呪い呪われ恋焦がれ

すぅこ

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対決

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  周りでは、仲間が魔物と戦っている筈なのに、
シャドウとグレドジャーノ伯爵のいる場所は静まりかえっている。
それは、二人が集中し、緊迫しているから、そう感じるのだろう。

彼らには、お互いから目を反らす余裕など無いのだ。

グレドジャーノもかなりの腕前なのだろう、隙がない。

グレドジャーノが士官学校や、剣を習っていたという話は聞いた事がなかった。
ならば、独学なのか。それにしては、うますぎる。
剣を交えながらシャドウは思った。

辺境に飛ばされた一族だとしても、王家の血筋だ、何かあれば噂になる。
それが、最近まで、紅の魔女が出てくるまで何も伯爵の噂は無かったのだ。

「なかなかやるな。誰に教わったのだ?」

その問いに、何も隠す事なく答える。
「自分で覚えたのだよ。
初めは死のうと思ったのさ。
七つくらいの頃だったかな、魔物がいる森に入れば死ねると思った。だが、死ねなかった。
何故だかわかるかい?
結局、死ぬのが怖くなったのさ。
必死で腰の剣で魔物と戦った。戦って、戦って、生き残った。森から家に帰ったのは三カ月も後さ。
しかも、ボロボロの私を見るまで、誰も、私がいない事にも気づいてなかった。
馬鹿すぎる話だろう。」と悲しげに笑う。

ああ、そうか。『愛』を知らないと彼は話していたとヒスイは言っていた。
辺境の地に追いやられた祖母、父親に拒絶された父親。絶望下大人に育てられ、友人も無く、一人で生きてきたのだ。

「生きるには強くなければならないのだよ。」

なんと、哀れなのだろう。誰にも心を許さず、また許させる相手に出会えなかったのだ。辺境の地を出る事も出来なかった。

しかし、今、こうやって出る決心がついたのは、翡翠の魔女への興味と、外への憧れだろう。

これもまた、ブリーチの言う『運命』なのだろう。

「強い相手は久しぶりだ。敵でなければ、どんなに楽しいか。」とシャドウは言った。

キンキーンと剣が重なる音がする。

「フッ、剣は生きるか死ぬかだ。」伯爵は鼻で笑う。

「お前は、愛する者のために死ねるか?」と今度は伯爵が聞いてきた。

「愛する者のために、死なない。」シャドウははっきり答えた。

「ならば、彼女が死を望んだら?」

「私は死なせはしない。死んでしまえば愛す事も愛される事もできないのだから。」

「一緒に死ぬのも愛ではないのか?」

「私にはその選択肢はない。」シャドウは言い切った。

その直後に、シャドウの剣がグレドジャーノ伯爵の脇をかする。

「つっっ、さすがだな。」

お互いに、かすり傷が増えていく。

魔物を倒し続け、グレドジャーノ伯爵の相手までし、シャドウの体力は消耗していた。

伯爵の攻撃をかわした時、バランスを崩した。
ここぞとばかり、鋭い一撃が今、シャドウに振り落とされようとしていた。

「最後だ。」と。


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