恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】

小林汐希

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【第1章】初めて、恋を始めます

6話 私を一番分かってくれている人

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 日曜日、私は家の手伝いをランチの時間までにして、午後は駅前のモールに一人で出掛けた。

 夏休み直前のこの時期は水着の種類もまだ残っていながら割引セールも始まって、私のお小遣いでも手が届く商品が出てくる。

 しばらく悩んでから試着。お店から包みを抱えて出てくる頃にはおやつの時間になっていた。

 ベンチでクレープを食べながら、そっと周りを見回してみる。

「私にも、あんな顔が出来るのかな……」

 晴天の日曜日、恋人や家族と買い物に来るには一番いい条件。

 そんな中、私は一人……。

 こんな顔を誰にも見られたくないと思いながら、大急ぎで残りを口の中に押し込む。

「お兄ちゃんと選べればなぁ」

 思わず口走って……分かってる。お兄ちゃんも来たがっていたし、誰が悪い訳でもない。

 私もこの歳になってまで駄々をこねて困らせたくない。

「そういえば、今日は家にいるって言ってたよね」

 道を走りバスに揺られて、自分の家には寄らず真っ直ぐに隣家のチャイムを鳴らした。

「桜、どうした? 今日は買い物に行くって聞いていたけど?」

「その帰りです。一緒に食べませんか?」

 買ってきたドーナツの袋を見せた。

「お、いいねぇ。いま飲物持っていくから、部屋で待ってて」

「はい」

 二階の部屋は、ドアを開けると正面に私の部屋が見える。私とお兄ちゃんの部屋は二人が手を伸ばせば届く距離なんだ。

「持ってきたぞ」

「ありがとうございます」

 二人でドーナツを食べながら、お兄ちゃんは昨日私が出て行ったあとの事を報告してくれた。

 さすがの佐紀もあの展開は予想外だったみたい。

 仕方なく私の代わりに事務連絡だけして解散にしたんだって。

 そういう場の納め方は昔から上手で。私が途中で泣いたり怒ったりしても、いつもなぜか最後は笑顔にしてくれた。

 私がお兄ちゃんに絶対の信頼を寄せている要因はこれなんだと思う。

「桜、気を遣って貰って悪かったな」

「一人で食べても美味しくないですから」

 これは私のポリシーでもある。一人きりの食事ほど味気無いものはない。

 どんなにいい材料を使っていても、それが美味しいかを決める最後の調味料はその場の雰囲気だから。

 だから、お兄ちゃんが家で一人の時は、出来る限り一緒にしてもらって来た。

「いいの見つかったか?」

「はい。ちょっと冒険しちゃいましたけど……」

「ほぉ」

 もぉ、お兄ちゃんちょっとにやけてる。でもお兄ちゃんは子供の頃から私の水着姿はみんな見てきた。

「見てみます?」

「いいのか?」

「ここで隠していたって、来週には見られちゃいます」

「相変わらずドライだな」

「着替えるので、ちょっと外してもらえますか?」

「あぁ、分かった」

 お兄ちゃんのいない部屋で水着に着替えながら、ちょっとだけ後悔する。

 部屋の中で水着なんて、男性向けのグラビアみたいじゃない。

「お兄ちゃん、いいよ……」

「おう。さ、桜……?」

「ど、どうですか……?」

 部屋に戻ってきたお兄ちゃんはびっくりして私の顔を見た。

「どうって……、ビキニは大胆な……」

 今年、私が選んできたのは、白地のビキニ。紺色のリボンがプリントや飾りであしらわれている。

 去年までもセパレートは選んでいたけど、ビキニは初めて。

「白はまずいって昔言ってなかったか?」

「今は透けなくなったんですって。それでもちょっと勇気要りますよね」

 近くで見るとちゃんと水着だって判るけど、遠くでちょっと見るだけだと、下着と間違えてしまうかもしれない。

「似合わないですか……?」

「桜……ちょっとお願いがあるんだけど……」

「なんですか?」

「ちょっと、写真撮ってもいいか?」

 顔が赤い。私もちょっと恥ずかしいけど、ここまで来たらそうなるのは予想内だったし。

「私なんかでいいの?」

「桜だからだ」

「いいですよ? その代わりエッチなポーズは駄目です」

 お兄ちゃんはスマホで私を撮ってくれた。普通に立ったり、窓際に腰かけてみたり。これが、全然知らない人だったら絶対に断ったよ。

「ありがとう桜」

「可愛く撮れました?」

 撮った写真を見せてくれた。やっぱり小さい頃から私を撮っているから、慣れていると言うのかな。

 今回はたまたま水着だったという感じだっただけ。その写真を見て何だか安心してしまった。

 いつだったか、お母さんたちからも学校での写真とお兄ちゃんが撮る写真では私の表情が違うって。同じ服で同じポーズなのに、あどけない顔で写るって言われたことがある。

「なんだか、あの連中に見せるのはもったいないな」

「そうですか?」

「ま、仕方ない。ドーナツごちそうさまな」

 私の髪をくしゃくしゃとかき回すのは、恥ずかしさ隠し。

「じゃあ、俺は下に降りてるから、着替えて行きなよ。夜の時間も手伝いだろ? 親があとで帰ってくるから、晩飯一緒にできなくてごめんな」

 お兄ちゃんはドアを閉めて出ていった。

 心配してくれているんだ。私が一人の食事が嫌いだってこと……。

 私はしばらく着替えることも忘れて、その場に座り込んでしまった。
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