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20.気まずい
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「さすが月渚! 頑張れっ!」
私は樹里ちゃんに応援され、一人で前に出た。マイクを借りてステージに上がる。
「えー……、相方は喉が痛くなっちゃったので、今回は私一人で歌うことになりました! 曲は『ココロ・タッチ』です! ……ミュージック、カモンッ!」
私は腕を真っ直ぐ上に伸ばし、パチンッと指を鳴らす。
月渚ならやりそうじゃない!?
イントロが流れ始め、私はマイクに口を近づけた。
「――」
「ココロ・タッチ」はアップテンポのキャッチ―な曲。
私は初めから全力で歌った!
「う、うまぁっ……」
誰かが声を漏らすと、わあー! っと大波のような歓声が沸き起こる。
歌を上手に歌うなんて、アンドロイドにとってはなんてことはない。音源を聞いて、それを月渚の声で歌えばいいだけ。
最後まで「ココロ・タッチ」を歌い切ると、食堂を震わすような拍手が起きた。
同級生も先生たちも、気付けばみんなスタンディングオベーションをしてくれている。
「ありがとうございましたー!」
私は一礼して、鳴りやまない拍手を浴びながら一組の元へと戻る。
「月渚ちゃん! すごいよ!」
「ほんと! びっくりした!」
友だちも口々に褒めてくれる。
(やったよ、月渚!)
私はきょろきょろと太陽くんを探す。
(聞いててくれたかな?)
太陽くんは長机の端のほうに座っていた。口をぽかんと開けて私を見つめている。
(太陽くんが口も利けなくなるくらい大成功だったんだ。やったよ、月渚!)
「ねえねえっ、いつの間にあんなに上手くなったの!?」
「ね! 月渚って信じられないくらい音痴だったのにねー!」
「………………えっ?」
大興奮の樹里ちゃんたちに、私は訊き返す。
(い、今、なななな、なんてっ!?)
「お、おまえ、別人みたいに上手くなってるな」
振り返ると昴くんが私を見上げていた。
「本当におまえが歌ったのか? 怪しいぞ!」
「だ、だって私って、カラオケ好きだったんだよね? いつも九十点越だったって……」
樹里ちゃんや昴くんたちに訊いてみたけど、みんな首を傾げている。
「それは、接待モードにしてるときでしょ?」
「せ、接待モードって?」
樹里ちゃんいわく、カラオケの設定をいじると「接待モード」にできるらしい。歌が上手い人も下手な人も、みんな九十点がとれるそう。
「い、今のも接待モードだったから……」
「そんなわけないじゃん!」
私の苦しい言い訳に、一組のほぼ全員が笑っている。
昴くんと太陽くん以外は。
昴くんは私を疑うような目を向け、太陽くんは戸惑うように目をぱちぱちさせている。さすが、幼馴染の二人。誤魔化せていない。
『続きまして、エントリーナンバー2。同じく一組の瀬戸さん、吉木さんのグループです!』
「瀬戸さんも歌うの? 頑張ってね!」
話をそらすために瀬戸さんを探して応援した。
「……」
でも瀬戸さんは答えないし、イスから立ち上がらない。一緒に出場する予定のクラスメイト、吉木さんと顔を見合せる。
二人で頷き合うと、瀬戸さんがすっと手を上げた。
「すみません。私たちも喉が痛いのでパスします」
瀬戸さんは全然ガラガラではない、きれいな声でそう告げた。
『え? そ、そうですか? じゃあ次のグループ……』
「パ、パス? 瀬戸さん、歌わないの?」
「あなたの後に歌えるわけないじゃない」
「どうして?」
「自分で考えなさいよっ」
瀬戸さんは眉間に皺を寄せて、ぷいっと顔を背けてしまった。
そして瀬戸さんのみならず……、
「わ、私たちもパスします」
「お、俺も……」
なぜか続々と出場者が辞退していく。
『みなさん辞退するんですか……?』
レクリエーション係の子たちも困惑気味だ。
「おいっ! せっかくのレクリエーションがめちゃくちゃじゃないかっ! いいからみんな歌え―っ!」
しまいには、冴島先生が怒り出した。
盛り上がっていたはずの食堂の空気は、一気にずーんと重くなってしまった。
(わ、私のせい……?)
こんなことになるなんて思わなかった。私はただ歌を歌って、太陽くんに良いところを見せたかっただけなのに。
良いところを見せるどころか、気まずい雰囲気になってしまうなんて……。
私は樹里ちゃんに応援され、一人で前に出た。マイクを借りてステージに上がる。
「えー……、相方は喉が痛くなっちゃったので、今回は私一人で歌うことになりました! 曲は『ココロ・タッチ』です! ……ミュージック、カモンッ!」
私は腕を真っ直ぐ上に伸ばし、パチンッと指を鳴らす。
月渚ならやりそうじゃない!?
イントロが流れ始め、私はマイクに口を近づけた。
「――」
「ココロ・タッチ」はアップテンポのキャッチ―な曲。
私は初めから全力で歌った!
「う、うまぁっ……」
誰かが声を漏らすと、わあー! っと大波のような歓声が沸き起こる。
歌を上手に歌うなんて、アンドロイドにとってはなんてことはない。音源を聞いて、それを月渚の声で歌えばいいだけ。
最後まで「ココロ・タッチ」を歌い切ると、食堂を震わすような拍手が起きた。
同級生も先生たちも、気付けばみんなスタンディングオベーションをしてくれている。
「ありがとうございましたー!」
私は一礼して、鳴りやまない拍手を浴びながら一組の元へと戻る。
「月渚ちゃん! すごいよ!」
「ほんと! びっくりした!」
友だちも口々に褒めてくれる。
(やったよ、月渚!)
私はきょろきょろと太陽くんを探す。
(聞いててくれたかな?)
太陽くんは長机の端のほうに座っていた。口をぽかんと開けて私を見つめている。
(太陽くんが口も利けなくなるくらい大成功だったんだ。やったよ、月渚!)
「ねえねえっ、いつの間にあんなに上手くなったの!?」
「ね! 月渚って信じられないくらい音痴だったのにねー!」
「………………えっ?」
大興奮の樹里ちゃんたちに、私は訊き返す。
(い、今、なななな、なんてっ!?)
「お、おまえ、別人みたいに上手くなってるな」
振り返ると昴くんが私を見上げていた。
「本当におまえが歌ったのか? 怪しいぞ!」
「だ、だって私って、カラオケ好きだったんだよね? いつも九十点越だったって……」
樹里ちゃんや昴くんたちに訊いてみたけど、みんな首を傾げている。
「それは、接待モードにしてるときでしょ?」
「せ、接待モードって?」
樹里ちゃんいわく、カラオケの設定をいじると「接待モード」にできるらしい。歌が上手い人も下手な人も、みんな九十点がとれるそう。
「い、今のも接待モードだったから……」
「そんなわけないじゃん!」
私の苦しい言い訳に、一組のほぼ全員が笑っている。
昴くんと太陽くん以外は。
昴くんは私を疑うような目を向け、太陽くんは戸惑うように目をぱちぱちさせている。さすが、幼馴染の二人。誤魔化せていない。
『続きまして、エントリーナンバー2。同じく一組の瀬戸さん、吉木さんのグループです!』
「瀬戸さんも歌うの? 頑張ってね!」
話をそらすために瀬戸さんを探して応援した。
「……」
でも瀬戸さんは答えないし、イスから立ち上がらない。一緒に出場する予定のクラスメイト、吉木さんと顔を見合せる。
二人で頷き合うと、瀬戸さんがすっと手を上げた。
「すみません。私たちも喉が痛いのでパスします」
瀬戸さんは全然ガラガラではない、きれいな声でそう告げた。
『え? そ、そうですか? じゃあ次のグループ……』
「パ、パス? 瀬戸さん、歌わないの?」
「あなたの後に歌えるわけないじゃない」
「どうして?」
「自分で考えなさいよっ」
瀬戸さんは眉間に皺を寄せて、ぷいっと顔を背けてしまった。
そして瀬戸さんのみならず……、
「わ、私たちもパスします」
「お、俺も……」
なぜか続々と出場者が辞退していく。
『みなさん辞退するんですか……?』
レクリエーション係の子たちも困惑気味だ。
「おいっ! せっかくのレクリエーションがめちゃくちゃじゃないかっ! いいからみんな歌え―っ!」
しまいには、冴島先生が怒り出した。
盛り上がっていたはずの食堂の空気は、一気にずーんと重くなってしまった。
(わ、私のせい……?)
こんなことになるなんて思わなかった。私はただ歌を歌って、太陽くんに良いところを見せたかっただけなのに。
良いところを見せるどころか、気まずい雰囲気になってしまうなんて……。
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