出したのは、月渚のスマホだ。
 本当は持ってきてはいけないのだけれど、『具合が悪くなったときに家族と連絡を取りやすくするため』と言って、特別に許可きょかをもらっている。

 だめだとは思いつつも、私は『くまくまダイアリー』を開いて読み返す。

(もっと月渚らしくしなくちゃな……)
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