29 / 33
過去より
しおりを挟む
グレドジャーノ伯爵がシャドウに剣を振り落とそうとした時。
ブリーチによって生み出された次元の口から、ヒスイが現れ、剣の動きが魔法で止められる。
「お待たせ致しました。グレーもお久しぶりです。」とヒスイは落ち着いて話す。
「400年前に飛ばされて、悪い魔女と魔物を片付けて参りましたので、少々時間がかかってしまいました。」と。
見れば、顔に体に沢山のキズがあった。
ヒスイもシャドウ同様に、ずっと戦い、戻って来たのだ。
『無事で良かった。』お互いに頷きあう。
二人は唖然とする。
「この一時間足らずで、魔物と魔女を一掃して帰ってきたのか。」と、これにはグレドジャーノ伯爵も笑う。
「だって、愛する人との約束ですから。待っててと約束しましたから。」
愛する人と交わした約束は、生きるための力になる。
ヒスイは感じた。
「グレドジャーノ伯爵よ。街を襲った魔物も全て倒した。紅の魔女も滅んだ。
貴方はどうする?」シーネルト王子が声を挙げた。
威厳のある声は、先程まで聞いていた先祖アズベルト国王に似ていた。
騎士達も魔物を倒し終え、集まってきている。
正直、グレドジャーノ伯爵一人では、もうどうにもならないであろう。
グレドジャーノ伯爵は負けたのだ。
いや、本当はグレドジャーノはわかっていた。
無謀な戦いだと。
勝ち負けなど関係無かった。
愚かだが、ただ国に復讐を…というより、少しばかり混乱させれば満足だった。
辺境の地にいる自分の存在をわかってくれれば。
ずっと呪っていた。
自分を。
何故、こんな場所で、情けない親に生まれ、何の機会も与えられずに、年月ばかり過ぎ…、歳を取らなければいけないのだろうと。
『愛』に飢え、『愛』を求めても与えられず、『愛』する者も、モノも無い、虚しい自分を誰か助けてほしいと。
助けないのであれば、叶う事が出来なかった『死』を与えてほしいと。
「翡翠の魔女よ。私は最初から賭けるモノなど無いのだよ。だから賭けは成立していない。
君達の『愛』を認めたく無かっただけ。
ずっと心の中で求めていた。
『愛』は、私の夢だ。愛されたいという願いだ。
負けはわかっていた。
認めよう。貴女の愛は本物だよ。
王子よ。呪われた私を、処分してくれるだろう?」
笑ってはいるが、なんて苦しそうに話すのだろう。
「亡き祖父がしたことは、私も人として恥ずべき事だと思っている。そして、噂で聞いていたが、何もしなかった私達王族もまた同罪だ。すまない。
私としては、グレドジャーノ伯爵は特に手を出していないと判断した。煽ったかもしれないが、紅の魔女が事件を起こしたと思っている。事件が大きくなりすぎて、出て来たってところだろう?」シーネルト王子は結論づけた。
「えらく、甘ちゃんな王子様だな。
いや、私は責任をとりたいのだよ。殺した方が、これから先、国も安心じゃないのかい?」王子の言葉に苦笑いだ。
「殺さないのなら、どうするんだい?このまま、辺境の地でまた反省しろと?馬鹿らしい。」苛立つ。
「すぐには自由にはなれない。しばらく拘束され罰せられるとは思う。
だが、貴方を憎めない。それほど悪い奴ではないと感じている。もう少し勉強をして、私の側で働いてもらえないだろうか?
ヒスイもそう思うだろう?シャドウは?」
「「ええ。」」ヒスイとシャドウは返事をした。
これは、優しさ。
優しさも『愛』だと思う。
こんな私を、仲間にするというのか。
暖かいな。
「フッ……それでは、私も翡翠の魔女の争奪戦に加わるとするか。」
グレドジャーノ伯爵は鼻で笑い、小声で冗談を呟いた。
「「「なにぃ!?」」」シャドウ、オルティニス、ノイの声は響いた。
ブリーチによって生み出された次元の口から、ヒスイが現れ、剣の動きが魔法で止められる。
「お待たせ致しました。グレーもお久しぶりです。」とヒスイは落ち着いて話す。
「400年前に飛ばされて、悪い魔女と魔物を片付けて参りましたので、少々時間がかかってしまいました。」と。
見れば、顔に体に沢山のキズがあった。
ヒスイもシャドウ同様に、ずっと戦い、戻って来たのだ。
『無事で良かった。』お互いに頷きあう。
二人は唖然とする。
「この一時間足らずで、魔物と魔女を一掃して帰ってきたのか。」と、これにはグレドジャーノ伯爵も笑う。
「だって、愛する人との約束ですから。待っててと約束しましたから。」
愛する人と交わした約束は、生きるための力になる。
ヒスイは感じた。
「グレドジャーノ伯爵よ。街を襲った魔物も全て倒した。紅の魔女も滅んだ。
貴方はどうする?」シーネルト王子が声を挙げた。
威厳のある声は、先程まで聞いていた先祖アズベルト国王に似ていた。
騎士達も魔物を倒し終え、集まってきている。
正直、グレドジャーノ伯爵一人では、もうどうにもならないであろう。
グレドジャーノ伯爵は負けたのだ。
いや、本当はグレドジャーノはわかっていた。
無謀な戦いだと。
勝ち負けなど関係無かった。
愚かだが、ただ国に復讐を…というより、少しばかり混乱させれば満足だった。
辺境の地にいる自分の存在をわかってくれれば。
ずっと呪っていた。
自分を。
何故、こんな場所で、情けない親に生まれ、何の機会も与えられずに、年月ばかり過ぎ…、歳を取らなければいけないのだろうと。
『愛』に飢え、『愛』を求めても与えられず、『愛』する者も、モノも無い、虚しい自分を誰か助けてほしいと。
助けないのであれば、叶う事が出来なかった『死』を与えてほしいと。
「翡翠の魔女よ。私は最初から賭けるモノなど無いのだよ。だから賭けは成立していない。
君達の『愛』を認めたく無かっただけ。
ずっと心の中で求めていた。
『愛』は、私の夢だ。愛されたいという願いだ。
負けはわかっていた。
認めよう。貴女の愛は本物だよ。
王子よ。呪われた私を、処分してくれるだろう?」
笑ってはいるが、なんて苦しそうに話すのだろう。
「亡き祖父がしたことは、私も人として恥ずべき事だと思っている。そして、噂で聞いていたが、何もしなかった私達王族もまた同罪だ。すまない。
私としては、グレドジャーノ伯爵は特に手を出していないと判断した。煽ったかもしれないが、紅の魔女が事件を起こしたと思っている。事件が大きくなりすぎて、出て来たってところだろう?」シーネルト王子は結論づけた。
「えらく、甘ちゃんな王子様だな。
いや、私は責任をとりたいのだよ。殺した方が、これから先、国も安心じゃないのかい?」王子の言葉に苦笑いだ。
「殺さないのなら、どうするんだい?このまま、辺境の地でまた反省しろと?馬鹿らしい。」苛立つ。
「すぐには自由にはなれない。しばらく拘束され罰せられるとは思う。
だが、貴方を憎めない。それほど悪い奴ではないと感じている。もう少し勉強をして、私の側で働いてもらえないだろうか?
ヒスイもそう思うだろう?シャドウは?」
「「ええ。」」ヒスイとシャドウは返事をした。
これは、優しさ。
優しさも『愛』だと思う。
こんな私を、仲間にするというのか。
暖かいな。
「フッ……それでは、私も翡翠の魔女の争奪戦に加わるとするか。」
グレドジャーノ伯爵は鼻で笑い、小声で冗談を呟いた。
「「「なにぃ!?」」」シャドウ、オルティニス、ノイの声は響いた。
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる