13 / 170
3章 帰るよ、約束をした街へ。
第12話 彼女を守るためには時間が必要
しおりを挟む6歳も離れていると、それを目撃されてもあまり話題に上がることもない。
年の離れた妹か親戚の子といるのだろうという程度の認識だ。
俺の方はそんな感じで済んでいたけれど、二人の時間が始まって何年か経った時のこと、すぐ近くに俺がいるのを知らない男子連中が、学校帰りに彼女の父親がいないことをからかう場面を見てしまった。
きっと他人で全てを知っているのは俺だけだ。普段は素直で笑った顔が可愛い彼女が、どんな言葉をかけられてもぐっと堪えている。
「……変なとこ見せてごめんなさい」
俺に見られていたと気づいたあと、気まずそうに目を伏せた花菜ちゃんをもっと自分の手で守りたいと思い始めるまで時間はかからなかった。
でも、どのようにしたら彼女を守ることができるのだろう。
やはり年齢が離れていることがネックなのだ。高校生の自分とまだ小学生の彼女とが真剣に交際をするということが、いくら彼女のような娘が欲しいと言っていた自分の両親にでさえ、すんなり理解して受け入れてもらえるとは言いがたい。
そもそも、花菜ちゃんにそのことを話したところで真剣な話として受け取ってくれるだろうか。
頭のいい彼女のことだ。逆説的に受け取って「自立しなければ」と俺の元から離れてしまうことだって十分に考えられる。
もう彼女も小学4年生だ。
年齢的には、母親が帰宅するまで自宅で過ごすことになっても不思議ではない。
我が家で家事や料理も色々と教えてきた。
全てに一生懸命な彼女は、返ってきたテストを見る限り、学校の成績だって決して悪いとは思えない。
同時に、こうして同じ時間を過ごし、外見と同様に自分の意識の中でも少しずつ成長していく花菜ちゃんを一人の女の子として見ていることに間違いはなかった。
ただ……、今の関係のままでは隣にいたとしても本当の意味で彼女を守ることができない。自分のように中学生、高校生にもなれば交際相手がいても不思議ではないだろう。
でもそれが許されるのは同級生、少なくとも同じ年代という範囲だ。
自分たちのように年齢が離れていると、いくら本気と言ったところで笑われるか心配されるだけで、想いが成就することは難しいだろう。
寂しいけれど、きっと花菜ちゃんも成長していくにつれて、いつかは彼女のことを大切にしてくれる男が現れる。その時に自分から離れていくのだと思っていた。それまで見守ってあげることが関の山だろうとも。
ただ……、その時に俺自身が納得できるだろうか。
それならば、花菜ちゃんから別れを告げられる前に自分から離れた方がいいのかも知れない……。
だから大学受験では、わざと家から通えないところを選んだ。
しかし現実は違っていた。
大学に合格をして、それを彼女に告げたとき、その判断が間違っていたことを初めて知った。
「お兄ちゃんがいなくなったら、寂しいよ。私にも相談して欲しかった……。心の準備が間に合わないよ……」
ぽろぽろ涙をこぼしながら抗議をしてきた花菜ちゃん。休みは帰ってくるからとなだめるのが精いっぱいだった。
それに輪をかけるように、翌年には父親の転勤でこの街に来ることがなくなって……。それでも彼女のことが頭から離れることはなかった。
そう。実家の引っ越しも終わり、この街を離れる最後のタイミングで、俺ははっきりと、中学1年生になっていた花菜ちゃんに告げていたんだ。
「必ず迎えに来るから、待っていてくれ」と。
駅のホームで泣き止んで不安そうな顔を、それでも必死に笑顔を作って、「それまで待ってるから。約束だよ?」と言って指切りまでしてくれた彼女のことを、ついぞ忘れることはできなかったのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
となりのソータロー
daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。
彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた…
という噂を聞く。
そこは、ある事件のあった廃屋だった~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる