57 / 72
7
55.やればできるもん!
しおりを挟む「えー。お姉ちゃん今夜いないのー?」
2月に入って寒さは深まったようマシになったようなそうでもないような……少しだけ日没が遅くなったある日の夕方、私はキッチンでお姉ちゃんに文句を言っていた。
「何日も前から伝えていたでしょう。王宮で次年度に向けての使用人調整会議があるのよ」
今夜、お姉ちゃんと大雅くんと立花さんは王宮に行く。各々の家の使用人状況の確認と、執事学校やメイド学校を卒業した優秀な人材を各家に振り分ける会議らしい。
夕食に必要な食器を戸棚から取り出しながらお姉ちゃんは続ける。
「夕食は前の料理長さんのレストランから届けて貰うようにお願いしてあるわ。……これは光くんの分ね。修斗くんに、温めて持っていって貰えばいいわ」
テーブルの上にあったお鍋を冷蔵庫に入れていた。光くんは2、3日前から体調を崩している。どうやら寒さは苦手のようで、風邪を拗らせたらしい。
「はぁい」
適当に返事をしてキッチンを出る。お屋敷に戻ってきてから、お姉ちゃんのいない夜は初めてだ。
「……食事前につまみ食いは、メイドの行いとしてどうかと思うぞ」
「あっ!バレたっ!門番さんか、セーフ!」
夕食のテーブルセッティング中、ダイニングに門番さんが現れた。修斗くんや育だとチクチク嫌味を言われるから、まぁ門番さんで良かった!
「……クッキーだよ!食べる?」
「共犯にさせるつもりか。……告げ口をするつもりはないから仕舞え」
「うん!」
他の人にバレたら面倒だと思って、口の中に片付ける。
「ほれで?……なのっ?んっ!」
「食べ終わってから話せ」
ごくっと飲み込んでから門番さんを見る。急ぎの用事じゃないなら、味わって食べたかったなぁ、限定の味のクッキーだったのに。
「……はぁ。味わいたいなら今食うな」
「あっ!声に出ちゃってた??うふふー。そうだ!門番さんご用事なぁに?」
「今日はこれで。就業時間の挨拶だ」
いつもはお姉ちゃんにするけど、今日は不在だ。え?待って!つまり、私は今日メイド長代理ってこと??何かちょっと嬉しいな。……お姉ちゃんは確か、いつもーー。
「はい。お疲れ様でした、お気をつけて」
キョトンとした顔で、こちらを見つめる門番さんと目が合った。何か変だったかな?
「……驚いたな。キチンとしていれば、メイド長そっくりだ」
「えっ?お姉ちゃんに似てる?うふふー!嬉しいっ」
何か失礼な発言があった気もするけど、褒められたから良しとしよう。丁度仕事も一区切りついたし、玄関まで門番さんをお見送りする。
「……今夜は、ご当主様も執事長もメイド長もいない。大半の貴族屋敷は同じ状況だがな。戸締まりはしっかりしろ、いいな」
「はぁい」
あーもぅ!耳にタコが出来ちゃう!戸締まりについては門番さんより前に、お姉ちゃんと立花さんからとんでもない回数聞いた。門番さんは、あの事件がまだ解決していないことを心配してくれているーー帰り際に何度も振り返ったその姿から痛いほど伝わってきた。
0
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる