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第2章
第26話 山下巧
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「キャアァ~嫌あぁぁぁ!!」
女性が悲鳴をあげると両足が広げられ、局部が露わになった。しかし肝心の敵の姿が見えない。
『飛翔』
宙に浮くと、生贄の女性の舞台へ飛んだ。しかし、行為が始まっているのに何も見えない。
『解除魔法』
すると、何も無い空間から少しずつ姿が現れた。いや、何も無かったのではなく、最初からいたが視認出来なかったのだ。
「透明化の魔法か?」
姿を現したのは、全身が緑色をしており、エルフの様に尖った耳をしていたが、少し横に垂れ下がり、黄色い瞳が不気味だった。
「まさかゴブリン?」
降り立つと同時にゴブリンを斬り殺すと、次々と姿を表し始めた。ゴブリンが4体にオークが3体、そしてオーガが1体いる。生贄の女性をゴブリンとオークが犯した後は、オーガが食べていたのだろう。
「お前らゴミ屑の分際で神の名を騙るとは、畏れ多い…」
一瞬でゴブリンの間合いに入ると一振りで4匹を斬殺し、返す刃でオーク1匹を倒した。残りのオークは身構えて向かって来る勢いだったが、意に返さずに此方から懐に飛び込んで2匹の首を落とした。オーガは腕力を頼みに、棍棒を振り回したが、軽く受け流してオーガの首を落とした。
「剣帝の剣技を模倣している私の相手じゃないわね」
ゴブリンやオークにオーガ、普通はこんな組み合わせで行動なんてしない。ゴブリンならゴブリン、オークならオークと言う様に、同種族で行動するのが普通だ。つまりこれは、黒幕の存在を示している。
『黄泉還反魂』
この呪文で生き返らせた術者に対して、完全服従となる魔法だ。
「お前達は何処から来たのだ?」
「分からない、オレたち気が付いたら、ここにいた」
「なるほど、何者かに召喚されたのね?では、お前達のボスは誰で、どんな奴なの?」
「ボスの名前、知らない。ボス、見た事ない」
「では、お前達に指示して、ここに来させたのは誰なの?」
「指示されてない。ここに来たら女、抱ける。食い物に困らないと聞いた。仲間が噂してるの聞いた」
何だか釈然としない。実態が掴めない犯罪組織みたいだ。
「じゃあ、その仲間の所まで案内して頂戴」
私はゴブリンに道案内をさせる事にしたが、その前にする事がある。
「もう大丈夫よ」
生贄にされた女の子の拘束を解くと、抱きつかれて泣かれた。
「ありがとうございます。ありがとうございます。うわぁあぁん!」
生贄の舞台から女の子を連れて降りた。
『状態異常回復』
トランス状態になっていた皆んなを回復した。
「おぉぉ、助けて下さって、本当にありがとうございます」
皆んなから感謝されると少々照れ臭かったが、嬉しかった。
個人的に1つ疑問が残っていた。ここには巧の反応があったはずなのに、姿が見えない。私の姿を見たら絶対に話しかけてくるはずなのに。
「すみません。ここに山下巧さんと言う人はいませんか?」
皆んなは顔を見合わせた。
「その人と貴女は、どう言う関係ですかな?」
「恋人です」
「…俺が案内します。こちらへ付いて来て下さい」
雪人の後を付いて行くと、古屋に入り、奥の扉から外に出た。草薮を抜けると、複数の土が盛られたうちの1つを指差した。
「彼は勇敢でした。泣き寝入りしか出来なかった俺達を促して、今の組織を作って奴らに対抗しようとしたのです。しかし、2ヶ月前に奴らの襲撃を受け、女の子を庇った傷が原因で、帰らぬ人となったのです。もしもいつか自分を訪ねて来る人がいたら、こう伝えて欲しいと言われました。瑞稀、すまない。愛してると」
私は最後まで聞く前に膝から崩れ落ちると、巧のお墓の前で号泣していた。
「先程貴女はゴブリン達に聞かれていましたね。彼等を率いている者は誰なのか?と。巧さんを殺した奴は、ゴブリンでもオークでもありませんでした。見た事も無い奴でした。全身で銀白のタイツを着ている様な姿をしていました。そいつが魔物達を指揮しているのを見ました」
「…全身銀白タイツ?」
何だそいつは?そんな奴は私の知識の中では、神族にも魔族にもいない。そいつが何であれ、巧の仇であるなら、必ず復讐するだけだ。
私は巧の墓を掘り返すと、『死者蘇生』を唱えて生き返らせた。
「こ、ここは…?瑞稀?」
「巧…」
2人とも泣いて抱き合った。積もる話もあるけれど、巧だけ生き返らせるのは心苦しい。
「亡くなった皆んなを生き返らせたい。ただ、この蘇生呪文は大量の魔力が必要で、こんな大勢だと私だけの魔力では足りないの。皆んなから少しずつ分けて貰えるなら、皆んなを生き返らせられるけど、どうする?」
「本当に、本当に生き返らせる事が出来るのか!?俺の生命をくれても構わない。直ぐにでもやってくれ!いや、生き返らせて下さい。お願いします!」
前回生贄にされて亡くなった女性の彼氏に懇願された。
「別に死んだりしないわよ。気を失うかも知れないけど。皆んなも同じ意見で良いの?」
見回すと、皆んなが頷いていたので蘇生したが、魔力を使い過ぎて、強い貧血に似た症状が出て倒れた。巧に膝枕をされていると、少し魔力が回復して来たので動ける様になった。
「どうなったの?」
「聞いて見ろよ」
首を傾けると、皆んな泣きながら抱き合って喜んでいた。
「良かった」
死者を生き返らせるなんて、普通は有り得ない。私以外の神にも出来ないので、彼等は運が良かったのだ。
「皆んなの身体を小さくした神ってのも、銀白タイツの奴なのかな?」
「そうです。ただ、1体ではなく、太いのや細いの、それから女性らしいのもいました。女性らしいと言うのは、胸の膨らみがあったからです」
「なるほど」
何だか胸の奥がザワついた。嫌な予感がする。私の予感が当たっているならば、今度の敵はかなりヤバい相手となる。
「何か心当たりでもあるのか?」
巧が私の顔を覗き込んで聞いて来た。
「うん…私は姿を見た事が無いから分からないんだけどね…」
もしかすると私や唯一神ヤハウェと同じく、XNUMX人かも知れない。「旧世界の魔神」と言われた彼等の強さや能力は、未知数だ。本当に彼等が敵として現れたのであれば、かなりヤバい相手となる。
女性が悲鳴をあげると両足が広げられ、局部が露わになった。しかし肝心の敵の姿が見えない。
『飛翔』
宙に浮くと、生贄の女性の舞台へ飛んだ。しかし、行為が始まっているのに何も見えない。
『解除魔法』
すると、何も無い空間から少しずつ姿が現れた。いや、何も無かったのではなく、最初からいたが視認出来なかったのだ。
「透明化の魔法か?」
姿を現したのは、全身が緑色をしており、エルフの様に尖った耳をしていたが、少し横に垂れ下がり、黄色い瞳が不気味だった。
「まさかゴブリン?」
降り立つと同時にゴブリンを斬り殺すと、次々と姿を表し始めた。ゴブリンが4体にオークが3体、そしてオーガが1体いる。生贄の女性をゴブリンとオークが犯した後は、オーガが食べていたのだろう。
「お前らゴミ屑の分際で神の名を騙るとは、畏れ多い…」
一瞬でゴブリンの間合いに入ると一振りで4匹を斬殺し、返す刃でオーク1匹を倒した。残りのオークは身構えて向かって来る勢いだったが、意に返さずに此方から懐に飛び込んで2匹の首を落とした。オーガは腕力を頼みに、棍棒を振り回したが、軽く受け流してオーガの首を落とした。
「剣帝の剣技を模倣している私の相手じゃないわね」
ゴブリンやオークにオーガ、普通はこんな組み合わせで行動なんてしない。ゴブリンならゴブリン、オークならオークと言う様に、同種族で行動するのが普通だ。つまりこれは、黒幕の存在を示している。
『黄泉還反魂』
この呪文で生き返らせた術者に対して、完全服従となる魔法だ。
「お前達は何処から来たのだ?」
「分からない、オレたち気が付いたら、ここにいた」
「なるほど、何者かに召喚されたのね?では、お前達のボスは誰で、どんな奴なの?」
「ボスの名前、知らない。ボス、見た事ない」
「では、お前達に指示して、ここに来させたのは誰なの?」
「指示されてない。ここに来たら女、抱ける。食い物に困らないと聞いた。仲間が噂してるの聞いた」
何だか釈然としない。実態が掴めない犯罪組織みたいだ。
「じゃあ、その仲間の所まで案内して頂戴」
私はゴブリンに道案内をさせる事にしたが、その前にする事がある。
「もう大丈夫よ」
生贄にされた女の子の拘束を解くと、抱きつかれて泣かれた。
「ありがとうございます。ありがとうございます。うわぁあぁん!」
生贄の舞台から女の子を連れて降りた。
『状態異常回復』
トランス状態になっていた皆んなを回復した。
「おぉぉ、助けて下さって、本当にありがとうございます」
皆んなから感謝されると少々照れ臭かったが、嬉しかった。
個人的に1つ疑問が残っていた。ここには巧の反応があったはずなのに、姿が見えない。私の姿を見たら絶対に話しかけてくるはずなのに。
「すみません。ここに山下巧さんと言う人はいませんか?」
皆んなは顔を見合わせた。
「その人と貴女は、どう言う関係ですかな?」
「恋人です」
「…俺が案内します。こちらへ付いて来て下さい」
雪人の後を付いて行くと、古屋に入り、奥の扉から外に出た。草薮を抜けると、複数の土が盛られたうちの1つを指差した。
「彼は勇敢でした。泣き寝入りしか出来なかった俺達を促して、今の組織を作って奴らに対抗しようとしたのです。しかし、2ヶ月前に奴らの襲撃を受け、女の子を庇った傷が原因で、帰らぬ人となったのです。もしもいつか自分を訪ねて来る人がいたら、こう伝えて欲しいと言われました。瑞稀、すまない。愛してると」
私は最後まで聞く前に膝から崩れ落ちると、巧のお墓の前で号泣していた。
「先程貴女はゴブリン達に聞かれていましたね。彼等を率いている者は誰なのか?と。巧さんを殺した奴は、ゴブリンでもオークでもありませんでした。見た事も無い奴でした。全身で銀白のタイツを着ている様な姿をしていました。そいつが魔物達を指揮しているのを見ました」
「…全身銀白タイツ?」
何だそいつは?そんな奴は私の知識の中では、神族にも魔族にもいない。そいつが何であれ、巧の仇であるなら、必ず復讐するだけだ。
私は巧の墓を掘り返すと、『死者蘇生』を唱えて生き返らせた。
「こ、ここは…?瑞稀?」
「巧…」
2人とも泣いて抱き合った。積もる話もあるけれど、巧だけ生き返らせるのは心苦しい。
「亡くなった皆んなを生き返らせたい。ただ、この蘇生呪文は大量の魔力が必要で、こんな大勢だと私だけの魔力では足りないの。皆んなから少しずつ分けて貰えるなら、皆んなを生き返らせられるけど、どうする?」
「本当に、本当に生き返らせる事が出来るのか!?俺の生命をくれても構わない。直ぐにでもやってくれ!いや、生き返らせて下さい。お願いします!」
前回生贄にされて亡くなった女性の彼氏に懇願された。
「別に死んだりしないわよ。気を失うかも知れないけど。皆んなも同じ意見で良いの?」
見回すと、皆んなが頷いていたので蘇生したが、魔力を使い過ぎて、強い貧血に似た症状が出て倒れた。巧に膝枕をされていると、少し魔力が回復して来たので動ける様になった。
「どうなったの?」
「聞いて見ろよ」
首を傾けると、皆んな泣きながら抱き合って喜んでいた。
「良かった」
死者を生き返らせるなんて、普通は有り得ない。私以外の神にも出来ないので、彼等は運が良かったのだ。
「皆んなの身体を小さくした神ってのも、銀白タイツの奴なのかな?」
「そうです。ただ、1体ではなく、太いのや細いの、それから女性らしいのもいました。女性らしいと言うのは、胸の膨らみがあったからです」
「なるほど」
何だか胸の奥がザワついた。嫌な予感がする。私の予感が当たっているならば、今度の敵はかなりヤバい相手となる。
「何か心当たりでもあるのか?」
巧が私の顔を覗き込んで聞いて来た。
「うん…私は姿を見た事が無いから分からないんだけどね…」
もしかすると私や唯一神ヤハウェと同じく、XNUMX人かも知れない。「旧世界の魔神」と言われた彼等の強さや能力は、未知数だ。本当に彼等が敵として現れたのであれば、かなりヤバい相手となる。
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