その日、女の子になった私。

奈津輝としか

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【第8部〜龍戦争〜】

第47話 大魔王サタンの脅威13

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 向かって来た者達の中に1人だけ、異様なオーラを漂わせている者がいた。この中ではソイツが1番の使い手に違いない。
 他の者を倒して逃げ道を確保していると、麻里奈がソイツに向かって行った。ソイツは刀を水平よりやや下に構え、身体を横にねじる様にして待ち構えていた。
「麻里奈!」
 気を付けて!と言おうとした時には遅く、間合いに入った麻里奈は、抜刀された事にも気付かない程の速さで、胴を真っ二つにされていた。
「まさか…中村半次郎?」
「ほう?よく知っているな」
 中村半次郎は、幕末において四大人斬りの1人として有名で、同じく有名な岡田以蔵は不意打ちをつくのが上手く、夜陰に紛れてターゲットを斬っていたが、師匠の武市半平太や同門の坂本龍馬の方が遥かに実力は上で、その強さにははなはだ疑問が残る。
 それに対して中村半次郎の強さには疑問の余地などなく、常に西郷隆盛のボディーガードとして横に控えて暗殺者から身を守り、新撰組とも幾度も渡り合い生き残って来た事から、どれほどの凄腕であったのか計り知れる所だ。
 新撰組局長の近藤勇は、「示現流の初太刀は、何が何でも必ずわせ!」と隊士らに伝えていたと言う。
 示現流は剣道で言う所の上段の構えが有名だが、中村半次郎は薬丸自顕流と言う亜流派の使い手で、「抜即斬」と呼ばれる刀を抜刀する構えからの電光石火の斬り上げは、わすのが困難だったと言われている。
 初太刀に全身全霊を込めて、間合いに入った者を一刀両断にする。受けようとした太刀ごと、相手は真っ二つにされてしまう。だから受けてはダメなのだ。
 こんな話がある。ある時オランダ商館長が、示現流の使い手である林子平に言った。
「どうかね実際の所、日本刀は西洋の刀に劣るんじゃないかね?君が唐人(中国人)相手に大立ち回りをして、青龍刀を真っ二つにしたとか、閉じた門の隙間に刀を入れてかんぬきを斬ったとか聞くが、少し大袈裟じゃないのかね?」
 林は無言で、近くにあったレイピアやサーベル等を7本束にしてテーブルの上に置くと、刀を一閃して全て真っ二つにした。
 この時に使われた刀は、同田貫と言う名刀であった。これにより示現流と林子平の名前は広く知れ渡り、オランダ人は日本刀を競って欲しがった。
 中村半次郎は刀を鞘に収め、前かかみ気味に中腰の姿勢で、私との距離を詰めて来た。死が迫る恐怖を感じた。
「待って!丸腰のただの、か弱い女を殺すと言うの?」
「…住民は皆殺しにしたはずだ。ここにいると言う事は、間諜スパイたぐいに違いない!」
 私が反論するよりも速く間合いを詰められ、刀が抜かれたのが全く見えなかった。その剣筋は私の右手首を両断し、右腰の辺りから左肩まで斬り上げられて真っ二つにされた。返す刃で首を刎ねられ、髪の毛を掴んで私の生首を皆と同じ台に置いた。
 去って行く中村半次郎の姿を、目だけで追っていた。
(意識が遠くなる…目が覚めたら身体は回復しているだろうけど、どうか見つかりません様に…)
 なる様にしかならない…考える事も出来ない…意識が遠退いて行く…。

 意識が戻ると、全裸で身体は回復していた。幸いにも、敵には見つからなかったみたいだ。
衣装替チェンジ
 服を着て、麻里奈を探したけど何処にもいなかった。遺体すらない。麻里奈はアンデットだけど私と同じ不老不死だ。アンデットなのに不死とは可笑しな感じだが、アンデットとして生を受けたので仕方ない。
「麻里奈がいない…先に回復したのかな?」
 麻里奈は先に死んだので、回復速度が同じだと仮定すると、先に回復するのは理屈が通っている。でも、死んでいる私をそのままにして行くかな?だとすると、少し悲しい。
「まさか回復していくのを見て、連れて行った訳じゃないよね?」
 背後に悪寒が走り、振り向いて身構えた。
「えっ?潤!?どうしてここに?」
 私は隠し切れない笑顔と嬉しさで駆け寄った。
「瑞稀か?ここに居てはいけない。さぁ、こっちへ」
 潤は私の手を引くと、駆け足で何処かに向かい、暫く走ると部屋に入った。
「はぁ、はぁ…潤?」
「瑞稀…」
 冥界での綾瀬潤の姿は女性だ。私が女性の姿の時は男性だった。そして私が男性の姿の時は女性に戻っていたので妻にして、2人の間にはのぞみと言う子供も生まれた。
のぞみもいたりするの?」
 潤に抱きしめられると頷いた。「望がいる」そう聞かされ、愛しい子に会いたくなった。
「でも瑞稀はここに居てはダメだ。直ぐに帰るんだ。お前は不死だから、生者だろう?ここは死者しか居てはダメだ」
「ずっとここで、潤や望と一緒に暮らしたいよ」
 もう2度と会えないと思っていた大切な家族だ。もう2度と離れたくは無い。
 部屋の扉が開けられ、織田配下の武者が数人推し入って来た。
「ここにいらっしゃいましたか、信長様!」
 えっ?何を言って…ここには私と潤しかいない。私は虞美人だけでなく織田信長の生まれ変わりだったのか?とか思った。
「済まない。瑞稀、お前が天道神君アナトだったんだな?敵対するつもりは無かった」
 そう言うと潤は、私の目の前で男性の姿になった。私の彼氏時代の潤の姿だ。違う所は、まるで時代劇の様にまげを結んでいる事だ。
「俺の前世は織田信長だったんだ…」
 連れて行けと、配下に命じて私を城から出そうとした。
「私に触るな!私は潤の、信長の女だぞ!」
 私を押さえ付ける配下達に向けて怒鳴ると、怯んで手を離した。
「潤、私は貴方の味方。ここで何をするつもりか知らないけど、貴方のそばで手伝わせて。私をずっとそばに置いてよ!」
 私は潤に抱き付いたが、優しく引き離されて後ろを向いた。
「早く連れて行け!」
「潤!どうしてよ!潤!潤!嫌よ!離れたくない!潤!」
 私は感情が昂ぶり、周りに人がいる事も忘れて号泣して叫んだが、部屋から力づくで追い出され、そのまま城を出された。途中で中村半次郎とすれ違い、斬られそうになったが、私を連れている配下の者が、潤(信長)に捨てられた女だと説明すると、剣を収めて立ち去った。
 城から出されて門を閉められたが、私は泣きじゃくって門を叩き、その場を離れなかった。
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