その日、女の子になった私。

奈津輝としか

文字の大きさ
56 / 375
【第4部〜西洋の神々編〜】

第8章 須弥山の攻防②

しおりを挟む
 青龍が飛び去る背を見届けると、私達は進軍した。二郎神君や哪吒三太子、毘沙門天に阿修羅王、ラーヴァナがいつ襲って来るか分からないと、皆に伝えて気を引き締めさせた。
 間も無く須弥山の麓に着く。すると、1人の美少年が突っ立っていた。
「お兄さん、道を譲って下さいな」
私がそう言うと、路肩に寄りながら話しかけて来た。
「お姉さん、ここから先には進めませんよ」
「どうして?」
「それは、私が先に行かせないからです」
殺気は全く感じられない。異質な存在に、むしろ恐怖を感じた。
「何だ?小僧。そこを退け!」
気の短いビゼルが、軽く小突こうとした。その少年は、緩やかな動作で、まるで手で払い除ける様な仕草を見せると、ビゼルは吹き飛んで地面に叩き付けられた。
「!?合気道かな?」
私が口をつくと。
「いいえ、違いますよ。どうか引き返しては頂けませんか?私も争い事は好きでは無いのです」
「貴方のお名前は?あぁ、先に名乗らないと失礼ですよね?私は、神崎瑞稀です。虞美人の生まれ変わりで、今は魔界の女帝をしています」
「ふふふ、丁寧な方ですね。貴女とは戦いたく無い。どうかこのまま引き返して下さい。私の名前は、釈迦と言います」
「釈迦!?全ループでは会って無いけど」
「陛下、ここはひとまず引き返しましょう」
ロードが私の側に来て囁いた。
「何を弱気な、お前らしくも無い!」
起き上がったビゼルが、槍を構えて戦闘態勢に入っていた。
「お前には見えないだろうがな?釈迦のランクはSSSSSSSだ。セブンスターだよ。誰も勝てんよ。こいつが本気なら、ここで全滅している。陛下のお陰で、私達は生かされたんだよ。退くぞ!」
ロードが馬の踵を返すと、ロードの配下は引き返し始めた。ルシエラがそれに続いた為、他の者達も引き返し始めた。
「阿呆どもがぁ!」
そう言って向かって行ったのは、阿籍だった。牙戟を頭上で振り回すと、そのまま釈迦に向かって振り下ろした。しかし、釈迦の身体が光を帯びると、擦り傷を負わす事も出来ずに肩で受け止められた。私は咄嗟に、阿籍を庇う様に釈迦との間に割り込んだ。
「阿籍は私の夫なの。ごめんなさい。無礼を許して下さい」
そう言うと、釈迦の身体を包んでいた光が消えた。私も阿籍も背中に汗をかいていた。
「阿弥陀如来様に頼まれましてね。貴女達、魔族をここから先に通さないで欲しいと。貴女に免じて一度は許します。次はありませんよ」
阿籍も引き返すほか無かった。
「何なんだ、あいつは?」
「知らないの?ガウタマ・シッダールタ。仏教の悟りを開いた人で、釈迦如来様よ」
「あんな奴に様など付けるな!」
珍しく阿籍は不機嫌で、私に八つ当たりして来た。
「もぅ!私に当たらないでよ」
阿籍はファイブスターだ。セブンスターなら、あのアダムと同じだ。それなら絶対に勝てはしないだろう。
「それにしても…東洋天界にも居たんだ。セブンスターが…。なら何で全ループにはいなかったんだろう?」
私達は引き返すと言いながら、途中で野営した。
「まさかセブンスターがいるとは」
「そんなに強いのか?」
「当たり前だ。我ら魔王10人がかりで項羽に勝てなかった。釈迦は、項羽が10人居ても勝てない相手だ」
「そんなに強そうには見えなかったが…」
「だろうな。武勇ではなく、神通力は比べものにならない」
皆、頭を悩ました。釈迦をどうにかしなければ先に進む事が出来ない。これならまだ、毘沙門天や阿修羅王達が束になって攻めて来た方がマシだった。
 考えても解決せず、今日の所は皆、休む事にした。明日、話し合いをしてみようか?ダメ元で。話は聞いてくれそうな相手だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...