恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】

小林汐希

文字の大きさ
4 / 33
【第1章】初めて、恋を始めます

4話 突然そんなこと言われても…

しおりを挟む


「……で、俺に車を出してくれと?」

 ジロリと囲んだ私たちを睨んだお兄ちゃん。正直、ちょっと恐い。

「今年の学校祭で出すメニューとか考えるから、お願いします」

 正直、佐紀が言っても説得力には欠けてしまう。


 夏休み最初の土日、海沿いのコテージを予約した佐紀が次に目をつけたのが、お兄ちゃんだった。

 今回の話のメンバーは私や佐紀、二年生の祐介君と美紀ちゃん、一年生の大樹君というメンバー。大人がいた方がいい、それに車が運転できるなら……と、私はお兄ちゃんに頼らざるを得なくなってしまった。

「他に頼める人が居なくて。後で埋め合わせはします」

「ま、仕方ないか。土日は暇だし。その代わり、ちゃんとやることはやるんだぞ?」

 お兄ちゃんは、私の方を見る。

 後でなんかプレゼントでもして謝ろう。


 すでに大はしゃぎの佐紀は心ここにあらず。

 このメンバーになるといつもそうだ。 

 きっかけは別に誰が言っても構わない。問題は、それをどう実行するかが問題で、私とお兄ちゃんもいつも佐紀を筆頭とするメンバーに頭を抱えてきた。

 毎年の学校祭のクラブの担当だってそうなんだから。このタイミングで何でもいいから現実的な提案をしておく必要がある。

 とりあえず、その旅行のことは時間や持ち物を決めて、あとは解散となり、私とお兄ちゃんは仕方なしに裏方側の準備の話に入っていた。

「ねぇ桜!」

「はぃ?」

 佐紀が私たちを現実に引き戻す。

「桜って今もフリーなんでしょ?」

「えっ? でも……」

 また、何を言い出すかと思えば、そっちかぁ…。しかも、こんなみんなのいる前で。両親だって聞き耳を立てているに違いない。

「ほら、言っちゃいなよ」

 彼女は祐介君の肩をポンと叩く。

「先輩、ちょっと強引ですよ」

 確かに。佐紀の突っ走りながら考える思考が羨ましい時もあるけど、大抵はどっかで引っ掛かるから。

「ほらほら。みんな応援してんだから」

「えっ?」

 みんなとはどういう事なのか……。

「ぼ、僕は野崎先輩が好きです。つ、付き合ってください」

 真っ赤な顔で、祐介君は私に向かって言った。

「偉い、よく言った!」

 もう……、佐紀ったら。こんな大事なセリフをイベントにしちゃうんだから。可哀想だよ。

 きっと、今日みんなが押し掛けて来たのも、それを見届けるためなんだろうと。

 ここでようやく気がついた私も遅いんだけどね。

 外野の話を聞くと、一年生でクラブに入った頃から見ていてくれたらしい。

「で、桜は?」

「えー、即答?」

 読めた。ここでカップル成立となれば、例の合宿でいじり倒されるのは間違いない。

 佐紀みたいに夏休み限定の彼氏みたいな遊び方が出来れば、それでもいいのかも知れない。

 でも、私にはそれが出来なかった。

「ご、ごめんね……。私、そういうの全然分からないの。誰にもそう言う気持ちになったことないから、答えなんか出ないよ」 

「えー、桜が? 恋愛経験なし?」

 そうだよ。高校三年で恋愛経験なしなんて遅れているって、私だって分かっている。

 中学生にもなれば、好きな先輩や同級生がいたっておかしくないし、実際に周りはどんどん増えて、私は取り残されている気分になったことだって、これまで一度や二度じゃない。

 恋愛小説とかマンガを読んで、こんな気持ちになるんだって知識では知っているけど、私の中にそんな感情はまだ訪れて来なかった。

「先輩、すみません。変なこと言って」

「ううん。ごめんね。私が悪いから」

 そう、祐介君は何も悪いことない。悪いのはこれをイベントにした佐紀と答えを出せない私だから……。

「先輩のこと、ずっと待ってます」

「ごめん、私がそれに応えられるかもわかんないよ……。ごめんね……」

 自然に涙が出てきた。

 変だよね。断られた側じゃないのに、どうして涙が出るの?

「ちょっと、顔を洗ってくる……」

 こんな顔、みんなにも、ましてやお兄ちゃんにも見せられない。

 私はカウンターの奥に走り込んでいった。


「お前らな……」

 事を見守っていた秀一が口を開く。

他人ひとの恋愛感情をおもちゃにしない方がいいぞ」

 冷えきった空気をさらに凍りつかせるように、静かな声を吐き出してテーブルから離れた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処理中です...