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【第10部〜最終章〜】
第8話 堕天と祝福
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「ふん、もう抵抗する気も失せたと見える。この場で首を刎ねて手柄にしても良いが、生け捕りにしても変わらんな。そのまま大人しくするなら生命までは取るまい」
コルソンは抱き締める腕の中で、冷たくなって行くガブリエルに絶望していた。生まれて初めて抱いた、人を愛する気持ち。愛する者を失うと言う事は、こんなにも身を引き裂かれる様な思いをするのか、これならば己が死んだ方がよほど楽だった。ガブリエルでは無く、己が死ねば良かったと感じた。
「こ…これほどまでに…辛く、悲しいのであれば…、俺は愛など要らぬ!」
コルソンは血の涙を流して、異形の姿へと変貌して行く。元の身体の体積を100倍にも膨らますほど巨大となり、自らの意思で再び堕天したのだ。
辺り一帯に瘴気が満ち、黒衣の将でさえ身慄いするほどの激しい憎悪を感じて、咄嗟に飛び退けた。
「ギャオァオォォォ」
雄叫びと共に瘴気の咆哮を吐き、敵も味方をも巻き込んだ。瘴気の咆哮を受けた者は、強酸を浴びたみたいに身体が溶け、骨を残して崩れ去った。
「おのれ!」
黒衣の将が変貌したコルソンの背に刃を突き立てたが、その皮膚は硬く刃が通らず弾かれた。
「何だと!?」
コルソンの背に顔が浮かび上がり、その口から瘴気の咆哮を吐いた。
「これでは近付けん!撤退だ!全軍、退きながら体勢を整えよ!」
だが既に狂戦士化し、意思も保っておらず、あれほど大切に抱いていたガブリエルも髭に巻き付いて、雑に首からぶら下がっていた。
「グギャギャギャギャアァ」
背や肩から数本の腕を生やし、振り回す度に敵も味方も被害を受けた。
『オン・マユラ・キランディ・ソワカ』
コルソンの堕天が解け、元のサイズへと縮小されて行く。ガブリエルは無造作に投げ出され、下で受け止めた者がいた。受け止めたと言っても真言を唱えて、宙に浮かせて地面に叩きつけられるのを防いだのだ。
「お…前は…孔雀明妃…。ガブリエル、ガブリエルを救ってくれ…頼む…」
「いくら私でも、死んでしまった者を生き返らせるのは無理よ」
「お、オオオォォ…ガブリエル、ガブリエル…」
子供の様に泣きじゃくるコルソンを尻目に、孔雀明妃は真言を唱えた。
『オン・マユラ・キランディ・ソワカ』
するとガブリエルは、先程まで紫色をしていた顔から血色を取り戻して来た。
「あ、嗚呼ぁ…、有難う。有難う…奇跡だ。奇跡だ…ガブリエル…」
「…奇跡なんかじゃないわね。ガブリエルには回復魔法が掛けられた跡があった。それが無ければ本当に死んでいた。あんたが掛けた回復魔法のお陰ね?」
「良かった…本当に…」
そう言うコルソンは、かつて魔界の支配者の1人として恐れられた残虐非道な悪魔の姿など微塵も見えなかった。
「これも御仏の加護のお陰。これからも精進し、改心せよ。さすれば救われん」
孔雀明妃は、両手を併せて拝んだ。
「明妃、お前の事を誤解していた。有難う、本当に有難う」
コルソンは、孔雀明妃を強く抱き締めてお礼を言った。孔雀明妃は迷惑そうに眉を顰めたが、ガブリエルの意識が戻ったのが見えて、わざとコルソンの背に腕を回して抱き合った。
「愛してるわ、コルソン…」
そう言いながら、ペロッと下を出して見せた。
「ちょっ、ちょっと!一体、どう言う状況?」
意識を取り戻したガブリエルの目には、コルソンと孔雀明妃が好き合って、抱き合っている様にしか見えなかった。
「ガブリエル!良かった、気が付いたんだな!?」
ガブリエルを抱き締め様として、コルソンは拒絶された。
「何なの?私の事、好きだって言ったくせに、他の女と抱き合っちゃって。女なら誰でも良いんでしょう?馬鹿にしちゃって、貴方なんかに惹かれた私が可哀想だわ…」
頬を膨らませて、プイっとそっぽを向いた。
「あ、いや、誤解だ。俺はお前だけを愛してる。信じてくれ!」
「酷いわ!さっきまで私に感謝して、何度も強く抱き締めて愛を囁やいてくれたでしょう?」
「ばっ、馬鹿な事を。おい!こんな奴の事、信じるなよ!?本当に俺にはお前だけなんだ」
あははは、と堪え切れずに孔雀明妃が笑いだすと、ガブリエルは揶揄われた事に気が付いた。
「明妃!助けてくれた事には感謝するけど、揶揄うなんて酷いわ!」
「うふふふ、ごめんなさいね。あんた達、天使は真面目過ぎてイケ好かない人ばかりだと思っていたけれど、貴女は可愛いくて、面白いなと思って揶揄いたくなったのよ。でもこれで両想いだと知れたでしょう?うふふ、お幸せに」
孔雀明妃に言われて、ガブリエルは耳まで真っ赤にして照れた。
「良いこと、コルソン!こんなにウブで可愛い娘は2度と現れないわ。あんたには勿体無い女よ。大切にしなさいよ!処女だしね」
「し、処女は余計よ!」
「お、俺が初めてか…」
「ば、馬鹿っ!まだ貴方に捧げるとは言ってないわ!」
「いずれそうなるさ…」
コルソンがガブリエルを顎クイして口付けをすると、周囲から歓声を挙げて祝福された。
「えっ?どう言う状況なの!?」
ラファエルとウリエルも合流して、2人が口付けをしているのを見て頭が混乱した。
コルソンは抱き締める腕の中で、冷たくなって行くガブリエルに絶望していた。生まれて初めて抱いた、人を愛する気持ち。愛する者を失うと言う事は、こんなにも身を引き裂かれる様な思いをするのか、これならば己が死んだ方がよほど楽だった。ガブリエルでは無く、己が死ねば良かったと感じた。
「こ…これほどまでに…辛く、悲しいのであれば…、俺は愛など要らぬ!」
コルソンは血の涙を流して、異形の姿へと変貌して行く。元の身体の体積を100倍にも膨らますほど巨大となり、自らの意思で再び堕天したのだ。
辺り一帯に瘴気が満ち、黒衣の将でさえ身慄いするほどの激しい憎悪を感じて、咄嗟に飛び退けた。
「ギャオァオォォォ」
雄叫びと共に瘴気の咆哮を吐き、敵も味方をも巻き込んだ。瘴気の咆哮を受けた者は、強酸を浴びたみたいに身体が溶け、骨を残して崩れ去った。
「おのれ!」
黒衣の将が変貌したコルソンの背に刃を突き立てたが、その皮膚は硬く刃が通らず弾かれた。
「何だと!?」
コルソンの背に顔が浮かび上がり、その口から瘴気の咆哮を吐いた。
「これでは近付けん!撤退だ!全軍、退きながら体勢を整えよ!」
だが既に狂戦士化し、意思も保っておらず、あれほど大切に抱いていたガブリエルも髭に巻き付いて、雑に首からぶら下がっていた。
「グギャギャギャギャアァ」
背や肩から数本の腕を生やし、振り回す度に敵も味方も被害を受けた。
『オン・マユラ・キランディ・ソワカ』
コルソンの堕天が解け、元のサイズへと縮小されて行く。ガブリエルは無造作に投げ出され、下で受け止めた者がいた。受け止めたと言っても真言を唱えて、宙に浮かせて地面に叩きつけられるのを防いだのだ。
「お…前は…孔雀明妃…。ガブリエル、ガブリエルを救ってくれ…頼む…」
「いくら私でも、死んでしまった者を生き返らせるのは無理よ」
「お、オオオォォ…ガブリエル、ガブリエル…」
子供の様に泣きじゃくるコルソンを尻目に、孔雀明妃は真言を唱えた。
『オン・マユラ・キランディ・ソワカ』
するとガブリエルは、先程まで紫色をしていた顔から血色を取り戻して来た。
「あ、嗚呼ぁ…、有難う。有難う…奇跡だ。奇跡だ…ガブリエル…」
「…奇跡なんかじゃないわね。ガブリエルには回復魔法が掛けられた跡があった。それが無ければ本当に死んでいた。あんたが掛けた回復魔法のお陰ね?」
「良かった…本当に…」
そう言うコルソンは、かつて魔界の支配者の1人として恐れられた残虐非道な悪魔の姿など微塵も見えなかった。
「これも御仏の加護のお陰。これからも精進し、改心せよ。さすれば救われん」
孔雀明妃は、両手を併せて拝んだ。
「明妃、お前の事を誤解していた。有難う、本当に有難う」
コルソンは、孔雀明妃を強く抱き締めてお礼を言った。孔雀明妃は迷惑そうに眉を顰めたが、ガブリエルの意識が戻ったのが見えて、わざとコルソンの背に腕を回して抱き合った。
「愛してるわ、コルソン…」
そう言いながら、ペロッと下を出して見せた。
「ちょっ、ちょっと!一体、どう言う状況?」
意識を取り戻したガブリエルの目には、コルソンと孔雀明妃が好き合って、抱き合っている様にしか見えなかった。
「ガブリエル!良かった、気が付いたんだな!?」
ガブリエルを抱き締め様として、コルソンは拒絶された。
「何なの?私の事、好きだって言ったくせに、他の女と抱き合っちゃって。女なら誰でも良いんでしょう?馬鹿にしちゃって、貴方なんかに惹かれた私が可哀想だわ…」
頬を膨らませて、プイっとそっぽを向いた。
「あ、いや、誤解だ。俺はお前だけを愛してる。信じてくれ!」
「酷いわ!さっきまで私に感謝して、何度も強く抱き締めて愛を囁やいてくれたでしょう?」
「ばっ、馬鹿な事を。おい!こんな奴の事、信じるなよ!?本当に俺にはお前だけなんだ」
あははは、と堪え切れずに孔雀明妃が笑いだすと、ガブリエルは揶揄われた事に気が付いた。
「明妃!助けてくれた事には感謝するけど、揶揄うなんて酷いわ!」
「うふふふ、ごめんなさいね。あんた達、天使は真面目過ぎてイケ好かない人ばかりだと思っていたけれど、貴女は可愛いくて、面白いなと思って揶揄いたくなったのよ。でもこれで両想いだと知れたでしょう?うふふ、お幸せに」
孔雀明妃に言われて、ガブリエルは耳まで真っ赤にして照れた。
「良いこと、コルソン!こんなにウブで可愛い娘は2度と現れないわ。あんたには勿体無い女よ。大切にしなさいよ!処女だしね」
「し、処女は余計よ!」
「お、俺が初めてか…」
「ば、馬鹿っ!まだ貴方に捧げるとは言ってないわ!」
「いずれそうなるさ…」
コルソンがガブリエルを顎クイして口付けをすると、周囲から歓声を挙げて祝福された。
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