ようこそ、一条家へ

如月はづき

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49.観劇会①

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 演目が始まる前の時間は社交場だ。お付き合いのある家同士の挨拶や、当たり障りのない近況報告などが交わされる。……暇だなぁ。基本的にお話をするのは、大雅くんと立花さんとお姉ちゃん、失礼のないように欠伸だけはしないようにしておく。

「一条公爵、大変ご無沙汰をしております。先日の事件は大変でしたな、その後はいかがですか?」

 退屈がピークに達した時、聞きなれた声がした。顔を上げると見知った顔と目があった。

「やぁ。白川のお嬢さん、お元気かな?」

「……元気!っていうか、白川のお嬢さんって!もぅ、そんな畏まってぇー」


「一条家のメイドさんを、軽々しく呼ぶのはいかがなものかなぁってね」

 2人で顔を見合わせてケラケラ笑う。元気そうで良かった!聞きたいことはいろいろあったけど、ご挨拶の時間はとても短いのでそんな言葉を交わして終わった。

「柚子ちゃん、さっきの人誰?知り合いなん?」

 ヒソヒソ声で光くんに話しかけられる。

「うん!柚子の修行先のご当主様だよ」

「え?……柚子ちゃんの修行先って、五十嵐家やんな?じゃあ、あの人が五十嵐公爵?」

「そうだよー!元気そうで良かった。あ、莉子ちゃまが元気か聞くの忘れちゃった!」

「いやいやいや!柚子ちゃん、偉い人にあんなフランクでえぇんか?」

「えー。いつもあんな感じだよ」

 ありえない!と言った顔で光くんが私を見ていた。……ドレス姿を褒めて貰った後、そうして欲しかったはずなのに、なんだか照れくさくて、私たちの間にはいつもと違う雰囲気が流れていた。でも、五十嵐家のご当主、理人様のお陰でいつもの空気に戻った。

「2人ともお手洗いとか大丈夫?そろそろ始まる時間だけど」

 隣に座る立花さんが時計を見ながら問いかけてくれた、時刻は17時を差そうとしている。

「大丈夫です」

「柚子も!」

 席に着いてまっすぐ舞台を見つめる。幕が上がる前に国王陛下からの挨拶があって、陛下たち王族の方が着席されてから舞台は始まった。
 私の前の席は第二王子ーーまだ幼いので身長は高くない。とても見やすい席だ。


『貴女の国を守り、貴女の想いに応え、貴女の元へ帰還します。この薔薇に誓って』

 その台詞から始まった物語を私は知っていた。それは、学生時代に見た観劇の中で唯一面白くてまた見たいなと思っていたそのものだったから。

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