Perverse second

伊吹美香

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episode 3

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「なんでお前みたいなアホが高嶺の花なんだろうな。不思議で仕方ねぇ」



「なぜなんでしょう…?」



間延びした問に。



「知らねぇよ」



俺は呆れたようにそう言うと、三崎は口元だけを上げて少しだけ笑ったように見えた。



他のやつの前では高嶺の花でも、俺にだけはこうやって間の抜けたところの一つでも見せてくれるのを嬉しく感じる。



バカだなぁなんて、他のやつが絶対に言わないような言葉で笑いたい。



今まで三崎ができなかった顔を、俺には見せてくれるのことが特権のようで。



ついつい虐めたくなってしまうのだ。



「柴垣くんとこうやって一緒にいるなんて不思議。柴垣くんってなんだか、よくかわからない人なんだもの」



そうだろうな。



俺だって自分で自分がわからないんだから。



感情が全くコントロールできねぇから、ついつい暴走することだって稀じゃない。



自分でも持て余している感情を、三崎がわかるはずはないのだけれど。



本当はもっと単純なんだ。



わけわからない俺の想いは一つ。



三崎結菜が好きだ。



ただそれだけ。



「俺は簡単な男だよ。お前が勝手に難しくしてるだけ」



俺もお前もいろんなことを考えすぎるから。



勝手に複雑な人間にしてしまってるだけだ。



感情に任せるのではなく、もう少しストレートに行動してもいい時期に来たのかもしれない。
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