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episode 3
乱される心
重い足取りでエレベーターに行きボタンを押して到着を待つ。
「今まで会長や社長とは仕事してきたから、谷脇さんとも面識あったし挨拶なんかも交してたけど、あんな感じの人だとは……。想像の斜め上をいってたよ。橘さん、大丈夫だった?」
私を気遣って申し訳なさそうにそう言うけれど、谷脇さんがクライアントである以上、機嫌を損ねることも強気で拒否することも出来はしない。
どんなに不快感があっても、ノーと言えないのが辛いところだ。
「まぁ……気持ちのいいものではないですよね」
握られた手や抱かれた肩の感触を思い出すと、身震いしてしまう。
「何も出来なくてごめん」
私から顔を逸らして、藤瀬くんは低い声でそう呟いた。
立場上仕方のないことなのに、本当に申し訳ないと思ってくれていることが伝わってくる。
「次の打ち合わせからは俺一人で行くから」
「え?」
エレベーターの扉が開き、大きな口を開けて私達を招き入れるので、会話が途切れてしまう。
下降する箱の中は、モーター音しかしない。
一階につきエントランスをぬけてマンションを出ると、藤瀬くんはようやく私と目を合わせた。
「今日撮った写真と詳細、次回のコンセプトとプランをまとめて俺のPCに送っておいてくれ」
「わかりました。でも、次も私は同行します」
「いや、それは……」
「私は藤瀬さんのアシスタントでしょう?」
助けてもらうために、守ってもらうためにいるんじゃない。
藤瀬くんと一緒に仕事をするためにいるんだ。
「……そうだよな。橘さんはいつでも、俺の隣にいてもらわないとな」
ぎこちなく笑った藤瀬くんに、私は昔のように素直な笑みを見せた。
「今まで会長や社長とは仕事してきたから、谷脇さんとも面識あったし挨拶なんかも交してたけど、あんな感じの人だとは……。想像の斜め上をいってたよ。橘さん、大丈夫だった?」
私を気遣って申し訳なさそうにそう言うけれど、谷脇さんがクライアントである以上、機嫌を損ねることも強気で拒否することも出来はしない。
どんなに不快感があっても、ノーと言えないのが辛いところだ。
「まぁ……気持ちのいいものではないですよね」
握られた手や抱かれた肩の感触を思い出すと、身震いしてしまう。
「何も出来なくてごめん」
私から顔を逸らして、藤瀬くんは低い声でそう呟いた。
立場上仕方のないことなのに、本当に申し訳ないと思ってくれていることが伝わってくる。
「次の打ち合わせからは俺一人で行くから」
「え?」
エレベーターの扉が開き、大きな口を開けて私達を招き入れるので、会話が途切れてしまう。
下降する箱の中は、モーター音しかしない。
一階につきエントランスをぬけてマンションを出ると、藤瀬くんはようやく私と目を合わせた。
「今日撮った写真と詳細、次回のコンセプトとプランをまとめて俺のPCに送っておいてくれ」
「わかりました。でも、次も私は同行します」
「いや、それは……」
「私は藤瀬さんのアシスタントでしょう?」
助けてもらうために、守ってもらうためにいるんじゃない。
藤瀬くんと一緒に仕事をするためにいるんだ。
「……そうだよな。橘さんはいつでも、俺の隣にいてもらわないとな」
ぎこちなく笑った藤瀬くんに、私は昔のように素直な笑みを見せた。
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