ようこそ、一条家へ

如月はづき

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59.永い夜④ side風見育

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 ーー夜か。目を覚ますとカーテンの向こうはまだ暗く、顔に感じる冷気が深夜だと告げている。深夜に起きることは多々あるけれど、なぜだろうーー胸騒ぎがする……。今までに経験したことの無い、何かが起こっているそんな気がした。
 はぁ……と呟いた小さなため息は、暗闇に吸い込まれる。何がそんなに気になるのだろうか、寝たまま部屋の外に意識を集中させるけれど、修斗くんも深雪さんも特に動き出している様子はない。僕の部屋は1階の1番階段に近い部屋だけれど、誰かが昇降している様子もない。
 お屋敷が襲撃されたこともあったけど、あの事件の犯人は捕まったし、また新たな何かか?……って馬鹿馬鹿しい。これじゃ小さなことを大きく騒ぎ立てる柚子と同じ思考じゃないか。さっさと寝よう。
 ふーっと息を吐いて目を閉じる。……眠れない、頭の中で羊を数えてみた。けれど、途中から柚子の顔になってきた。余計に眠れないーー最悪だ。水でも飲みに行こう。

 キッチンへ向かおうと部屋を出たのに、どうも2階が気になる。玄関を見れば入り口の明かりが点いたままになっているーーご当主様達はまだ帰っていない、ということは2階には柚子と望月だけだ。あの2人ーー特に柚子なら外部からの侵入者に対して大声をあげるだろうし、また2人でスパイごっこだか、探偵ごっこだかで、はしゃいでいるのかもしれない。何故僕はこんなに気掛かりになっているんだろう。やっぱり早く寝よう。
 バタンっ!と扉が開く大きな音がした。一条家はその家柄の通り歴史の長い家だ。建物の建て付けは良いとも悪いとも言えないが、普段の生活であんなに大きな音を立てて開閉することはない。やっぱり2階で何かあるのか。……行ってみて何もなれけばそれでいいか。そう考えて階段を登っていくと、僕の目に驚くべき光景が映った。

「ーーなんでっ?」

 涙声で部屋から飛び出してきたような姿の柚子と、その柚子に向かってナイフを突きつけようとしている望月。
 大声を出して助けを呼んだところで、望月が柚子を刺そうとしているなら間に合わない。まさか屋敷内の人間がそんな事をするなんて思わないから、護身用の剣を持ってきてもいない。柚子を人質に何かを脅すつもりなら、人の少ない今日という日に行動を起こさなくてもいいだろう。
 一瞬の間にいろいろが頭を巡った。とにかく柚子を助けないと。
 柚子の近くにいかないとーー。駆け出した時、僕はまたいろんな事を考えていた。
 どうしてこんな状況になったんだろう。何故、望月は柚子を?ナイフを持ち出すなんて普通ではあり得ない事だ。僕が知る限り、望月はきちんと言葉で伝えられる人間だ武力に頼る事なんてよっぽどの事態だ。
 間に合わない……僕が追いつくより早く望月は柚子の手を掴んだ。
 どうしてこうなった?柚子と望月はーーお互い想い合っているはずなのにーー。

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