アンドロイドが知りたいこと

ばやし せいず

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19.チャンス

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 みんなが食堂しょくどうで夕食を囲んでいる間。充電じゅうでんませてから窓の外を見ると、もう薄暗闇うすくらやみになっていた。
 控室ひかえしつを出て、暗い廊下をひとりで進み、食堂へ向かう。

(う~ん、やっぱりこわくない……)
 私の目は暗いところでもよく見えるから、どうしても暗闇くらやみを「怖い」とは思えない。人間の中には幽霊ゆうれいが見える人もいるらしいから、大変だ。

肝試きもだめしで、ちゃんと『わあ』とか『きゃあ』とか言えるかな?)

 私は食堂のドアを開けて中をのぞいた。夕食は終わったらしく、きれいな片付かたづいたテーブルを六年生のみんなが囲んでいる。
 食堂の前には、小さなステージがあった。その上には男の人が立っている。黒いマントで全身をおおい、顔にはお面をつけていて、だれだかわからない。

(だ、誰!?)

「誰だ……。誰なんだよ……」

 みんな、固唾かたずをのんでマントの人を見つめている。怖くてたまらないのか、手をつないでる女の子たちまでいた。

(もしかして、お、おばけ……!?)

 私は怖くなった……のではなく、うれしくなってしまった。

(私にもおばけが見えてる!?)

 アンドロイドにもおばけが見えるなんて!

正解せいかいは~……』

 レクリエーション係の女の子がマイクしに言うと、マントの人はお面をぱっと外した。

『一組の担任たんにん冴島さえじま先生でしたー!』

 お面の下からは、冴島先生の顔が出てきた。

「はっはっはー! マント越しにもわかっただろ! 先生のこの筋肉きんにくが!」
「私、あったりー!」
「えーっ、全然わからなかった!」
(な、なーんだ)

 おばけが出たわけではなくて、「クイズ・先生を当てよう大会」が始まっていたらしい。
 私はがっくり肩を落とした。

 でも、こうしちゃいられない。クイズ大会が終わったら、次はカラオケ大会だ。大盛り上がりの食堂の中にしのび込んで、樹里じゅりちゃんの元へ向かう。

「樹里ちゃん、来たよっ!」

 けらけら笑っている樹里ちゃんが振り返る。私を見るなり、なぜか気まずそうな顔になった。

「私たちが出るカラオケ大会って、このあとだよね? 頑張がんばろうね!」

 私は控室で充電しながら「ココロ・タッチ」をインプットしてきた。一音も外さずに歌える。準備は万端ばんたんだ。

「それが……」

 私は苦笑いする樹里ちゃんの声に、違和感いわかんを覚えた。

『さあ、次はカラオケ大会です! エントリーナンバー1! 六年一組の二人組、ジュリ&ルナ!」
月渚るな、ごめええんっ」

 手を合わせて謝る樹里ちゃんの声は、ガラガラだった。

「さっき口を開けて寝てたせいか、どんどんのどがガラガラになってきちゃって……」
「えっ、だ、大丈夫!?」
「声、出せないかも……」

 樹里ちゃんは、少し涙目なみだめになっている。

『どうしましたー? ステージに上がってくださ~い!』
「月渚、一人で歌えそう?」
「一人でっ?」
(そ、そんなあ)

 樹里ちゃんと二人で歌うと思っていたのに。

「月渚、一人で歌うつもりなの?」

 心配そうに声をかけてきたのは太陽くんだった。一人で歌うなんて、さすがにちょっと不安だ。

(でも、月渚ならきっと……!)
「うんっ! 私、やってみる!」

 太陽くんに良いところをみせるチャンスだ!
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