336 / 375
【第9部〜巨人の王国編〜】
第38話 スルトの進撃
しおりを挟む
「やっと着いたわね」
オリンポスの周囲は巨人族が殺気立って集まっていた為、近づく事が出来ずに遠目から見ていた。
「おかしいわね?」
「何がおかしいんだ?」
「オリンポスは陥ちたと聞いたけど、それなら何でこんなに殺気立ってるのよ?」
「それもそうだ」
実はこの時はまだ、オリンポスは陥落していなかったのだ。
「しぶとい、敵は1人だけだ。さっさと片付けろ!」
もたつく配下にイラついたロキは、怒鳴り付けた。義兄弟のトールは片腕を失い、その治療をロキがしていた為に自らは戦えず、苛立ちが募っていた。
1人でも多くの眷属を逃す為に、ポセイドンは孤軍奮闘していた。だが、それも終わりの時が来た。
「退け、邪魔だ!」
配下を押し退けてスルトが聖炎剣を一閃すると、ポセイドンは動かなくなった。
「ふ、手こずらせてくれたな」
面倒くさそうな表情をすると、配下に命じた。
「此奴がここまで粘ったのは眷属を逃す為ぞ、皆殺しにして此奴の努力を無駄にしてやれ!」
動かなくなったポセイドンを足蹴にして退けると、その背には外界へと通じる抜け穴があった。だがその穴を、巨人達が通るには小さ過ぎた。
「急いで穴を広げろ!」
巨人達がシャベルやツルハシで壁穴を掘り広げ、身体が通る広さになると次々とその穴に入って行った。巨人達が中に入って進むと、そこは鍾乳洞であった。
「オリンポスにこんな場所が?」
「馬鹿、感心してないで先に進め!」
先に進むと爆音と共に、周囲に砂煙りが舞い何も見えなくなった。そして地震の様な揺れを感じると、氷柱の様に尖った鍾乳石が天井から降って来て、多くの巨人に突き刺さって絶命させた。
「これで時が稼げる。今のうちに進め!」
ヘルメスが叫んで振り返ると、スルトが立っていた。
「ス、スルト…もうここまで…」
「ははははは、諦めろ。貴様らは此処で終わりだ。皆殺しにしてくれるわ。ラグナロクは再び来ない」
スルトの聖炎剣を受けて、ヘルメスは真っ二つにされた。
「逃げろぉぉぉ!」
先にいる仲間達に追手の存在を知らせ、魔石に神力の全てを注ぐと、爆弾の様にそれは爆発した。
「ぐおぉぉぉ」
だがスルトは炎の巨人である為、爆炎では殺す事が出来なかった。
「おのれ、この俺に痛みを与えるなど、絶対に許さん!この怒りは、彼奴の全ての眷属の生皮を剥いで晴らしてくれるわ」
怒り狂ったスルトは、聖炎剣を振り回しながら進み、それによって配下の巨人達も命を失った。
「もう少しです、お妃様」
いかにも可憐なお姫様が、私の目の前に突然現れた。お姫様が来た方向に目を向けると、洞穴が見えた。
「こっちよ、こっち!」
私は手招きして呼び寄せた。
「嗚呼、貴女様は天道神君様。天界にお戻りになられたのですね?どうかお助け下さい」
私の姿が天道神君と同じなので、この様な間違われ方は日常茶飯事で、もう慣れっこだ。
「貴女は誰なの?」
「私は、ポセイドンの妻アンフィトリテで御座います。直ぐそこまで巨人が、夫が1人残って戦っております。どうかお助け下さい!」
泣きじゃくるアンフィトリテを、その侍女が私から引き離した。
「分かった、逃げて。この先に仲間がいる」
アンフィトリテが逃げ出した所で声がした。
「待て、1人も生かして逃さん!」
聖炎剣を一閃され、反射的に避けると、アンフィトリテと侍女の背に当たって真っ二つとなって果てた。
「こいつ!」
カッとなった私は、練気剣で斬りかかった。スルトは返す刃で練気剣ごと私を斬った。
「うあっ」
地面に転がって臓物を飛び散らしたが、事前に掛けていた自動回復の効果で傷は塞がり、元に戻った。
「はぁ、はぁ、はぁ…何なのコイツ?」
「炎の剣、もしやあれがレーヴァテインなのでは?」
「ではコイツがスルトなの?」
「生意気に俺を呼び捨てにするなぁ!スルト様と呼べ!」
激昂したスルトが聖炎剣を振り回すと、躱わし切れなかった高の左足首を斬り落とした。
「高さん!」
麻里奈は、悲鳴にも似た声を上げて名前を呼んだ。
「来るな!逃げろ!」
高左足を押さえながら、麻里奈に向かって叫んだ。
「嫌よ!」
「はははは、思い出したぞ。お前はダゴンの側近に居たな?蝿の様に。あははは」
スルトはそう言うと、聖炎剣を振って、高の左足を押さえる左手ごと左足を斬り落とした。
「ギャアアァ」
左手と左足を失って高は、痛みで地面を転げ回った。
「この世に斬れぬ物は無し!練気剣!」
麻里奈がスルトの懐に入ると、勝ち誇ったスルトは笑いを浮かべて聖炎剣を頭上から振り下ろした。
真っ二つにしたと思ったが、驚くべき事に聖炎剣が弾き返されたのだ。
「何だと!?」
弾かれた聖炎剣を、そのまま二撃目の攻撃に変えて斬ると、麻里奈の右腕を斬り落とした。
「うぐっ」
「ダメだ、コイツと戦ってはダメだ。逃げろ!」
「五月蝿い!蝿なら蝿らしくしておけ!」
聖炎剣で高の背を貫いて絶命させた。
「高さん!許さない、お前は絶対に許さない!」
左手の練気剣に全身全霊の気を込めて、スルトに斬りかかった。
振り下ろされた聖炎剣を弾き、受け流して斬り結んだ。その間にも巨人達は集まって来た。
「何だあの女は?スルト様の聖炎剣と渡り合っているぞ?」
「聖炎剣は、この世に斬れぬ物は無しでは無かったのか?」
この練気剣の脅威的な強さは、皮肉にもダゴンによる思い込みの力であった。『この世に斬れぬ物は無し』とされる最強の武器同士の激突だ。
「うらぁ」
麻里奈が気合いを込めて練気剣を一閃する度に、聖炎剣に多大なる負荷を与えた。
「くっ。聖炎剣に亀裂が!?」
「いかん!」
それを見たロキが、麻里奈の背後から矢を放った。その隙を逃さずスルトは、麻里奈の左肩から右脇腹まで斬り下げた。
「あぐっ…」
麻里奈は遂に力尽きて地面に転がった。
「何なんだ、この女は?」
「こ、この女の顔は…。スルト様、おめでとう御座います!」
「どう言う事だ?」
「この女は天道神君で、天界の盟主です。これで天界は貴方様の物となりました。お慶びを申し上げます!」
「何?コイツが天道神君だと?なるほど、あの強さも納得だな」
「はい、手こずらされましたが、これでようやく天界は巨人族の物です」
「はははは、皆で祝杯を上げようでは無いか」
「はい、ですがまだこれで終わりでは有りません。天道神君を餌にして残党を誘き出しましょう」
ロキはまたもや悪巧みをして、ニヤリと笑った。
「天道神君…私の死が貴女には伝わるわね…後は頼んだわよ…」
麻里奈は、呼吸する様に血を吐くと絶命した。血を吐いた麻里奈に驚いてスルトは、トドメに心臓を何度も突いた。
オリンポスの周囲は巨人族が殺気立って集まっていた為、近づく事が出来ずに遠目から見ていた。
「おかしいわね?」
「何がおかしいんだ?」
「オリンポスは陥ちたと聞いたけど、それなら何でこんなに殺気立ってるのよ?」
「それもそうだ」
実はこの時はまだ、オリンポスは陥落していなかったのだ。
「しぶとい、敵は1人だけだ。さっさと片付けろ!」
もたつく配下にイラついたロキは、怒鳴り付けた。義兄弟のトールは片腕を失い、その治療をロキがしていた為に自らは戦えず、苛立ちが募っていた。
1人でも多くの眷属を逃す為に、ポセイドンは孤軍奮闘していた。だが、それも終わりの時が来た。
「退け、邪魔だ!」
配下を押し退けてスルトが聖炎剣を一閃すると、ポセイドンは動かなくなった。
「ふ、手こずらせてくれたな」
面倒くさそうな表情をすると、配下に命じた。
「此奴がここまで粘ったのは眷属を逃す為ぞ、皆殺しにして此奴の努力を無駄にしてやれ!」
動かなくなったポセイドンを足蹴にして退けると、その背には外界へと通じる抜け穴があった。だがその穴を、巨人達が通るには小さ過ぎた。
「急いで穴を広げろ!」
巨人達がシャベルやツルハシで壁穴を掘り広げ、身体が通る広さになると次々とその穴に入って行った。巨人達が中に入って進むと、そこは鍾乳洞であった。
「オリンポスにこんな場所が?」
「馬鹿、感心してないで先に進め!」
先に進むと爆音と共に、周囲に砂煙りが舞い何も見えなくなった。そして地震の様な揺れを感じると、氷柱の様に尖った鍾乳石が天井から降って来て、多くの巨人に突き刺さって絶命させた。
「これで時が稼げる。今のうちに進め!」
ヘルメスが叫んで振り返ると、スルトが立っていた。
「ス、スルト…もうここまで…」
「ははははは、諦めろ。貴様らは此処で終わりだ。皆殺しにしてくれるわ。ラグナロクは再び来ない」
スルトの聖炎剣を受けて、ヘルメスは真っ二つにされた。
「逃げろぉぉぉ!」
先にいる仲間達に追手の存在を知らせ、魔石に神力の全てを注ぐと、爆弾の様にそれは爆発した。
「ぐおぉぉぉ」
だがスルトは炎の巨人である為、爆炎では殺す事が出来なかった。
「おのれ、この俺に痛みを与えるなど、絶対に許さん!この怒りは、彼奴の全ての眷属の生皮を剥いで晴らしてくれるわ」
怒り狂ったスルトは、聖炎剣を振り回しながら進み、それによって配下の巨人達も命を失った。
「もう少しです、お妃様」
いかにも可憐なお姫様が、私の目の前に突然現れた。お姫様が来た方向に目を向けると、洞穴が見えた。
「こっちよ、こっち!」
私は手招きして呼び寄せた。
「嗚呼、貴女様は天道神君様。天界にお戻りになられたのですね?どうかお助け下さい」
私の姿が天道神君と同じなので、この様な間違われ方は日常茶飯事で、もう慣れっこだ。
「貴女は誰なの?」
「私は、ポセイドンの妻アンフィトリテで御座います。直ぐそこまで巨人が、夫が1人残って戦っております。どうかお助け下さい!」
泣きじゃくるアンフィトリテを、その侍女が私から引き離した。
「分かった、逃げて。この先に仲間がいる」
アンフィトリテが逃げ出した所で声がした。
「待て、1人も生かして逃さん!」
聖炎剣を一閃され、反射的に避けると、アンフィトリテと侍女の背に当たって真っ二つとなって果てた。
「こいつ!」
カッとなった私は、練気剣で斬りかかった。スルトは返す刃で練気剣ごと私を斬った。
「うあっ」
地面に転がって臓物を飛び散らしたが、事前に掛けていた自動回復の効果で傷は塞がり、元に戻った。
「はぁ、はぁ、はぁ…何なのコイツ?」
「炎の剣、もしやあれがレーヴァテインなのでは?」
「ではコイツがスルトなの?」
「生意気に俺を呼び捨てにするなぁ!スルト様と呼べ!」
激昂したスルトが聖炎剣を振り回すと、躱わし切れなかった高の左足首を斬り落とした。
「高さん!」
麻里奈は、悲鳴にも似た声を上げて名前を呼んだ。
「来るな!逃げろ!」
高左足を押さえながら、麻里奈に向かって叫んだ。
「嫌よ!」
「はははは、思い出したぞ。お前はダゴンの側近に居たな?蝿の様に。あははは」
スルトはそう言うと、聖炎剣を振って、高の左足を押さえる左手ごと左足を斬り落とした。
「ギャアアァ」
左手と左足を失って高は、痛みで地面を転げ回った。
「この世に斬れぬ物は無し!練気剣!」
麻里奈がスルトの懐に入ると、勝ち誇ったスルトは笑いを浮かべて聖炎剣を頭上から振り下ろした。
真っ二つにしたと思ったが、驚くべき事に聖炎剣が弾き返されたのだ。
「何だと!?」
弾かれた聖炎剣を、そのまま二撃目の攻撃に変えて斬ると、麻里奈の右腕を斬り落とした。
「うぐっ」
「ダメだ、コイツと戦ってはダメだ。逃げろ!」
「五月蝿い!蝿なら蝿らしくしておけ!」
聖炎剣で高の背を貫いて絶命させた。
「高さん!許さない、お前は絶対に許さない!」
左手の練気剣に全身全霊の気を込めて、スルトに斬りかかった。
振り下ろされた聖炎剣を弾き、受け流して斬り結んだ。その間にも巨人達は集まって来た。
「何だあの女は?スルト様の聖炎剣と渡り合っているぞ?」
「聖炎剣は、この世に斬れぬ物は無しでは無かったのか?」
この練気剣の脅威的な強さは、皮肉にもダゴンによる思い込みの力であった。『この世に斬れぬ物は無し』とされる最強の武器同士の激突だ。
「うらぁ」
麻里奈が気合いを込めて練気剣を一閃する度に、聖炎剣に多大なる負荷を与えた。
「くっ。聖炎剣に亀裂が!?」
「いかん!」
それを見たロキが、麻里奈の背後から矢を放った。その隙を逃さずスルトは、麻里奈の左肩から右脇腹まで斬り下げた。
「あぐっ…」
麻里奈は遂に力尽きて地面に転がった。
「何なんだ、この女は?」
「こ、この女の顔は…。スルト様、おめでとう御座います!」
「どう言う事だ?」
「この女は天道神君で、天界の盟主です。これで天界は貴方様の物となりました。お慶びを申し上げます!」
「何?コイツが天道神君だと?なるほど、あの強さも納得だな」
「はい、手こずらされましたが、これでようやく天界は巨人族の物です」
「はははは、皆で祝杯を上げようでは無いか」
「はい、ですがまだこれで終わりでは有りません。天道神君を餌にして残党を誘き出しましょう」
ロキはまたもや悪巧みをして、ニヤリと笑った。
「天道神君…私の死が貴女には伝わるわね…後は頼んだわよ…」
麻里奈は、呼吸する様に血を吐くと絶命した。血を吐いた麻里奈に驚いてスルトは、トドメに心臓を何度も突いた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる