まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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5章 はじめての授業と部活顧問!?

第18話 その話題には乗れないよ…

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「おはよう」

「おはよう、ねぇ花菜にもニュースだよっ!」

 月曜日、私が教室に入ると同時に千景ちかげちゃんが席にやってきて声をかけられた。どうやら私が登校するのを今か今かと待ち構えていたみたい。

 どうしようもない事情を抱える私とは違って、彼女はその手の話へ歳頃の女の子なみの好奇心はあるみたいで。そういえば中学の頃から、クラスメイトの恋愛情報は一番詳しかったなと思い出す。

「何かあったの?」

「長谷川先生のこと! 決まってるじゃん!」

 どうやら、昨日のあの後で核心的なスクープがとれたらしい。

「あぁ、そっちの話かぁ……」

「え、花菜は興味ない?」

 あれだけ学年初日から大きなことを言っただけに、生徒たちの心をつかむということには成功したのだと思う。

 千景ちゃんにも悪気はないわけだし、逆に私がそこで先生に興味がないような態度をとり続けている方が不思議だと思っても当然かもしれない。


「あまりそういうプライベート聞いても仕方ないし……」

「つれないなぁ」

「千景ちゃんは朝からはしゃぎすぎ」

 興奮して話してくる千景ちゃんに返事を返しながら、私は表面上の顔とは真逆で、彼女が何を言い出すのかハラハラしていた。

 そう、スクープがあったというなら、もしかしたら私の名前が出てしまったかもしれないということが心配になっていたからだ。

 もしそんなことになれば、大学まで頑張って勉強をしてようやく教職に就いた先生はもちろん、話の流れによっては私だって影響がゼロじゃない。

 確かにここ峰浜高校は、公立校ではあるけれど、比較的そういった個人の友人・恋愛関係には厳しい方ではないと感じる。もちろん、それはあくまで周囲に迷惑をかけないという前提付き。学生の本分を外れた行動をすれば処罰だってもちろんある。

 「先生と生徒」の関係がどこまでのものかはなんとも言いようがないけれど、私がまだ学生である以上、一般的には堂々と胸を張って言えるようなものではなさそう……というくらいは想像がつく。

「だって先生からようやく聞き出したんだよ。もちろん独身だし特定の彼女はいないって!」

「そっか……」

 よかった。とりあえず隠して下手に邪推されるよりも、表向きは無難な情報統制にしたんだ。

 それなら、私も今のところはビクビクする必要もない。

「えー、花菜はあれだけの先生に興味なし?」

「ま、まぁ……」

「そういえば、花菜は昔から恋愛トークには全く乗ってこなかったもんね……。あ、そうか! 花菜には思い出の人がいるんだっけ? その人から声かけられなきゃ無理か」

 中学時代に、思わず彼女にだけは私がなぜ誰とも付き合わないかを話してしまったことがある。

「そうなのか……、自分でもよく分からない」

「いいなぁ、本当に花菜は純情一途だよね」

「そ、そんなもの……?」

「そりゃそうじゃん! 花菜は自分のこともっと良物件ってみていいんだから!」

「物件って……。アパートの部屋じゃないんだから……」

 千景ちゃんの妙な方向への暴走のお陰で、表面上では平穏を装いながらも、ようやく嫌な汗はとまりかけていた。


 ……そうなんだ。今は誰ともお付き合いしていないんだ……。

 もしかしたら、それは表向きの話かもしれないから、本当は誰か相手がいる可能性は否定できない。

 それは私にとっては残酷な宣告となるのだけれど、そのときは何も言わずに私が引き下がれば良いだけのこと。

 もし……、本当に今は誰もパートナーがいないとして、私と離れていた間には誰かが隣にいたのか、それともあのままずっと一人だったのか。

 この瞬間の私の頭の中の情報こそ、千景ちゃんとはいえど、この場で話すわけにはいかないものだった。

 これまでの短い時間でも「長谷川先生=あの約束をしてくれた啓太お兄ちゃん本人」であることは私も受け入れざるを得ない。

 あとはその時の約束がまだ有効なのか。

 もう少し踏み込むなら、この最初の騒ぎが収まって、一度お互いの立ち位置がきちんと整理されるまでは、この話題に乗るべきではないと決意した私がいた。

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