恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】

小林汐希

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【第2章】その涙と笑顔が嬉しくて…

27話 ある日の朝のお話

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 軽井沢の森の中にあるホテルのレストランで朝食を終えた後、秀一さんはしきりに時計を気にしていた。

「秀一さん、どうしました?」

「あっ、桜。ノーメイクでいてくれないか? まもなく迎えが来るはずなんだけど」

「え? お迎え? 余計にお化粧しておかないと?」

 そんな。お迎えだなんて、どこかに出るのならきちんと支度しておかなくちゃ……。そう反論しようとしたとき、部屋のドアがノックされた。

「おはようございます」

「お世話になります」

 部屋の前に、車イスを持ってきてくれたスタッフさんに挨拶をする秀一さん。

「奥さまですね、こちらにお座り頂けますか? お連れします」

「えっ? これに座るの? 私歩けるよ?」

 ケガをしているわけじゃないんだけどな……。言われるがまま車イスに座る。

「ごめんな桜。悪いけど、いいと言うまで外すなよ?」

 ただでさえ怪しいのに、さらに私の目にアイマスクを着けて視界を遮る徹底ぶり。

「どこに行くの?」

「いいとこ」

「もぉ……、悪戯ばっかり……」

 少々拗ねた声を出して反論してみると、秀一さんは私の手を握ってくれた。

 車イスは大きく揺れることなく進んでいく。

「岩雄さま、おはようございます。まずこちらへ」

 見えないけれど、感覚では別の建物の中に入って、待っていたスタッフさんが出迎えてくれたみたい。

「まだ、何も?」

「はい」

「秀一さん、何を考えているか分からないです」

 何もって、こんなことになるなんて前もって話しておいてくれてもいいのに……。

「もう分かる。あと10秒待て」

 拗ねている私の車イスを秀一さんが押して部屋の中に入ったみたいで、後ろで扉が閉まる音がした。

「悪かったな桜。もう取っていいぞ」

「もぉ……、素っぴんで恥ずかしいんだからぁ……」

 こんな人前に出るのにメイクもしていないなんて……。

「化粧されていたらダメなんだ」

「えっ?」

 アイマスクをとって顔を上げた瞬間、私の動きがピタリと止まった。

「うそ……」

「ご結婚おめでとうございます。岩雄桜さま」

 部屋の中には、数名のスタッフが並んでいてくれた。

 そして、部屋の中心に立っていたのは、純白のウエディングドレス。

「本日、挙式を担当させていただきますブライダルスタッフです。よろしくお願いいたします」

「朝からごめんな桜。こういうことだ。最初から言っていたらきっと反対していただろう?」

「秀一さん……、私……」

 ドレスの前でペタンと座り込んで、秀一さんを見上げた私の顔には涙の筋が出来ていた。

「何度か喉まで出かかったんだけど、台無しになっちまうから堪えるの大変だったぜ。早く着替えて始めよう」

「さぁ花嫁さん、泣いていると目が腫れちゃいますよ」

 そう言われて、私はドレス横のドレッサー前の椅子に座らされたんだ……。
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