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23.一乃瀬の夜②side白川結衣
しおりを挟む「派手にやられたなぁ」
「修理費いくらだろう……」
私の目の前に耕ちゃんと理玖くん、隣に坊ちゃんの並びで1階へと下がる。後ろから聞こえる執事長を押し付け合っている2人の会話は噛み合っているようで噛み合っていなくて、少し滑稽に感じられた。
「おーい。ウィルー!出てこーい!」
「ちょっ、おまっ……まだ敵が」
大声を出した耕ちゃんに、まだ誰かいるかもしれないのに、と泉くんが言いかけた時には既に遅く私達の目の前に3人組の黒装束の人物が立ち塞がった。
「うちの屋敷に何か用事でもあった?ーー目的は何?」
至極冷静に坊ちゃんが語りかける。
黒装束の手には長剣が握られている。対するこちらも私と坊ちゃん以外は、同じく長剣を持っている。人数的にはこちらが1人多いけれど、私と坊ちゃんの護衛をしながらでは勝ち目が薄い。早めに拳銃を取り出そうとするけれど、睨み合いの最中で急に構えるのは危険だし、黒装束の仲間が他にいてウィルくんが人質に取られてるとしたら、人質交換に拳銃を要求される可能性もある。ここは慎重にーー。
「ーー女を出せ」
階段を降りたすぐのここは暗がりだ。向こうからこちらはあまり見えていないのだろうか、あちらは狙いの人物を見つけられず周囲を伺いながらそう述べた、狙いは私なのかしら。それとも、人質に丁度いいとお考えなのかしら。
「要件はそれだけ?ーー目的もないのにうちの使用人は渡せないけど」
坊ちゃんはそう言うけれど、ここは私が一旦向こうの手に渡って様子を見た方がいいのかしら。
「その女を渡せ」
やっと私を認識したらしい男が長剣をこちらに向けた。
何分が経過しただろうーー。私と黒装束3人組の間には、長剣を持った理玖くんと耕ちゃんが立ち、すぐ後ろには護衛でもするかのように快星くんと泉くんが控えている。その状態ではあちらも手出し出来ずに、膠着状態だ。既にあちら側は経つだけの時間に耐えきれず、苛立った様子が見て取れるーーもう少し時間が経てば痺れを切らせて何か仕掛けてくるだろう。ふーっと息を吐いたその時だった。
「逃げろ!外に異常なし!他に仲間はいない!!」
バンっと開けられた玄関からウィルくんが登場した。長剣を持って3人組に立ち向かっていく、どうやら挟み撃ちにするようだ。その声と同時に快星くんと理玖くん、耕ちゃんが動き始めた。
「坊ちゃんはこちらへ」
泉くんが坊ちゃんを2階に避難させる為に声をかける。
「……撃ってもよろしいのかしら?」
坊ちゃんに向かって問いかけると、月明かりに照らされた顔はだいぶ苦々しかった。パッと辺りが明るくなった何かの拍子で電気が点いたのだろう。
「結衣っ!」
快星くんの声に振り返ると黒装束が1人近づいていた。素早く拳銃を構える。
「それ以上近づいたらーー」
「ーー違う。お前じゃない」
撃つわよ。と言いかけた言葉はかき消された。男は明かりに照らされた私を見てはっきりそう言った。
「引き上げろっ!!」
その声で黒装束の男達は撤退して行った。ーー探しているのは誰なのかしら。
追いかけた理玖くんとウィルくん、通報で駆けつけた騎士団が1人を捕まえたらしい。
後日騎士団から報告があった。
「頼まれただけだ」
依頼主ははっきりしないが、相当な金額を積まれたらしい。人探しの理由は分からず、またどう言う人を探しているのかについては黙秘しているとのことだった。
顔を見て違うと言ったわーー何か特徴を伝えられていたのだろう。何が違ったのか分からないけれど、髪の色と瞳の色を変えた事は功を奏していたのかもしれないと感じた。
柚子に何もなくて良かったーー心からそう思った暑い夏の日だった。
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