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【第9部〜巨人の王国編〜】
第11話 黒面の男
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その日の夕刻のニュースでは、曹氏が突然の心臓麻痺によって亡くなった、との報道がなされると、それに伴って国葬を執り行うと発表された。
「来る、白面の女は必ず来るぞ。警戒を怠るな!」
国葬を執り行う総責任者に任命された劉は、部下に命じて要所に兵を配置していた。
「物々しいですね?本当に来ますかね、この警備の包囲網を掻い潜って」
高は、白面の女もそこまで愚かではないだろうと言った。
「来るさ。白面の目的が楊さんなら、最高指導部メンバーが一堂に会する、この千載一遇のチャンスを逃すはずがない」
確信を持って話す劉に、高は「備えあれば憂いなし」だと言って、笑いながら立ち去った。
(麻里奈…。来るな…、来ないでくれ…)
空を見上げると、晴天の日差しが眩しくて、左手で陽光を遮った。
国葬は滞りなく終わり、最も警戒していた楊主席の演説も、何事もなく終わった。
「何だか拍子抜けしたな?」
「ああ、白面の奴もこの警戒の中、現れるほど馬鹿では無かったな?」
配置していた部下達が、安堵感からか気が緩み始め、退屈そうに欠伸をしたり私語を始めた。
「白面だ!白面が出たぞ!」
警備の1人が叫ぶと、その方向から悲鳴が上がった。
(正気か麻里奈、なぜ現れた?)
高や他のメンバーも、声のする方向へと集まって行く。銃声が聞こえると、いよいよ本格的に戦闘が始まっていると考えられ、銃を構えて走る兵士らに緊張の色が見えた。
「ほほほほ、舞い狂いなさい」
高らが到着して見た光景は、人狼が兵士らの身体を紙の様に引き裂いている姿だった。
「しまった、麻里奈は楊の所か」
高は、単純な策略に引っ掛かった事を恥じて、思わず声を上げた。
「ほう?貴方様が、我が主の大切な男…ですか?貴方だけは殺すなと命じられておりまする」
真祖の目が怪しく輝いた。
「ふふふ、上手くいったみたいね?」
私は林の中を全力で駆け抜けながら、呟いた。
「あら、そんなに急いで何処に行こうと言うのかしら?歌とダンスで、華を添えてくれるの?」
真っ赤なドレスに身を包んだ女に、待ち伏せをされていた。
「そんな声東撃西の計なんて、単純な計略に引っ掛かるはずが無いでしょう?」
この女は最高指導部メンバー唯一の女性で、確か名前は戚令姿と言うはずだ。
「私、急いでいるの。そこを退いてくれない?戚さん」
「あはは。面白い事を言うわね?退かせたいなら、私を倒してから行く事ね」
『闇之薔薇鞭』
ほとんど同時に2人は同じ呪文を唱えて鞭を繰り出すと絡まり、睨み合った。
「へぇ?この私と同じ呪文、同じ力に同じ速度…やるわね。久しぶりに激って来たわ」
戚は舌舐めずりをして、狂気の色を見せた。
「キモいのよ、オバさん!」
「この美しい私に向かって、オバさんだと!?」
激昂して、隠し持っていた短剣を振り翳して来たが、それを右回し蹴りで払い落とした。
すると、鷹のように鋭い付け爪の暗器で喉を抉られそうになり、避けると頬に薄っすらと引っ掻き傷を作って血が滲んだ。
「ぐっ…」
私もただではやられず、カウンターで鳩尾の辺りに、右フックを喰らわしてやった。
「あれ…!?」
強烈な目眩と吐気、心拍が急激に上昇して呼吸困難となった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
私は戚を睨んだ。
「ふふふ、そうよ。この爪には毒が塗ってあるの。擦り傷1つで全身に毒が回り、内臓を腐らせる。せいぜい苦しみながら死になさい。あははは、私の勝ちね?あははは」
私は瑞稀の様に、状態異常無効スキルは持っていない。こんな所で無様に死ぬのかと、お腹を押さえて苦しみながら地面をのたうち回った。
「ふふふ、最高よ。最高に性的快楽を感じるわ。あはんっ。濡れ過ぎて膝まで垂れて来たわ」
そう言って足を胸に乗せて押さえ付け、指で下着を捲って性器を出すと、シャーっと私の頭や顔に尿を掛けた。
「あははは、これが本当の溜飲が下がるって奴ね。弱者をいたぶる以上の快感は無いわ」
放尿が終わると、足で頭を踏み付けた。
「あははは、私のオシッコを飲むのよ」
屈辱でハラワタが煮え繰り返ったが、毒のせいで指一本動かせなくなっていた。
(もうダメだ。拷問されて殺されるくらいなら、自害しよう)
舌を噛んで自殺しようとした時、一瞬の隙を突いて戚を呪文で捕縛した者がいた。
まるで、怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの様にオシャレにスーツを着こなし、黒い仮面を付けていた。
「お前は、何者だ!?」
黒面の紳士はそれには答えずに、麻里奈を抱き起こした。
「さぁ、口を開けて飲んで」
ゴクッと丸薬を飲み込むと、毒が和らいだ気がした。
「ここは一旦退くぞ」
黒面の紳士は、私をお姫様抱っこをして走って逃げた。
「ごめんなさい…私、汚れてる…」
『自動洗浄』『衣装替』
連続で生活魔法を唱えて綺麗にした。
『毒回復』
身体から毒が消えた。
「有難う御座います。お陰で助かりました。どうして助けてくれたんですか?高さん…」
「高?誰だ、そいつは?私は黒面とでも呼んでもらおうか?では…」
黒面と名乗った男は、去ろうとした。
「高さん、貴方の事が忘れられないわ。愛してるの…私は貴方とは戦いたくない…」
「…それは高の奴にでも直接言うんだな」
黒面は去って行った。
「麻里奈…ボクの方こそキミが忘れられないでいる。此方の方こそキミとは戦いたく無い。でも助けるのはこれっきりだ。ボクも仲間を裏切るのは今回だけだ」
黒面を外して、高は素顔を露わにした。
「来る、白面の女は必ず来るぞ。警戒を怠るな!」
国葬を執り行う総責任者に任命された劉は、部下に命じて要所に兵を配置していた。
「物々しいですね?本当に来ますかね、この警備の包囲網を掻い潜って」
高は、白面の女もそこまで愚かではないだろうと言った。
「来るさ。白面の目的が楊さんなら、最高指導部メンバーが一堂に会する、この千載一遇のチャンスを逃すはずがない」
確信を持って話す劉に、高は「備えあれば憂いなし」だと言って、笑いながら立ち去った。
(麻里奈…。来るな…、来ないでくれ…)
空を見上げると、晴天の日差しが眩しくて、左手で陽光を遮った。
国葬は滞りなく終わり、最も警戒していた楊主席の演説も、何事もなく終わった。
「何だか拍子抜けしたな?」
「ああ、白面の奴もこの警戒の中、現れるほど馬鹿では無かったな?」
配置していた部下達が、安堵感からか気が緩み始め、退屈そうに欠伸をしたり私語を始めた。
「白面だ!白面が出たぞ!」
警備の1人が叫ぶと、その方向から悲鳴が上がった。
(正気か麻里奈、なぜ現れた?)
高や他のメンバーも、声のする方向へと集まって行く。銃声が聞こえると、いよいよ本格的に戦闘が始まっていると考えられ、銃を構えて走る兵士らに緊張の色が見えた。
「ほほほほ、舞い狂いなさい」
高らが到着して見た光景は、人狼が兵士らの身体を紙の様に引き裂いている姿だった。
「しまった、麻里奈は楊の所か」
高は、単純な策略に引っ掛かった事を恥じて、思わず声を上げた。
「ほう?貴方様が、我が主の大切な男…ですか?貴方だけは殺すなと命じられておりまする」
真祖の目が怪しく輝いた。
「ふふふ、上手くいったみたいね?」
私は林の中を全力で駆け抜けながら、呟いた。
「あら、そんなに急いで何処に行こうと言うのかしら?歌とダンスで、華を添えてくれるの?」
真っ赤なドレスに身を包んだ女に、待ち伏せをされていた。
「そんな声東撃西の計なんて、単純な計略に引っ掛かるはずが無いでしょう?」
この女は最高指導部メンバー唯一の女性で、確か名前は戚令姿と言うはずだ。
「私、急いでいるの。そこを退いてくれない?戚さん」
「あはは。面白い事を言うわね?退かせたいなら、私を倒してから行く事ね」
『闇之薔薇鞭』
ほとんど同時に2人は同じ呪文を唱えて鞭を繰り出すと絡まり、睨み合った。
「へぇ?この私と同じ呪文、同じ力に同じ速度…やるわね。久しぶりに激って来たわ」
戚は舌舐めずりをして、狂気の色を見せた。
「キモいのよ、オバさん!」
「この美しい私に向かって、オバさんだと!?」
激昂して、隠し持っていた短剣を振り翳して来たが、それを右回し蹴りで払い落とした。
すると、鷹のように鋭い付け爪の暗器で喉を抉られそうになり、避けると頬に薄っすらと引っ掻き傷を作って血が滲んだ。
「ぐっ…」
私もただではやられず、カウンターで鳩尾の辺りに、右フックを喰らわしてやった。
「あれ…!?」
強烈な目眩と吐気、心拍が急激に上昇して呼吸困難となった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
私は戚を睨んだ。
「ふふふ、そうよ。この爪には毒が塗ってあるの。擦り傷1つで全身に毒が回り、内臓を腐らせる。せいぜい苦しみながら死になさい。あははは、私の勝ちね?あははは」
私は瑞稀の様に、状態異常無効スキルは持っていない。こんな所で無様に死ぬのかと、お腹を押さえて苦しみながら地面をのたうち回った。
「ふふふ、最高よ。最高に性的快楽を感じるわ。あはんっ。濡れ過ぎて膝まで垂れて来たわ」
そう言って足を胸に乗せて押さえ付け、指で下着を捲って性器を出すと、シャーっと私の頭や顔に尿を掛けた。
「あははは、これが本当の溜飲が下がるって奴ね。弱者をいたぶる以上の快感は無いわ」
放尿が終わると、足で頭を踏み付けた。
「あははは、私のオシッコを飲むのよ」
屈辱でハラワタが煮え繰り返ったが、毒のせいで指一本動かせなくなっていた。
(もうダメだ。拷問されて殺されるくらいなら、自害しよう)
舌を噛んで自殺しようとした時、一瞬の隙を突いて戚を呪文で捕縛した者がいた。
まるで、怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの様にオシャレにスーツを着こなし、黒い仮面を付けていた。
「お前は、何者だ!?」
黒面の紳士はそれには答えずに、麻里奈を抱き起こした。
「さぁ、口を開けて飲んで」
ゴクッと丸薬を飲み込むと、毒が和らいだ気がした。
「ここは一旦退くぞ」
黒面の紳士は、私をお姫様抱っこをして走って逃げた。
「ごめんなさい…私、汚れてる…」
『自動洗浄』『衣装替』
連続で生活魔法を唱えて綺麗にした。
『毒回復』
身体から毒が消えた。
「有難う御座います。お陰で助かりました。どうして助けてくれたんですか?高さん…」
「高?誰だ、そいつは?私は黒面とでも呼んでもらおうか?では…」
黒面と名乗った男は、去ろうとした。
「高さん、貴方の事が忘れられないわ。愛してるの…私は貴方とは戦いたくない…」
「…それは高の奴にでも直接言うんだな」
黒面は去って行った。
「麻里奈…ボクの方こそキミが忘れられないでいる。此方の方こそキミとは戦いたく無い。でも助けるのはこれっきりだ。ボクも仲間を裏切るのは今回だけだ」
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