75 / 375
【第4部〜西洋の神々編〜】
第9章 西洋の神々11
しおりを挟む
私は西洋天帝・アダムの皇后となる事が正式に発表された。前ループでは先に皇太后になってからの皇后だったっけ。それにお后候補達から虐められたっけ。今ループはそれがないな。良かった、良かった。
既に皇后が内定している私は、西洋天界では絶大な権力を有していた。後宮、日本で言う所の大奥の世界では、私がトップだ。正室である皇后が決まったので、他のお后候補達は、側室狙いで争っている。側室のトップは「貴妃」で、次いで「淑妃」、「徳妃」、「賢妃」と続く。これら側室は正一品で四夫人と呼ばれた。この枠に入れるのは、後ろ盾が強大な権力を持つ貴族だけだ。中には有名な唐の楊貴妃の様に、身分の低い舞姫だが、美しさだけでなく、舞や琴、書画の才に長け、頭の回転も早くて玄宗皇帝を虜にして、その座を得た者もいる。ちなみに美しさだけなら、同時代では玄宗の孫の李俶(後に李豫と改名)に嫁いだ幻の皇后・沈珍珠の方が、楊貴妃よりも遥かに美しかった。幻の皇后と呼ばれる理由は、李俶がまだ皇太子(公平王)の身分である時に、安史の乱を平定したが、その戦の最中に消息不明となってしまったからだ。王妃であった為、当然ながら李俶が皇帝になれば皇后になるはずであった。しかし行方不明の為に、李俶は愛する妻を探し続け、沈珍珠しか皇后にはしないと明言し、在位中の皇后位は空位にされて皇后がいなかった。やがて李俶が亡くなり、徳宗が皇帝になると、母の沈珍珠に皇太后位を追賜した。生きていれば皇太后だからだ。しかし、沈珍珠は皇后位を得ておらず、皇后位を追賜されるのは徳宗が亡くなり、沈珍珠の孫にあたる順宗が即位すると、祖母に睿真皇后位を追賜した。
「虞帝(ユー・ディ)様、お召し物をお持ち致しました」
私は生活魔法の『衣装替(チェンジ)』で好きな服が着られるので、必要ないのだが、拒むと彼女達の仕事がなくなり、仕事を奪う事になる。なので、侍女達に身の回りの世話をお願いしていた。当然、服を着替えるのも彼女達が付きっきりで行う。
ちなみに虞帝(ユー・ディ)と呼ばれているのは、私はまだ皇后に即位していないし、魔界の女帝である為に、官位に名前を付けて呼ばれているのだ。初めは侍女達は私を恐れて震えていた。なにせ、魔界の女帝だから。どんなに怖い女性だろう?何で闇の皇帝なんかを皇后にするのだろう?と思われていた。私が全く警戒するには当たらないと思われるまでには、時間がかからなかった。だって自分で言うのも何だけど、私には威厳なんて無いし、怖くも何とも無い。彼女達を冷たくあしらったり、虐めたり、無茶な注文をしたりもしない。結構良い上司だと思う。
皇后を含めた妃嬪達は、自分の意思で後宮からは出る事が許されない。皇帝のお供として祭りの日に民の前に姿を現したり、狩りのお供として城から出る事が出来たりする事もあるが、基本的にはそんな事でも無い限り出る事が許されない。全く自由が許されない世界で生きる事になる代わりに、何不自由しない生活を送る。庶民が一生かかっても買う事が出来ないほど高級な菓子も、好きなだけ食べる事が出来た。食事は朝餉(朝食)と夕餉(夕食)だけなので、お昼にお腹が空くと、お菓子を食べて過ごしていた。
侍女も自分の主に付きっきりで自由など無いが、主の身分によって身嗜みを整える必要がある為、高級な衣装に袖を通して綺麗に着飾る事が出来、主の残りのお菓子も食べる事が許された。主の身分が高ければ高いほど侍女達の権力も増していき、主に口利きする見返りとして、賄賂も懐に入る為に生活は裕福だった。
侍女達は奴婢と呼ばれ、奴婢は日本では奴隷と訳されるが、想像している奴隷とはかけ離れている。どちらかと言うと、より自由が無く、家政婦の仕事までする付き人かマネージャーと言った所だ。
侍女達に着替えさせられると、朝餉の準備をしてアダムが来るのを待っていた。天帝であるアダムと一緒に朝食を摂るので、来るまでじっと待っている。今はまだ妻が私しかいないから良いが、側室を迎えると、側室と朝食を摂って私の所に来ないかも知れない。そうなると、寂しく侍女達と共に朝食を食べる事になるのだ。勿論、来ない場合は報告が入る。後宮では、自分の生んだ子が次の後継になれば、自分は安泰となる為、抱きに来てもらう為に、知略の限りを尽くす。他の女を抱きに行かせない為に、あの手この手を尽くすのだ。その為、相手を陥れたり、先に妊娠されれば毒を仕込んで暗殺するか、あわよくば流産を狙う。後宮は陰謀が渦巻く、ドス黒い女達の戦場だ。少しでも隙を見せれば、命取りとなるのだ。
「虞帝様、申し訳ございません。アダム様は多忙の為、いらっしゃいません」
「ありがとう」と一言伝えると、私は侍女達と一緒に朝食を食べた。規則では、主が食べ終わるのを待ってから、ようやく食べる事が許されるみたいだが、「そんなの良いから一緒に食べよう」と言って食べる様になった。
侍女達とも少し仲良くなり、身の上話を聞くと、2人とも戦争孤児で、親とは早くに死に別れ、拾われた育ての親にまだ幼いうちに、売られてここに来たと聞いた。
「ご両親に会いたい?」
「会いたいですが、もう顔も覚えてない小さな頃の事ですので」と悲しそうな顔をされた。戦争なんて無くなれば良いのに。悲劇しか生まれない。
食事が終わって侍女が片付けている間、窓を開けて外を見ると、あのフードのイケメンがいた。2人っきりで話がしたいと言っていたな?まさか愛の告白では無いだろう?私はもう人妻になるのだし。とか思って彼を眺めていると、目が合って手を振られた。私も手を振り返すと、今度は手招きをされた。
「えっ?どうしよう。行くべきか、行かざるべきか」
後宮で男と2人で会っていたなんて知られたら、タダでは済まされない。皇后の内定は取り消されるかも知れないが、そんな事は別に良い。最悪なのは、関係の無い侍女達がとばっちりを受けて、世話を怠ったとして処刑される可能性だ。自分の過ちで侍女を死なせたりしたら目覚めが悪い。身分の高い者を反省させる為に、よく使われた手でもあるから、十分に有り得る。私は手を横に振って、「行けない!」とアピールした。フードのイケメンは、手を振るのを止めて去って行った。重要な話なんだろうとは思う。もしかすると、東洋天界の遣いかも知れない。私をここから連れ出す算段をしているのかも知れない。でも私は前ループとほぼ同じ所まで来たのだ。ここで東洋天界に戻るとか、後戻りを選択したく無い。だけど、話だけは聞いてみようか?イケメンだし。と思い悩んでいた。
既に皇后が内定している私は、西洋天界では絶大な権力を有していた。後宮、日本で言う所の大奥の世界では、私がトップだ。正室である皇后が決まったので、他のお后候補達は、側室狙いで争っている。側室のトップは「貴妃」で、次いで「淑妃」、「徳妃」、「賢妃」と続く。これら側室は正一品で四夫人と呼ばれた。この枠に入れるのは、後ろ盾が強大な権力を持つ貴族だけだ。中には有名な唐の楊貴妃の様に、身分の低い舞姫だが、美しさだけでなく、舞や琴、書画の才に長け、頭の回転も早くて玄宗皇帝を虜にして、その座を得た者もいる。ちなみに美しさだけなら、同時代では玄宗の孫の李俶(後に李豫と改名)に嫁いだ幻の皇后・沈珍珠の方が、楊貴妃よりも遥かに美しかった。幻の皇后と呼ばれる理由は、李俶がまだ皇太子(公平王)の身分である時に、安史の乱を平定したが、その戦の最中に消息不明となってしまったからだ。王妃であった為、当然ながら李俶が皇帝になれば皇后になるはずであった。しかし行方不明の為に、李俶は愛する妻を探し続け、沈珍珠しか皇后にはしないと明言し、在位中の皇后位は空位にされて皇后がいなかった。やがて李俶が亡くなり、徳宗が皇帝になると、母の沈珍珠に皇太后位を追賜した。生きていれば皇太后だからだ。しかし、沈珍珠は皇后位を得ておらず、皇后位を追賜されるのは徳宗が亡くなり、沈珍珠の孫にあたる順宗が即位すると、祖母に睿真皇后位を追賜した。
「虞帝(ユー・ディ)様、お召し物をお持ち致しました」
私は生活魔法の『衣装替(チェンジ)』で好きな服が着られるので、必要ないのだが、拒むと彼女達の仕事がなくなり、仕事を奪う事になる。なので、侍女達に身の回りの世話をお願いしていた。当然、服を着替えるのも彼女達が付きっきりで行う。
ちなみに虞帝(ユー・ディ)と呼ばれているのは、私はまだ皇后に即位していないし、魔界の女帝である為に、官位に名前を付けて呼ばれているのだ。初めは侍女達は私を恐れて震えていた。なにせ、魔界の女帝だから。どんなに怖い女性だろう?何で闇の皇帝なんかを皇后にするのだろう?と思われていた。私が全く警戒するには当たらないと思われるまでには、時間がかからなかった。だって自分で言うのも何だけど、私には威厳なんて無いし、怖くも何とも無い。彼女達を冷たくあしらったり、虐めたり、無茶な注文をしたりもしない。結構良い上司だと思う。
皇后を含めた妃嬪達は、自分の意思で後宮からは出る事が許されない。皇帝のお供として祭りの日に民の前に姿を現したり、狩りのお供として城から出る事が出来たりする事もあるが、基本的にはそんな事でも無い限り出る事が許されない。全く自由が許されない世界で生きる事になる代わりに、何不自由しない生活を送る。庶民が一生かかっても買う事が出来ないほど高級な菓子も、好きなだけ食べる事が出来た。食事は朝餉(朝食)と夕餉(夕食)だけなので、お昼にお腹が空くと、お菓子を食べて過ごしていた。
侍女も自分の主に付きっきりで自由など無いが、主の身分によって身嗜みを整える必要がある為、高級な衣装に袖を通して綺麗に着飾る事が出来、主の残りのお菓子も食べる事が許された。主の身分が高ければ高いほど侍女達の権力も増していき、主に口利きする見返りとして、賄賂も懐に入る為に生活は裕福だった。
侍女達は奴婢と呼ばれ、奴婢は日本では奴隷と訳されるが、想像している奴隷とはかけ離れている。どちらかと言うと、より自由が無く、家政婦の仕事までする付き人かマネージャーと言った所だ。
侍女達に着替えさせられると、朝餉の準備をしてアダムが来るのを待っていた。天帝であるアダムと一緒に朝食を摂るので、来るまでじっと待っている。今はまだ妻が私しかいないから良いが、側室を迎えると、側室と朝食を摂って私の所に来ないかも知れない。そうなると、寂しく侍女達と共に朝食を食べる事になるのだ。勿論、来ない場合は報告が入る。後宮では、自分の生んだ子が次の後継になれば、自分は安泰となる為、抱きに来てもらう為に、知略の限りを尽くす。他の女を抱きに行かせない為に、あの手この手を尽くすのだ。その為、相手を陥れたり、先に妊娠されれば毒を仕込んで暗殺するか、あわよくば流産を狙う。後宮は陰謀が渦巻く、ドス黒い女達の戦場だ。少しでも隙を見せれば、命取りとなるのだ。
「虞帝様、申し訳ございません。アダム様は多忙の為、いらっしゃいません」
「ありがとう」と一言伝えると、私は侍女達と一緒に朝食を食べた。規則では、主が食べ終わるのを待ってから、ようやく食べる事が許されるみたいだが、「そんなの良いから一緒に食べよう」と言って食べる様になった。
侍女達とも少し仲良くなり、身の上話を聞くと、2人とも戦争孤児で、親とは早くに死に別れ、拾われた育ての親にまだ幼いうちに、売られてここに来たと聞いた。
「ご両親に会いたい?」
「会いたいですが、もう顔も覚えてない小さな頃の事ですので」と悲しそうな顔をされた。戦争なんて無くなれば良いのに。悲劇しか生まれない。
食事が終わって侍女が片付けている間、窓を開けて外を見ると、あのフードのイケメンがいた。2人っきりで話がしたいと言っていたな?まさか愛の告白では無いだろう?私はもう人妻になるのだし。とか思って彼を眺めていると、目が合って手を振られた。私も手を振り返すと、今度は手招きをされた。
「えっ?どうしよう。行くべきか、行かざるべきか」
後宮で男と2人で会っていたなんて知られたら、タダでは済まされない。皇后の内定は取り消されるかも知れないが、そんな事は別に良い。最悪なのは、関係の無い侍女達がとばっちりを受けて、世話を怠ったとして処刑される可能性だ。自分の過ちで侍女を死なせたりしたら目覚めが悪い。身分の高い者を反省させる為に、よく使われた手でもあるから、十分に有り得る。私は手を横に振って、「行けない!」とアピールした。フードのイケメンは、手を振るのを止めて去って行った。重要な話なんだろうとは思う。もしかすると、東洋天界の遣いかも知れない。私をここから連れ出す算段をしているのかも知れない。でも私は前ループとほぼ同じ所まで来たのだ。ここで東洋天界に戻るとか、後戻りを選択したく無い。だけど、話だけは聞いてみようか?イケメンだし。と思い悩んでいた。
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる